なぜビジネスに引き算コーチングが有効なのか?
「やることが多すぎて、何から手をつけたらいいのか分からない。」
経営者の方とお話ししていると、そんな言葉を聞くことがあります。
売上を上げるために、新しいこともやりたい。
SNSもやったほうがいい。
新しい商品も考えたい。
お客様へのフォローもしないといけない。
スタッフのことも考えないといけない。
あれも、これも。
気がついたら、やることがどんどん増えている。
でも、私はここで少し立ち止まって考えてみてもいいんじゃないかなと思っています。
「本当に、それを全部やる必要がありますか?」
やることを絞る。
「絞る」という言葉には、少し寂しい感じがあるかもしれません。
選択肢を減らす。
削る。
場合によっては、捨てる。
せっかくできることが増えたのに、なぜわざわざ減らすのか。
そう思う方もいると思います。
でも私は、絞るということは、自分の可能性を小さくすることではないと思っています。
むしろ逆なんです。
限られた自分のエネルギーを、本当に大切なことに集中させる。
そのために、あえて選択肢を絞る。
そういうことなんじゃないかなと思うんです。
私たちには、1日24時間しかありません。
これは誰にとっても同じです。
でも、限られているのは時間だけではないですよね。
私は、精神的なエネルギーも限られていると思っています。
考える。
決める。
人と話す。
悩む。
集中する。
こういう一つひとつにも、エネルギーを使っています。
例えば、やることが10個あったとします。
10個を少しずつ進めようとすると、それぞれにエネルギーを使います。
でも、それだけではありません。
実は、「仕事を切り替えること」にもエネルギーを使っているんです。
経理のことを考えていたと思ったら、今度はお客様への返信。
そこからSNSの投稿を考えて、その途中でスタッフから相談が来る。
相談が終わったら、また新商品のことを考える。
こうやって、違う仕事へ次々と頭を切り替えていく。
一つひとつは、それほど大きな仕事ではないかもしれません。
でも、そのたびに、
「あれ、さっき何を考えていたんだっけ」
「今度はこっちを考えないと」
と、頭の中で切り替えが起きます。
しかも、仕事の内容が大きく違えば違うほど、
その切り替えには、それなりのエネルギーが必要になります。
そう考えると、私たちは仕事そのものだけではなく、
仕事と仕事の間を移動することにも、エネルギーを使っているんですよね。
だから、やることを絞る。
一つのことに集中する。
そうすると、毎回違う仕事へ切り替えるために使っていたエネルギーを、
その一つのことに注ぐことができます。
同じ時間を使っていても、注げるエネルギーが変わる。
私は、ここがとても大きいと思っています。
例えば、事業をもっと成長させたいと思ったときに、
10個の施策を少しずつやるのではなく、
「今はこれが一番大事」というものを一つ決める。
そこに時間も、考える力も、行動する力も注いでいく。
そうすると、その一つのことを前に進める大きな推進力になるんです。
もちろん、全部やったほうがいい場合もあるでしょう。
だから「何でも減らせばいい」という話ではありません。
ただ、自分のエネルギーが分散しすぎていないか。
そこは、一度見直してみてもいいと思うんです。
そして、もう一つ大切なのが、仕事以外の時間です。
「仕事が終わらないから、休みを削る。」
「家族との時間を削る。」
「自分の好きなことをする時間を削る。」
そうやって、仕事のためにプライベートの時間まで使い始めると、少し話が変わってきます。
なぜなら、プライベートの時間は、単に「仕事をしていない時間」ではないからです。
家族と話す。
好きなことをする。
何も考えずに過ごす。
しっかり眠る。
そういう時間が、使った精神エネルギーを回復させてくれる。
そこまで削って仕事を増やしてしまったら、エネルギーを使う一方で、
回復する時間がなくなってしまいます。
↓
すると、だんだん疲れてくる。
↓
疲れてくると、考える力も落ちる。
↓
仕事の成果も出にくくなる。
↓
だから、さらに仕事を増やす。
そうやって、仕事を止めると前に進めないような
「自転車操業」の状態になってしまうことがあります。
でも、もしかすると、もっと頑張る必要があるのではなく、
やることを絞る必要があるのかもしれません。
私は、引き算とは、単純に仕事を減らすことではないと思っています。
自分の限られた時間と精神エネルギーを、どこに使うのかを選び直すこと。
そして、本当に大切なことに、十分なエネルギーを注げる状態をつくること。
「これもやらなきゃ」
「あれもやったほうがいい」
そうやって増えていったものを、一度立ち止まって見てみる。
「今、本当に一番大切なことは何だろう?」
「それ以外のことを、いったん置いておくことはできないだろうか?」
そんな問いを持つだけでも、少し見える景色が変わるかもしれません。
絞ることは、可能性を捨てることではありません。
むしろ、自分の持っている力を分散させず、一つの方向へ集めること。
その力が大きな推進力になったとき、今まで一人では動かせなかったものが、動き始めることがあります。
だから私は、「何を増やすか」だけではなく、
「何を絞るか」
を一緒に考えることも、経営には大切なんじゃないかなと思っています。


