「叱らない子育て」をはき違えると大変!
幼児期に育てたい「待つ力」と「自己抑制力」
幼児期のしつけにおいて、非常に大切な柱の一つが、
「待つ力」
「我慢する力」
を育てることです。
これは、単に親の言うことを聞かせるためのしつけではありません。
また、子どもを厳しく抑えつけるという意味でもありません。
幼児期に育てたいのは、子どもの内側にある
自己抑制力です。
自己抑制力とは、
「今すぐ欲しい」
「思い通りにしたい」
「嫌だから泣きたい、怒りたい」
という衝動を、少しずつ自分で調整していく力です。
この力は、
後の学習姿勢、集団生活、対人関係、
さらには非認知能力の土台構築にも深く関わっています。
赤ちゃん期から始まる「待つ経験」
待つ力、我慢する力の土台は、実は0歳の頃から少しずつ育っていきます。
たとえば、赤ちゃんがお腹をすかせて泣いた時。
すぐにお乳やミルクを与えることも、もちろん必要な場面があります。
生後4か月未満の赤ちゃんにはそのように接してくださった方がいいと思います。
しかし、生後4か月を過ぎた赤ちゃんには
それではよくないことが多いです。
なぜなら、
泣いた瞬間にすべての要求を即座に満たすことばかりを繰り返していると、
赤ちゃんは少しずつ
「泣けばすぐに要求が通る」
という経験を積んでいくからです。
もちろん、これは赤ちゃんを放っておくという意味ではありません。
大切なのは、
「待たせること」と「不安にさせること」を混同しないことです。
赤ちゃんのそばにいて、声をかけ、抱っこをし、安心させながら、ほんの少し待つ経験を重ねていく。
このような関わりの中で、子どもは少しずつ自分の感情を調整する入り口に立っていきます。
泣くことは、赤ちゃんにとって大切な働き
赤ちゃんが泣くと、親はどうしても
「早く泣き止ませなければ」
と思ってしまいます。
けれど、赤ちゃんにとって泣くことは、単なる不快の表現だけではありません。
体を使う大切な運動でもあり、自分の状態を外に表す大切な手段でもあります。
力いっぱい泣くことで、呼吸器や体全体を使います。
また、泣いた後に落ち着く経験を通して、子どもは少しずつ
「高ぶった状態から落ち着く」
という感情調整の経験
を重ねていきます。
この時に重要なのは、親の関わり方です。
泣いている子をただ放置するのではなく、
「お腹がすいたね」
「もう少し待ってね」
「大丈夫よ」
と、笑顔で安心を与えながら見守る。
このような関わりが、子どもの心に安心感を残しながら、待つ力を育てていきます。
小さな我慢が、知力の土台をつくる
「我慢させる」と聞くと、かわいそうに感じる方も多いかもしれません。
しかし、幼児期の小さな我慢は、子どもの心を傷つけるものではなく、
むしろ心を育てるために絶対的に必要な経験です。
たとえば、
少し待つ。
順番を待つ。
自分の物を少し貸す。
もう一度やってみる。
すぐにあきらめない。
こうした経験は、将来の学習にもつながっていきます。
学ぶ力には、知識や記憶力だけでなく、
「考え続ける力」
「すぐに投げ出さない力」
「わからなくても向き合う力」
が必要です。
つまり、幼児期に育てる自己抑制力は、知力の土台でもあるのです。
9~10か月頃におすすめしたい「ちょうだい遊び」
9~10か月頃になったら、家庭の中で
「ちょうだい遊び」
を取り入れてみましょう。
おもちゃや身近な物を使って、
「お母さんにちょうだい」
「ありがとう」
「今度はどうぞ」
「お父さんにも渡してみようね」
というやり取りを繰り返します。
この遊びは、物の受け渡しを通して、
「相手がいる」
「渡す」
「返してもらう」
「順番がある」
という感覚を育てていきます。
まだ言葉で理解できなくても、体験を通して心に入っていきます。
このような小さなやり取りが、やがて友だちへの信頼と関わり方、集団生活、順番を待つ力、人とのやり取りの基礎になっていきます。
11か月頃の「手が出る」行動をどう見るか
11か月頃になると、他のお子さまに手を出してしまうことがあります。
親としては、
「乱暴な子になったのでは」
「お友だちに迷惑をかけてしまった」
と心配になるかもしれません。
しかし、この時期の子どもは、相手を攻撃しようとして手を出しているとは限りません。
むしろ、興味や親愛の表現として、手が出てしまうことも多いのです。
このころの赤ちゃんは
「かわいいね」
「一緒に遊びたいね」
「触ってみたいな」
という気持ちを、言葉で表すことができません。
ですから、この時期に必要なのは、頭ごなしに叱ることではなく、正しい表現方法を教えることです。
「かわいい、かわいいだよ」
「やさしくなでなでしようね」
「お友だちは痛い痛いになるから、そっと触ろうね」
このように、具体的に、やさしく、繰り返し伝えていきます。
顔のついたぬいぐるみを買ってあげるのも一計です。
しつけとは、子どもの内側に力を育てること
本来のしつけとは、大人の都合に合わせて子どもを動かすことではありません。
子どもの中に、
自分を抑える力、
相手を思う力、相手を信頼する力、
待つ力、
切り替える力、
やさしく関わる力を育てていくことです。
そのためには、乳幼児期からの小さな積み重ねが大切です。
待つ。
貸す。
返す。
順番を守る。
やさしく触れる。
少し我慢する。
このような一つひとつの体験が、子どもの心の根を育てます。
そしてその心の根は、やがて知力、学力、社会性、非認知能力の土台となっていきます。
幼児期のしつけは、厳しくすることではありません。
愛情の中で、少しずつ「自分を律する力」を育てていくこと。
そこに、
子どもの将来につながる大切な大切な意味と意図があるのです。
おろそかにしないでほしいと切に願います。


