戦争がはじまった。
彼はさった峠を模型にした。
東海道の難所の峠を建築するという。
無謀な試み。
3メートルもの峠そのものの模型。
その中に配された建物、人工物と思われる建築物の実に小さいこと。
自然の中での人間の営みの小ささを感じずにはいられない。
彼はそれを虫眼鏡で拡大して見るように、拡大された模型を作っって見せた。
峠を登って行く道すがらに配されたそれぞれは、たどっていくと一つの物語として旅人に何かを語り掛けるだろう。
そこを歩いた者にしか解らない建築。
これは模型なので誰も歩けない。だから誰にもわからない。
小さな建築物が総じて、繋がりあって、サッタ峠という山全体を覆いつくしひとつの建築物として感じ受け止めることが出来るのか。
彼の試みがうまくいったとは思えない。不十分だと思う。もっと掘り下げて搗く詰めてゆかねばならないと思う。
けれどこの無謀な試みに挑戦し、一つの形にして我々に見せたということ、これは称賛に値する。
と私は思う。