骨を開く
まずわが身が若返る
「そのわが身が、正しい食事に切り替えて行くにしたがって徐々に疲れをおぼえなくなり、身が軽くなっていくのに、自分ながら驚いたものである。食事が変わって体重が減っていったので、周囲の者が心配し、精神科に診てもらったらとまでいわれたが、私はとにかく疲れずに気持ちよく仕事ができるし、長年患った皮膚病からも縁が切れたので、そのまま続けていった。勉強も今までと違い、能率は上がるし、記憶力もよくなるし、新しい知識欲も湧いてくるし、といった具合で、「玄米先生」と呼ばれる頃には嘘のように体力がついてきた。」
これは小倉重成先生が、難病と取り組んだ事から見出した、自然治癒力を引き出す方法を書いた「自然治癒力を活かせ」の中の一文です。小倉先生は、私の漢方の師匠の師匠に当たります。千葉大学医学部を卒業された医師で、日本の漢方の第一人者です。私は本の中でしかお会いしたとこがありませんが、とても怖い先生だったと聞いています。
昨今、得体の知れない流感が全世界に広がり解決策が見つからないまま私たちは不安の中で日々生活を送っています。何をどうすれば良いのかを考えていたところ、先生のことを思い出し新聞に書くことにしました。
蒔かぬ種が生えるわけはない
「肝機能とビタミンB1」の研究から、玄米食の大切さを実感した小倉先生は、その後、血液を正しいアルカリ性に保つと言うことは、単に食を正すという単純な行為だけで得られるものではないということも重症患者に接し治療の壁にぶつかるごとにわかってきた、と言います。すなわち、正しい「姿勢」「心」「鍛錬」も健康に不可欠なものである事がわかってきたのである、と。
どこか具合が悪いときは、「私はどんな自然法則に逆らったのだろうか?と反省してみることである。蒔かぬ種が生えるわけはない。何かそこに具合を悪くする種が蒔かれているはずでる。」小倉先生の迫力のある声が聞こえてきそうですね。
人間の生命を救うものは何か
西洋医学の日進月歩は凄まじく、あたかも自然を制御できたように胡座をかいていた事を嘲笑うようにウィルスは拡散しています。最後に人間の生命を救うものは何なのでしょうか?
例えば`ものもらい`を例にとると、化膿菌が炎症を起こす菌とわかっても、何故に菌の繁殖を許すに至ったかについては何一つ示していないのです。したがって、切開したり、抗生物質を用いて一時的に治っても、その根本原因にさかのぼって訂正されない限り、再発はまぬがれないはずです。患者さんが「ものもらい」の根があるのではないかと思い込むほどに再発を繰り返す人がいるそうです。
体質改善とは簡単そうに見えてとても難しいものです。体質改善といえば漢方薬もその一つです。生活を変える事なく、相性が合えばとにかく嘘のように改善される場合があります。ただ、その効果を持続させるにはもう一つ大切なものがあります。病を克服し、運命を打開する壮大な生命力(自然治癒力)がその答えと小倉先生はいっています。
自然は私たちを健康にしようと待ち構えているが、自然にはそれを教えるための口はなく、法則に反したときに仕方なく心身の悩みを与えて教えると。
では、私たちが随わなければならない自然法則とは一体どんなものなのでしょうか?
以下は小倉先生自らの言葉を書かせていただきます。
「およそ生きるということはエネルギーの摂取と消費という両面から成り立っており、そのどちらに誤りがあっても、その正誤の程度に応じて生命のあらゆる面にその反応が現れ、生命の強弱、長短、広狭、深浅に影響を及ぼすものである。そしてエネルギーの摂取と消費に関する自然法則には、1、心 2、姿勢 3、呼吸 4、食べ方 5、鍛錬 6、環境 の諸要素がある。その諸要素は血液のPHに影響を及ぼす。血液のPH(酸アルカリ度)は総合的に健康の程度を示す一指針となる。健康時には静脈血でPHが7.25から7.3、動脈血で7.35から7.5を示す。動脈血で7.3を示す場合はすでに病的状態である。血液が酸性に傾くと白血球の働きが弱まり病原体の繁殖を許し、炎症が起きやすくなり、組織の結合が緩み、内臓下垂が起きる。またタンパク質が固まり、肩こり、易疲労、歯や骨からカルシウムを奪い骨折、最終的には細胞の破壊を伴う病である癌を導く。逆に正しいアルカリ性では、病にならず予防接種も不要で蚊にも刺されにくく、はつらつと長生きできる。」
今回書かせて頂いたのはこの本の序文に当たり、まだまだ言い尽くせえないことだらけです。ご興味のある方は「自然治癒力を活かせ・小倉重成(創元社)」を一読ください。先生自身が行っていた生活そのものですから嘘がありません。この大変な時代を乗り切るために、少しでも参考になれば幸いです。以下のホームページも参考にしてください。
千葉大学大学院医学研究院和漢診療学
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/wakan/outline/predecessor/ogura.html
東邦大学客員講師 薬剤師 鈴木寛彦