「9割の無駄を捨て、1割の本質に集中する」ドイツ式思考法と引き算
「忙しいんです」
経営者の方とお話をしていると、よく聞く言葉です。
特に個人事業主や小規模な会社の経営者の方は、
やることがたくさんあります。
お客様への対応、事務仕事、経理、営業、SNS、
新しい商品のことを考えたり、スタッフがいればその管理もある。
あれもやらなきゃいけない。
これもやらなきゃいけない。
気がつくと、一日が終わっている。
「今日も一日仕事をしていたのに、結局これしかできなかったな」
そんなふうに感じることはないでしょうか?
私は、これって単純に「仕事が多いから」
だけではないんじゃないかなと思っています。
例えば、「マルチタスク」という言葉があります。
いくつもの仕事を同時にこなすことが得意な人もいれば、
苦手な人もいる、と言われますよね。
でも実際には、人間が本当に
同時にいくつものことを処理しているというより、
一つのことをやって、別のことに切り替えて、
また別のことに切り替えて……
ということを非常に速いスピードで繰り返している、
と考えたほうが近いようです。
そう考えると、忙しいという状態が少し違って見えてきます。
例えば、
メールを返していたら電話が鳴る。
電話が終わったら、スタッフから相談が来る。
その相談が終わったら、今度は経理のことを思い出す。
経理をしている途中で、お客様からのLINEが入る。
「あ、そういえばSNSも投稿しないと」
……と。
一つひとつの仕事を見れば、それほど大きな仕事ではないかもしれません。
でも、そのたびに頭を切り替えています。
そして、切り替えるときには、「次は何をやろう」と選択することも必要になります。
これも、実はエネルギーを使っているんですよね。
仕事そのものだけではなく、
「次に何をするかを決めること」と
「別の仕事に頭を切り替えること」にも、
時間と精神的なエネルギーを使っている。
それを一日の中で何度も何度も繰り返していたら、そりゃあ疲れます。
そして、気がついたら夕方になっている。
「今日はずっと仕事をしていたのに、何をしたんだろう?」
そんなことが起こるわけです。
でも、ここで私は、もう一つ考えてみたいことがあります。
そもそも、なぜそんなにたくさんのことをやっているんでしょうか。
「これもやらなきゃいけない」
「経営者なんだから、これくらいは自分でやらないと」
「お客様のために、これもやったほうがいい」
「これをやらないと売上が落ちるかもしれない」
そうやって、一つずつ増えていった「やらなければならないこと」。
実は、忙しさをつくっているのは、
仕事そのものだけではなく、
こうした**「やらなければならない」という思い込み**なのかもしれません。
もちろん、本当にやらなければならない仕事もあります。
だから、「それは全部やらなくていいですよ」と言いたいわけではありません。
ただ、
「それは本当に、今やらなければならないことですか?」
「それは、あなた自身がやらなければならない仕事ですか?」
「もしやらなかったら、本当に困ることが起きますか?」
と、一度問い直してみる。
すると、「あれ? これって、ずっとやってきたからやっているだけかもしれない」と気づくことがあります。
私は、ここにコーチングの意味があると思っています。
思い込みを「悪いものだから外しましょう」と言うのではありません。
その考え方にも、その人なりの理由があります。
これまで事業を続けてくるために必要だったのかもしれない。
お客様を大切にしてきたからこそ、そう考えているのかもしれない。
だから、その考えを否定する必要はない。
ただ、「もし、それ以外の可能性があるとしたら?」
と考えてみる。
そうすると、今まで一つしかなかった選択肢が、二つ、三つと増えることがあります。
「これは自分がやらなくてもいいかもしれない」
「これは今じゃなくてもいい」
「これは、そもそもやらなくても事業は回るかもしれない」
そうやって一つずつ見直していく。
これが、私の考える「引き算」です。
仕事を効率よくこなして、もっとたくさんの仕事をする。
それも一つの方法でしょう。
でも私は、その前に、
「そもそも、その仕事は必要なんでしょうか?」
と考えてみることが大切だと思っています。
やることが減れば、仕事と仕事の間の切り替えも減ります。
選択する回数も減ります。
その分、一つのことに集中できる。
そして、そこで生まれた時間を、仕事ではなく自分自身の回復に使うこともできます。
家族と過ごす時間かもしれない。
好きなことをする時間かもしれない。
何もせずに休む時間かもしれない。
それも、決して仕事から逃げているわけではありません。
使った精神エネルギーを回復させるために必要な時間です。
忙しいから、もっと頑張る。
ではなく、
「忙しさをつくっているものは何だろう?」
と、一度立ち止まってみる。
もしかすると、仕事量を減らすことより先に、減らせるのは「やらなければならない」という思い込みなのかもしれません。
私は、引き算コーチングで、単純に仕事を減らしたいわけではありません。
その人にとって本当に大切なものは何なのか。
そこに時間と精神エネルギーを使えるようにするために、何を引き算できるのか。
一緒に考えていきたいと思っています。
忙しいから、仕事を減らす。
それだけではなく、
「忙しくならなければならない理由」を、一度見つめ直してみる。
そこから始めてもいいのではないでしょうか?


