短所と長所という概念について
初めてわが子を抱いたとき、多くの親は、赤ちゃんに何かができることを求めていたわけではありません。
泣いている。眠っている。小さな手を動かしている。
ただそこにいてくれることが嬉しく、何もできなくても、わが子はかけがえのない存在だったはずです。
ところが、子どもの成長とともに、親は少しずつ「できていないこと」に目を向けるようになります。
「まだ歩かない」 「言葉が遅い」 「お友だちにおもちゃを貸せない」 「言うことを聞かない」 「勉強をしようとしない」
なぜ、子どもを減点方式で見るようになるのでしょうか。
■子どもへの願いが、心配に変わるとき
親が子どもの「できていないこと」を気にするのは、わが子に幸せになってほしいと願っているからです。
育児書やインターネットで発達の目安を知ったり、同じ年齢の子どもができている姿を見たりすると、
「このままで大丈夫だろうか」
という不安が生まれます。
その不安が強くなると、昨日できたことよりも、まだできないことを探すようになります。
わが子を大切に思う気持ちから始まったはずなのに、いつの間にか親子ともに苦しくなってしまうのです。
■子どもは「そのままで100点」
私が子どもの見方として大切にしているのが、「そのままで100点」という考え方です。
何かができたら100点になるのではありません。
子どもは最初から100点であり、
そこに、できるようになったことをプラス1点ずつ加えていきます。
昨日より長く歩けた。
自分から挨拶ができた。
ちょっとだけ我慢できた。
失敗しても凹まずもう一度やってみた。
結果だけではなく、子どもが見せた小さな変化や努力を見つけ、加点していくのです。
■「そのままで100点」は、何でも許すことではない
「ありのままを認める」と聞くと、叱らず、何をしても許すことだと誤解される場合があります。
しかし、子どもの存在を認めることと、望ましくない行動をそのままにすることは別です。
人を叩いたら叱る。
危険な行動には毅然と叱る
家庭や社会のルールを教える。
必要なことは、きちんと教えます。
その際に大切なのは、「あなたはだめな子」と存在を否定するのではなく、「あなたは大切な子。でも、この行動は止めよう」と、子どもの存在と行動を分けて伝える
ことです。
叱られた日も、失敗した日も、子どもの存在の価値が減るわけではありません。
■親の自己肯定感も、子どもの見方に影響する
子どもを「そのままで100点」と思うことが難しい背景には、親自身が自分を減点方式で見ていることもあります。
「今日もイライラしてしまった」
「優しくできなかった」
「きちんと育てられていない気がする」
「ほかのお母さんのようにできない」
このように自分を責めていると、子どもの不足や失敗にも目が向きやすくなります。
親の自己肯定感とは、いつも自信があり、完璧に子育てができることではありません。
迷っている自分も、失敗した自分も含めて、
「それでも、今日できることをしている」
と認める力です。
しかし、親の自己肯定感が高くなければ子どもを認められない、という短絡的なことではありません。
まず、
親自身にも「そのままで100点」という見方を向けることが、
子どもを見る目を少しずつ変えていきます、ということです。
■家庭で始めたい「加点方式」の見方
加点方式の子育ては、特別な方法ではありません。次のような小さなことから始められます。
1.よその子と比べるのではなく、昨日のわが子と比べる
大きな成長でなくても構いません。昨日より少し早く支度ができた、前より自分の気持ちを言葉にできたなど、その子自身の変化を見ます。
2.結果だけでなく、過程を見つめる
成功したかどうかだけではなく、「やってみようとした」「途中まで頑張った」「もう一度挑戦した」という過程もプラス1点です。
3.存在と行動を分けて伝える
望ましくない行動は止めますが、子どもの存在そのものまで否定しないようにします。
4.一日の終わりに、親子それぞれのプラス1点を探す
子どもだけでなく、親自身のできたことも一つ見つけます。食事を用意した、話を聞いた、無事に一日を終えた。それも立派なプラス1点です。
■100点の上に、今日の成長を重ねる
子どもを育てていると、心配になる日も、ほかの子と比べてしまう日もあります。
そのたびに、「比べてはいけない」と自分を責める必要はありません。
初めてわが子を抱いた日のことを思い出し、もう一度原点に戻ればよいのです。
子どもは、何かができるから価値があるのではありません。
そこにいてくれるだけで、最初から100点です。
そして親もまた、一生懸命に毎日の子育てを続けているのです。
親も100点。子どもも100点。
その100点の上に、今日できた小さなことを、親子で一つずつ加えていきましょうね。


