<引き算コーチングの核心>コーチングで、何を引き算するのか?
値上げが怖い。その正体は何か。【引き算コーチング】
先日、車関係の事業主の方とお話しする機会がありました。
お話を聞いていると、「今の価格でも生活はできています。」とおっしゃっていました。
でも、私は少し気になって聞いてみたんです。
「今の利益率で、これから先も安心して経営を続けられると思いますか?」
売上が増えれば税金も増えます。
設備投資が必要になることもあるでしょうし、自分が体調を崩したときの備えも必要です。
そう考えると、「今、生活できている」という状態と、「安心して経営を続けられる」という状態は、必ずしも同じではありません。
だから私は、「少し価格を見直してもいいかもしれませんね。」とお伝えしました。
すると返ってきたのは、
「いや……値上げは怖いです。」
という言葉でした。
私は、この言葉を聞いて、「やっぱりそうなんだな」と思いました。
これまでたくさんの経営者の方とお話ししてきましたが、値上げに不安を感じている方は本当に多いんです。
そこで私は尋ねます。
「何が怖いんですか?」
すると、
「高いと言われそうで。」
「お客様が離れてしまうかもしれません。」
「悪く思われるかもしれません。」
そんな言葉が返ってきます。
ここで私は、さらに一つ質問をします。
「それは、実際に起きたことですか?」
すると、多くの方が少し考え込みます。
実はまだ値上げをしていない。
だから、お客様が離れるというのは、まだ起きていない未来の話なんです。
もちろん、その不安を軽く考えているわけではありません。
経営者にとって、お客様を失うかもしれないという恐怖は、とても大きなものです。
でも、その恐怖は「事実」なのか、それとも「思い込み」なのか。
そこは、一度立ち止まって考えてみる価値があると私は思っています。
人は、自分が信じていることを疑うのが苦手です。
「値上げをしたら嫌われる。」
「お客様は安いほうが喜ぶ。」
「この価格以上の価値は提供できていない。」
そんな考えも、本人にとっては当たり前になっています。
そして変えられない真実だと思っています。
だから、自分一人では、その当たり前を疑うことができません。
ここに、私はコーチの役割があると思っています。
コーチは、「値上げしましょう」と背中を押す人ではありません。
「その考えは、本当に事実ですか?」
「値上げして、プラスになる面は何ですか?」
「値上げをしても選ばれる理由があるとしたら、それは何でしょうか?」
そんな問いを投げかけながら、一緒に考えていきます。
今までと同じ考え方をしていたら、今までと同じ答えしか出ません。
でも、第三者から問いを投げかけられることで、今まで考えたことのない視点に出会うことがあります。
すると、「そういう考え方もあるのか」と、自分の世界が少し広がるんです。
私は、「値上げは怖い」という考えが間違っているとは思いません。
そう考える理由が、その人にはあるからです。
だから私は、その考えを変えようとはしません。
ただ、一つだけ問いを投げかけます。
「もし、それ以外の可能性があるとしたら、どんな景色が見えるでしょうか。」
人は、自分一人では、自分の当たり前の外側を見ることが難しいものです。
だからこそ、第三者との対話に意味があります。
コーチの役割は、答えを教えることではありません。
今まで見えていなかった可能性に光を当て、その人自身が新しい選択肢を見つけられるようにすること。
値上げができるようになることが目的ではありません。
「怖い」という気持ちも大切にしながら、それ以外の可能性も選べる自分になること。
そうすると、クライアントの世界が広がります。
私は、それが引き算コーチングの本当の価値だと考えています。


