人間関係が上手くいく 「さ・し・す・せ・そ」
今朝の新聞を読み、言葉を失いました。
徳島県内で亡くなった19歳の男性が、
遺書の中で職場でのパワーハラスメントを訴えていたという記事でした。
※現在、事実関係は調査中です。
外にいる私たちが、誰かを決めつけたり、一方的に断定したりすることはできません。
それでも、ハラスメント防止やコミュニケーション研修に携わってきた立場として、考えずにはいられませんでした。
19歳。
私が普段、授業をしている学生たちと同じ年齢です。
本当は生きている間に聞かなければならなかった言葉を、私たちは「遺書」になってから知ることになりました。
あまりにも悲しいことです。
■「なぜ相談しなかったのか」と本人に問う前に
このような出来事が起きた時、
「なぜ誰かに相談しなかったのだろう」
「もっと早く助けを求められなかったのだろうか」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、本当に考えなければならないのは、
相談しても大丈夫だと思える職場だったのか。
声を上げた人が守られる環境だったのか。
小さなSOSに気づき、声をかける人はいなかったのか。
ということではないでしょうか。
「相談すればよかった」と本人に求めるだけでは、何も変わりません。
相談できなかった人を責めるのではなく、相談できる環境をつくれていたかを、組織や周囲の一人ひとりが振り返る必要があります。
■笑顔は「大丈夫」の証明ではない
私はこれまで15年間、さまざまな企業や学校で、多くの人間関係を見てきました。
その中で何度も感じてきたことがあります。
本当につらい人ほど、「つらい」と言えないことがあるということです。
苦しくても笑っている。
理不尽なことを言われても謝っている。
「大丈夫です」と答え、いつもどおり働いている。
周囲から見れば、何も問題がないように見えるかもしれません。
しかし、
笑顔は、大丈夫の証明ではありません。
沈黙は、傷ついていない証明でもありません。
何も言わないのではなく、言えないのかもしれない。
助けを求めないのではなく、求めた後のことが怖いのかもしれない。
「弱いと思われたくない」
「迷惑をかけたくない」
「言っても何も変わらない」
「もっと状況が悪くなるかもしれない」
そんな不安から、一人で抱え込んでいる人もいます。
■「そんなつもりはなかった」では、傷は消えない
ハラスメントの問題が起きた時、よく聞かれる言葉があります。
「そんなつもりはなかった」
「指導のつもりだった」
「冗談だった」
「昔はこれくらい普通だった」
しかし、言った側に悪気がなかったとしても、受けた人の傷がなくなるわけではありません。
指導と人格否定は違います。
厳しく伝えることと、相手の尊厳を傷つけることも違います。
立場が上の人にとっては何気ない一言でも、若い人や経験の浅い人にとっては、逃げ場を失うほど重い言葉になることがあります。
「自分は大丈夫」ではなく、
「相手には、どう届いているだろう」
と立ち止まることが必要です。
■必要なのは、窓口だけではなく「話せる空気」
相談窓口を設置することは大切です。
しかし、窓口があるだけで、相談できる職場になるわけではありません。
相談したことで不利益を受けないか。
「あの人は弱い」と思われないか。
内容が周囲に漏れないか。
最後まで真剣に話を聴いてもらえるか。
その安心がなければ、制度があっても人は声を上げられません。
日頃から上司が部下の話を聴くこと。
人前で人格を否定するような叱り方をしないこと。
いつもと様子が違う人に「最近どう?」と声をかけること。
そして、相談を受けた時に「考えすぎ」「あなたにも原因がある」と片づけないこと。
特別なことではありません。
けれど、その積み重ねが「ここなら話しても大丈夫」と思える職場をつくります。
■遺書になる前に、その人の声を聴く
私は「言葉には期限がある」と伝え続けています。
言葉は、目には見えません。
しかし、人を追い詰めることもあれば、たった一言で人を救うこともあります。
亡くなってから謝っても、
亡くなってから調べても、
亡くなってから「気づけなかった」と悔やんでも、
その人の明日は戻ってきません。
遺書になってから本音を知るのでは遅いのです。
誰かが笑っているからといって、本当に大丈夫とは限りません。
何も言わないからといって、何も感じていないとは限りません。
「自分の職場は大丈夫」
「自分の言葉は大丈夫」
そう思っている時こそ、一度立ち止まって考えてほしいと思います。
生きている今、その人の声を聴く。
小さなSOSを見過ごさない。
一人で抱え込ませない。
今回の出来事を、一時のニュースで終わらせてはいけないと思います。
亡くなられた方のご冥福を心よりお祈りするとともに、ご家族の皆様にお悔やみ申し上げます。
もし今、つらさを一人で抱えている方がいたら、一人で耐え続けず、身近な人や公的な相談窓口につながってください。
厚生労働省「まもろうよ こころ」では、電話やSNSによる相談窓口が案内されています。
相談はこちらhttps://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/


