使っていないIT周辺機器の電源コードはコンセントから抜いたほうがいいのか、そのままでいいのか?
誰もが気になるパソコン、周辺機器まわりの配線
●今時、どこの家庭や職場でもIT機器が溢れかえっています。それに伴って配線類も多くなり、いつの間にかパソコン、スマホ、ネットワーク機器の周辺は配線だらけ。機器のトラブルが何か起きるたびに、絡みつく配線をたどるだけでも大騒動に。
●特に設置してから年数が経過し配線状況を忘れていると、いざというときどれが何の線なのかわからなくなってしまっている・・・これはどうにかしたい問題ですね。
●そこで、すべての配線をひとまとめにして整理してしまえば簡単・・と考え、配線をなるべく小さく綺麗にまとめて見栄えを良くする方向で解決し、すっきりしたいと思うかもしれません。しかし、それは最善の解決策ではありません。
●配線にはそれぞれ種類や機能があり、性質も様々です。そのことをよく知っておかなければ、単に見た目重視の綺麗な整理だけでは逆にトラブルや不具合の原因を作り出してしまうことになります。
●そこで、今回はパソコンやインターネットなど、IT機器やその周辺機器に関連する配線の正しい整理法をお話したいと思います。
※サポートに訪れたある事務所のネットワーク機器周りの配線状況。とにかくデスクの下に押し込んだのはいいけれども、それから先どうしたら良いかわからないということで悩んでいる方は多い。
100Vの電源ケーブルには要注意
●パソコン周りの機器類のケーブルは主に2種類に分けられます。ACアダプターのように電源供給だけで信号は流れない「電源線」と大きな電源供給は行わないUSBやLANケーブルなどの「通信(信号)線」です。電源線には更に2通りあり、100Vの交流配線とACアダプタでDC変換された後の直流用ケーブルです。
●コンセント側の100Vの電線周りには通電時に電磁界が発生します。その電磁界は電磁的なノイズとして微弱な通信(信号)線のデータ通信に影響を与えることがあります。
「電磁界」とは (中部電力パワーグリッド(株)ホームページより)
https://powergrid.chuden.co.jp/anteikyokyu/denjikai/jik_chishiki/dchi_about/
●そのため、信号線には外部からの電磁波の影響を防止する「シールド」という被覆で保護されています。ですから通常では通電した電源線と束ねてもそう大きな問題にはなりません。
●しかし、ACアダプタのDC出力側や、シールドがない、もしくはシールド効果が薄いケーブル、粗悪な作りのケーブルなどは電源線と束ねることで電磁界の影響を受けてしまうことがあります。特に消費電力の大きい高容量機器の100V電源線は、発生する電磁界も強いので他の配線と束ねないほうが得策です。
●それから、ACアダプタの本体(黒い箱)からも変圧の際に生じるノイズが出ています。特にトランス型のACアダプタ本体からは配線類や機器類を遠ざけて、ノイズの影響を受けない様にしたほうが良いでしょう。
電源のノイズについて
TDKホームページより 「電源のEMC対策」
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/noise/19
●要するに電源線と通信線は一緒にせず、分けて整理する必要があるということです。コンセント側の100V電源線は何本も束ねたりまとめたりすると中心付近の配線が放熱出来なくなります。放熱を考慮するためには配線同士の間にすこし間隔をとって平行に並べるようにまとめます。そのような配線マウント器具も売られています。
●信号線はまとめて縛ってもいいと思いますが、質の悪い線を一緒にしないように。
※配線の間隔をあけてマウントする器具などを使用する
※家庭では結束バンドを使うとコスパ良く配線同士の間隔をあけて整理することができる
配線の状態次第でトラブルや危険が迫る
●配線類を整理する際に最も気をつけたいことは「小さく丸めて束ねない」ということです。どんな配線でも巻いて丸めて重ねると、配線がコイル化します。コイル化は様々な悪影響を生みます。特に高容量下にある100V線では発熱や電圧降下などが起きることがありますので要注意です。
※100V電源線を小さく巻くと危険。見た目は良いが、トラブルの元になる。
●また、巻いて丸めることもそうですが、折りたたんだり曲げたりして配線をまとめることがあると思います。その際に、極端な丸め方や折り曲げ方をすると、配線が傷つくことがあります。外観上は異常がないように見えても、配線が中で切れかかったり伸びたり、折り目がついていたりします。
※無理な力で配線を曲げると中の芯線が傷付いたり、被覆が破れて配線がむき出しになって危険。
●そのような傷んだ配線は、効率が落ちるだけでなく、発熱したり、熱で配線が溶けたりすることがあります。危険ですから、整理の際は留意しておきましょう。
●インターネットの光モデムに接続している光ケーブルも同様に、極端な巻きや曲げは厳禁です。光は真っ直ぐ進む性質がありますから経路に極端な曲がり等があると正常に通信ができなくなってしまいます。
※配線を巻いたり、曲げたりしたまま使用しないようにする。
明らかに異常な配線はすぐに交換する。
●有線LANケーブル、USBケーブルが事務所の床などにのたうちまわっているサポート現場をよく見かけます。よく見ると回転椅子のキャスターで常に踏みつけている状態になっていて、配線はボロボロ。中の銅線がむき出しになっていることもあります。
●案の定、そのような環境ではネットワークやプリンタの調子も悪いという話が出てきます。それは当然といえば当然ですね。このような場合はまず、他の何よりもケーブルの交換が先決です。
●様々な配線が"ぞんざい"に扱われて、それが元でトラブルを招いていることを実際のサポート現場で数多く見て来ました。たかが線の一本や二本と思うかもしれませんが、ITの有線通信は配線が命なのです。安易に考えずに、踏みつけたり机や家具などの下敷きにしないように注意し、状態には常に気を配りましょう。
見た目ではなく、線の種類と用途で管理する
●以上のように、ただ見た目の良さだけで配線を整理してしまうと、思わぬトラブルになります。パソコン周辺の配線は、種類と用途別に管理して、その線の性質をよく理解して整理することが肝要です。
●IT機器が数多くある環境では、配線類の見直しというのも定期的に必要です。適切な配線の管理で、トラブルを未然に防ぎましょう。
●配線の整理に役立つお勧めのアイテムを以下のページで紹介しています。
ケーブル類を簡単、安全に整理する方法
●正しい配線管理についてはこちらの過去のコラムもご参考ください。
「たこ足配線は危険!でも何個も挿せる電源タップなら大丈夫なのか? 」
http://mbp-japan.com/fukuoka/pc-pro/column/8618/