パーツ選定にこだわった高速安定ゲーミングPCのオーダーメイド事例

古賀竜一

古賀竜一

テーマ:ITサポートの事例と実例

高速だけど安定しない高性能パソコンの姿とは

●先日依頼のあったゲーミングパソコンのオーダーメイド事例をご紹介します。



●ご依頼の内容は、ゲームをスムーズにプレイしたいけれども、通常のパソコンとしても使いたいという用途でのご依頼です。普通なら、業界でも最高スペックのパーツ集合体のようなパソコンに仕上げればどんなゲームもぬるぬる動くのは間違いないと思います。

●しかし、「普段使い」もしたい場合はそういうわけにもいきません。なぜなら、必要以上にスペックを追い求めると以下の点がデメリットとして顕在化します。

1.各パーツの消費電力が大きくなる
2.電力消費の分、発熱も大きくファンの個数も多くなり騒音が大きくなる
3.パーツ類は高温になりやすく、パーツの寿命も短くなる
4.それぞれのパーツは、安定性よりも性能重視なので不安定になりやすくなる
5.新規格のパーツが多くなりハード側だけでなくOS側のドライバーなどの影響で安定性に問題が出やすくなる

●以上のようなデメリットは、自作のゲーミングパソコンのトラブル相談でもよくある話です。動いていることが不思議なくらいの、とんでもない構成のモンスターマシンに出会うこともあります。

●また、ネットのQAサイトでも悲鳴に近い声が投稿されている事実を見てもゲーミングパソコンなどの高スペックパソコンでは仕様や組み合わせは無視できない要素です。

●要するに組込みの設計思想がいい加減だと、まともに動かないパソコンが出来上がってしまうのです。趣味や実験ならそれでもいいですが、大切な用途にも使うというのなら、ある程度の安定性は確保が必要です。

●どんなに高い費用をかけても安定しない状態ではただのポンコツマシン。要するに高いから良いというのはパソコンには当てはまらないというのが偽らざる事実なんです。

高速安定かつトラブル耐性に必要な仕様の条件とは

●性能をできるだけ高く保って、安定性なども重視するパーツ構成にするには、前述したデメリットをできるだけ回避すればいいのです。

1.各パーツの消費電力をよく考える

●高性能になればなるほど消費電力は大きくなりますが、性能をあまり落とさずに省電力設計になっているパーツがあります。そのようなものを選定すれば、発熱も少なく、電源のワット数も落とすことができます。

●例えば、CPUならTDP(PBP)が65Wのものにする、グラフィックスカードは外部電源不要のものにするなどで高性能かつ省エネ設計が可能です。

2.放熱性を高めるための工夫をする

●ケース内部レイアウトやファンの大きさ、配置などを工夫することで放熱性を高めると安定性や寿命が増します。少し余裕のある筐体にして内部の配線を空気抵抗が少なくなるように配置すれば放熱性は一層よくなります。

3.一点豪華主義にしない

●費用的に全体的に高性能にはできないからというので、ネット上で人気や話題のCPUとかグラフィックスカードを奮発して選ぶ方が多いですが、そのような一点豪華主義は
問題です。

●なぜなら、パソコンというのはトータルバランスが安定性の要だからです。一点だけ超高性能のものにしてしまうとボトルネックが発生したり、そのためだけに電源ユニットを大きくしないといけなくなるなど全体的なバランスが崩れます。

●特に、使用用途との齟齬が生じるようなパーツ選択をすると費用対効果が上がることはなく、逆に様々なデメリットの元になります。

4.パーツ選定で最新の規格を避ける

●CPUやマザーボード、グラフィックスカードなど、最新のものをすぐに採用するのは避けたほうが良いでしょう。なぜなら、最新の規格はドライバーなどの完成度も低く、市場で発生する様々なトラブルに対してフィードバックが得られていないためです。

●また、ロットの面でも欠陥や初期不良の発生率も高くなりがちで、最新であること以外のメリットはほとんどありません。できれば市場に出回ってから1年前後くらいのものを選択するほうが安定性に寄与します。

●時間が経てばドライバの完成度も高くなり、市場からのフィードバックが得られてハード的にも改良が加えられるため、非常に安定度が高くなります。

5.メンテナンスしやすい構成にする

●高性能なゲーミングPCは、水冷式冷却装置が必要な場合もあります。また、ファンの数も多数必要です。そのようなパソコンはほこりなどの付着も激しく、フィルターやファンの清掃を頻繁に行う必要があります。

●水冷式冷却装置も冷媒のパイプや接合部分の劣化で冷媒が漏れてマザーボードがショートしたりすることがあります。定期的な点検や交換が必要な部分ですから、メンテナンス性が良くなければいけません。一度組んだらそれっきりというような使い方をしていると大変なことになります。

●そのような気配りができないと高性能なパソコンの維持管理は難しいでしょう。空冷で十分な性能や用途なら、あえて水冷にする必要はありません。そういうメンテナンス性も考えてパーツ構成を考える必要があります。

使用したPCケース

●前面と背面で吸排気を行うため、ケース内が常圧にできる。負圧にするとほこりの流入、付着が多くなる。また、ファンの気流ライン上にグラフィックスカードが配置可能なケースが良い。



パーツ選定と製作工程

●今回は高速な内部転送速度を必要とするため、ストレージにオンボードのM.2(NVMe)1TBを採用。SATAのSSDよりもはるかに高速。電源は650W 80PLUS BRONZE



●グラフィックスは外部電源なしのGTX1650。プレイするゲームはそこまで3D性能を必要としないため必要十分の構成に。電力消費や発熱も少ない。そのため冷却ファンの音も低めで夜間の騒音も気にならないレベル。

●CPUは市場でもこなれてきた i7 12700F、PBP65W仕様。12コア20スレッドで最強レベル。最近ではコスパも良くなっている。



●メモリは16GBx2=32GBで余裕。ヒートスプレッダ付きで放熱性が良い。



●前面ファンからの吸気はグラフィックスボードに直接あたる。



●トータルバランスに優れたゲーミングPCが完成しました。



●ゲーミングマシンだけでなく、業務用のオーダーPCの設計製作も承っていますので是非ご相談下さい。創業からのオーダーメイドPC製作台数は数百台。豊富な経験と知見で高速安定のPCをお届けします。

筆者実績
http://www.kumin.ne.jp/kiw/index.htm#ss

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古賀竜一
専門家

古賀竜一(システムエンジニア)

九州インターワークス

ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

古賀竜一プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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