「落ち着きがない」と心配する前に。乳幼児期の子どもの“動き”に込められた発達の意味
あと5分、が守れないのはなぜ?
「あと5分って言ったでしょう?」
つい、イライラしてしまうことありませんか?
お出かけ前。
公園から帰るとき。
遊びを終わりにするとき。
「あと5分ね」
「10分したら出発するよ」
大人にとっては、ごく普通の声かけです。
でも
幼児にとって、
この「5分」「10分」という時間の感覚は、
実はとても難しいものです。
なぜなら、
時間は目に見えないから。
たとえば、
「赤い」「丸い」は見えますよね。
色や形はわかりやすいです。
幼児が身につけるべき基礎概念の一番最初のものです。
大きい・小さいも、並べれば比べられます。
でも「5分」という時間は
見えません。
触ることもできません。
形もありません。
止めて確認することもできません。
ですから、
数字の「5」を知っていることと、
「5分」がどのくらいの長さなのかを実感として理解していることは、
まったく別なのです。
幼児期には、
色、形、大小、数、量、順序、比較など、
生活の中で少しずつ身につけていく「基礎概念」があります。
その中でも「時の概念」は難易度の高いもののひとつ。
だから、
「何回言ったらわかるの?」
「あと5分って言ったでしょう!」
と叱る前に、
「ああ、まだわからないんだな」
「今、この力を育てている途中なんだな」
と見てあげてほしいのです。
これは甘やかすことではありません。
子どもの発達段階を知ったうえで、
今必要な働きかけをしてあげるということです。
子育てでは、
「この子はできない」と見るのか、
「まだ育っている途中」と見るのかで、
親の言葉も表情もずいぶん変わります。
そして私は、
この「子どもの今の姿は成長の過程である」という見方をとても大切にしています。
時間感覚の身につけ方
時間の感覚は、ある日突然身につくわけではありません。
毎日の生活の中で、
何度も聞いて、
何度も体験して、
少しずつ「時間ってこういうものなんだ」とわかっていきます。
ですから、焦らなくて大丈夫。
「あと5分」がわからないなら、
これから一緒に育てていけばいいのです。
幼児に「あと5分ね」と言っても、
なかなか伝わらないのは当たり前のこと。
そんなときは、
「もっと何度も言い聞かせなくちゃ」
ではなく、
「どうしたら、この子に“時間”が見えるかな?」
と考えてみましょう。
時間というのは、
目にも見えず、手でも触れられない、とても抽象的なものです。
だから幼児には、
できるだけ具体的なものに置き換えてあげます。
たとえば時計。
「5分後に出発するよ」ではなく、
「長い針がここに来たら出発しようね」
と、実際に時計を見せてあげる。
砂時計なら、
「この砂が全部下に落ちたら、お片づけしようね」
タイマーを使って、
時間が終わることを音で知らせてもいいでしょう。
もっと小さなお子さんなら、
「この歌が終わったらお着替えしよう」
「この絵本を1冊読んだら寝ようね」
でもいいのです。
ポイントは、
大人の頭の中だけにある「時間」を、
子どもにもわかる形に変換
すること。
そして、もうひとつ大切なのが「予告」です。
夢中になって遊んでいるところへ
突然、
「はい、終わり!帰るよ!」
と言われたら、
大人だって気持ちを切り替えにくいものです。
「あと10分くらいだよ」
「あと5分ね」
「あと1回したら終わろうね」
と少しずつ知らせてあげる。
そうすると子どもの中でも、
「もうすぐ終わるんだな」
という心の準備ができます。
それでも、
すぐに切り替えられない日もあります。
もちろんあります、子どもですから。
そんなときも、
「教えたのにできない」
ではなく、
「今、練習しているところ」
と思っておおらかに見守ってあげてください。
幼児期の学びには、
この「何度も」「何度も」の繰り返しがとても大切です。
一度教えたからわかる。
三度言ったからできる。
そんなものばかりではありません。
見せる。
聞かせる。
一緒に感じる。
そして繰り返す。
時間の感覚も、
そんな日常の小さな体験の繰り返しで育っていきます。
叱って時間を守らせるより、
まずは「時間ってこんなものなんだ」と感じられる工夫を。
ぜひ、ご家庭でひとつ取り入れてみてくださいね。
時間感覚の育て方
時間の感覚を育てようと思うと、
「時計の読み方を教えなくちゃ」
「時間のプリントをさせた方がいい?」
と思われるかもしれません。
でも、幼児期にまず大切にしたいのは、
時計のお勉強よりも「生活」です。
朝になったら起きる。
朝ごはんを食べる。
着替えて出かける。
夕方になったら家に帰る。
ごはんを食べて、お風呂に入って、眠る。
こうした毎日の繰り返しそのものが、
子どもの中に「時間の流れ」や「毎日のルーティン」を作っていきます。
そして、
「朝ごはんを食べたら着替えよう」
「お風呂のあとに絵本を読もう」
「絵本を読んだらお布団に入ろう」
というように、
生活の中の出来事と出来事をつないであげるのです。
最初は時計が読めなくてもいいのですよ。
「これの次は、これ」
「これをしたら次は、これだな」
という順序がわかるようになることも、
時間を理解していく大切な一歩です。
さらに、
「もうすぐ出発だよ」
「長い針がここに来たら出ようね」
「この遊びが終わったらお風呂だね」
と、毎日の中で時間に関する言葉をたくさん聞かせてあげる。
これが「入力」です。
一回で理解させようとしなくて大丈夫。
何度も何度も、
日常生活の中で自然に入力していきます。
すると、
少しずつ
「もうすぐって、このくらいかな」
「これが終わったら次はこれなんだな」
「5分って、このくらいの感じかな」
「もうそろそろ終わりかな?」
という感覚が育ってきます。
幼児に基礎概念を教えるコツ
子育てをしていると、
「何度言ったらわかるの?」
と思う場面がありますね。
でも幼児期は、
何度も聞いて聞いて、そしてわかるようになる時期。
一度でわからないことが当たり前なのです。
だからこそ、
叱るより、感じさせる。
教え込むより、生活の中で何度も何度も繰り返す。
そして、できなくても
「まだ育っている途中」と見てあげる。
時間の感覚は、
プリントの上だけで身につけるものではありません。
毎朝の「おはよう」から、
夜の「おやすみ」まで。
子どもは一日の暮らしそのものから、
時間を学んでいます。
そう考えると、
いつもの生活も立派な学びの時間ですね。
焦らず、根気よく。
子どもの中に「時の感覚」が育っていくのを、
一緒に待ってあげましょう。


