漢方を飾る様々な剤型
写真は、漢方生薬「黄耆(おうぎ)」
漢方薬の元となる生薬には、植物や動物、鉱物由来など実に様々なものが使われていますが、その大半は植物です。その原料となる植物の栽培は日本国内でも行ってはいるのですが、依然として供給量が少なく、原料の9割近くを中国からの輸入に頼っているのが現状です。
しかし近年、中国からの原料輸入にも陰りが見えてきました。
これまでの乱獲が原因となり、不毛の土地が増えたとして中国政府が輸出量を制限し始めたからです。
さらに追い討ちをかけるように価格も高騰しつつあり、ますます生薬が手に入りにくくなっているのです。
生薬の供給が減少する一方、漢方薬の需要は年々伸びを見せています。それは日本国内だけに留まらず欧米にも広がっており、まさに狭い牌を分けている状態なのです。
この状況を打破するために、数年前から国内での栽培が活発化しています。
国内の大手製薬メーカーでは、生薬栽培農家との提携を増やすなどして原料を確保しようと躍起になっています。また、大手のみならず漢方を取り扱う薬局でも自前の薬草園で栽培するケースも増えてきています。
当むつごろう薬局でも例にもれず生薬を栽培しており、無農薬で質の良い漢方薬の提供に役立っています。
このような取り組みが、実を結んで国内での安定供給が実現すれば、海外の輸出制限や質の低下に左右されることなく漢方薬を製造することができるのです。
さらに喜ばしいことに、農林水産省では生薬栽培の技術の確立や普及、農業機械の改良などに補助金を支出し、企業や団体の新規参入を促す動きが出てきました。
また日本漢方生薬製剤協会では、漢方薬を生産するメーカーと農家とのマッチングを実施するなどして、栽培農家の絶対数を増やそうという動きも加速化しています。
生薬栽培を村おこしの一環として考えている自治体もあり、地方の活性化も期待できるので一石二鳥かもしれません。
しかし、多くの試みが全て良い結果を産むとは限りません。良質な生薬が栽培できるまでには、多くの困難が待ち受けています。
まず、生薬を栽培し始めてすぐに軌道に乗ることはあまりなく、基準をクリアしたものが栽培できるまでには数年の時間を要します。なおかつ、生薬栽培に使用できる農薬は通常と比べて制限が厳しく、その分手間や人手を必要とします。
おまけに、中には土壌や気候が合わずに中国でしか手に入らない生薬も存在します。
西洋薬と違い、一定の品質で大量生産することができない漢方薬。
今後も漢方の需要はさらに高まると考えられており、性急なパイプライン作りが期待されます。