【引き算コーチング】人は、見えている道しか選べない
前回の内容を別の角度から伝えてみます。
「今は、これをやるしかないんです」
経営者の方とお話をしていると、そんな言葉が出てくることがあります。
「これをやらないと売上がつくれない」
「自分がやらないと回らない」
「今の状況では、これしか方法がない」
そういう状態ですね。
もちろん、本当にそれしかない場合もあります。
だから私は、「それは思い込みですよ」と簡単に言いたいわけではありません。
その人には、その人なりの理由があって、そう考えているわけです。
これまでの経験だったり、成功体験だったり、失敗した経験だったり。
いろいろなものを積み重ねた結果、
「今はこれしかない」
という答えにたどり着いている。
でも、ここで少し考えてみたいんです。
本当に、それしかないのでしょうか?
もし、今やっていることをやらなくてもいいとしたら?
もし、自分以外の人がやるとしたら?
もし、今までとは全く違う方法があるとしたら?
そう問いかけてみる。
すると、今まで「これしかない」と思っていたものが、少し揺らぐことがあります。
私は、これが引き算コーチングの一つの大事なところだと思っています。
ただ、ここでいう「思い込みを引き算する」というのは、その思い込みを悪いものとして取り除く、という意味ではありません。
「それは間違っていますよ」
ということでもない。
今までの自分にとっては、その考え方が正しかったのかもしれません。
だから、一度だけ横に置いてみる。
「それも一つの考え方ですよね。でも、もし他にもあるとしたら?」
そんなふうに考えてみるんです。
そうすると、今まで見えていなかった選択肢が出てくることがあります。
今まで自分でやっていたことを誰かに任せる。
今まで売っていた商品とは違う商品を考える。
価格を変える。
やり方を変える。
そもそも、その仕事をやめる。
いろいろな可能性が出てくる。
ここで私は、できれば一つではなく、
三つ以上くらいの選択肢が出てくるといいなと思っています。
なぜかというと、一つしかなければ、
それは結局「これしかない」に戻ってしまうからです。
二つでも、「AかBか」という二択になりやすい。
でも、三つ、四つと選択肢が出てくると、少し違ってきます。
「あ、こんな方法もあるんだ」
と、自分の中に余白が生まれる。
そして、ここからが大事です。
選択肢を広げたからといって、全部をやるわけではありません。
むしろ、もう一度絞ります。
「この中だったら、どれをやってみたいですか?」
「どれなら、ちょっとやってみてもいいと思えますか?」
と、本人に選んでもらう。
最初と最後だけを見ると、どちらも「これをやる」という答えかもしれません。
でも、その意味は全く違います。
最初は、
「これしかないから、これをやる」だった。
でも、最後は、「いくつかある中で、私はこれを選ぶ」になる。
私は、この違いがすごく大きいと思っています。
人から「これをやったほうがいいですよ」と言われて、
その通りにやったとしても、本当に自分が納得しているとは限りません。
「それ、本当に自分に合っているのかな」
「言われたからやっているだけじゃないかな」
そんな疑問が残ることもある。
場合によっては、アドバイスそのものに対して、どこかで不信感を持ってしまうことだってあると思います。
でも、自分で選んだのであれば話は変わります。
「私はこれをやる」
と、自分で決める。
そこには、少しだけ「やってみたい」という気持ちも生まれます。
もちろん、やってみた結果、うまくいかないこともあります。
思ったような成果が出ないこともあるでしょう。
でも、それでもいいんじゃないかなと思うんです。
なぜなら、それは「自分で選んだ結果」だからです。
そして、その経験がまた次の選択肢を生みます。
今までと同じ考え方で、今までと同じ行動をしていたら、基本的には今までと同じような結果になります。
だから、まず「これしかない」という思い込みを少し引き算する。
そして一度、選択肢を広げる。
そして、その中から自分で選ぶ。
その結果、今までとは違う行動が生まれる。
そして、今までとは違う行動をするからこそ、今までとは違う結果が生まれる可能性がある。
私は、これが引き算コーチングでやっていることの一つです。
思い込みをなくすことが目的ではありません。
答えをコーチが教えることでもありません。
まして、「あなたはこうしたほうがいい」と誘導することでもない。
一度、「これしかない」を引き算してみる。
そして、
「他にもあるかもしれない」という状態をつくる。
そのうえで、
「では、あなたはどれを選びたいですか?」
と、もう一度本人に返す。
「これしかない」から「これを選ぶ」へ。
この小さな違いが、その人自身の納得感や、
その後の行動を大きく変えることがある。
私は、コーチングの価値の一つは、
答えを与えることではなく、
自分で答えを選べる状態をつくること
なんじゃないかなと思っています。


