納涼、パソコンの不思議な話
まさかの原因だけど意外と多いトラブル事例
●今日お伺いしたサポート事例です。パソコンが起動しなくなったということで、診断してほしいという依頼です。早速お伺いして電源を入れると起動に失敗したという意味の "DISK BOOT FAILURE"という表示で画面が止まります。このような場合、ほとんどが内蔵HDDに問題があるか、ブート領域やブートパーティションに異常があることが多いですから、トラブルとしては深刻な状況です。
●しかし、ふと気づいたのですがPC前面のフロントUSBポートにフラッシュメモリのカードリーダが挿してあるのを発見したのです。それにはSDカードが刺さっています。とりあえずそれをUSBポートから抜いて電源を入れ直すと何事も無くOSが起動しました。
●原因はカードリーダに刺さっていたSDカードメモリだったのです。早速起動したOS上からこのSDカードメモリを見てみることにしました。再度USBポートにカードリーダを挿すと、WindowsはSDカードを認識はしましたが「フォーマットしますか?」と表示が出て聞いてきます。依頼者に伺うとそれにはデジカメデータが入っていたということですが、SDカードに異常が発生しているようです。
●データはすでにバックアップを取っているということもあり、今回異常の出た16GBのSDカードメモリ自体は長年使っていたものだということで、信頼性も疑われるため廃棄処分となりました。
●しかし、なぜSDカードがOSの起動に影響を与えたのでしょうか?それは、今時のPCの仕組みが関係しています。
パソコンに接続したデバイスの異常を検知したら排除する
●パソコンを起動すると、メーカーロゴとともに"BIOS"というメインボード上の制御プログラム(いわゆる英語の画面)が出ます。これはWindowsなどの基本システムが起動する以前の段階です。その際、BIOSにはPC内の各デバイスや接続されている外部デバイスなどをチェックする機能があります。今回は、この段階でUSBカードリーダに接続されたSDカードメモリの異常を検出したために"DISK BOOT FAILURE"の表示が出て起動が止まったわけです。
●厳密にいうと、BIOSのブートプライオリティーがUSB優先になっていたのでその段階で止まってしまったわけです。こういった場合、設定でプライオリティーの順番を変更するかUSB起動をしない設定にすればカードリーダーは挿したままでも問題ありません。
●BIOSで異常が検出されPCが止まる場合は、メインボードはもちろんのことキーボードやマウス、無線LANアダプタ、外付けHDDなどが原因になることもあります。英語の画面が出たからと言って何も複雑で難しい原因ばかりとは限りません。
●これまでの別件の事例でも無線マウスのUSB送信子機の故障が原因だった!という簡単なことだったりしたこともあります。あわててサポート業者へ依頼する前に、自分で確認できる範囲のことはやっておきましょう。
フラッシュメモリは消耗品。過度な依存は危険
●さて、話をSDカードメモリに戻しましょう。SDカードやUSBメモリなどのいわゆるフラッシュメモリと言われる記憶媒体は、意外と故障が多く耐久性もそう高くはありません。それはフラッシュメモリのデータ格納の仕組みと物性的な特徴によるものです。
●また、繰り返しの読み書きに対しての耐性も高いとは言えず、個体差や製品品質の差でも寿命が短い傾向のものもあります。
●ホコリや静電気にも弱く、かなりデリケートに扱う必要があります。
●ホコリが元で接点の不良などが起き、メモリそのものが正常に認識されないことがあります。それが繰り返されると、ファイルシステムに異常が起きてパーティションが正常に認識されなくなったり、今回のように「フォーマットしますか?」という表示が出てしまったりします。
●フラッシュメモリは一時的に保管、受け渡しをするとか、データを移動させるような目的には最適ですが、長期の保存や保守目的では信頼性がそこまで高くないと言って良いでしょう。
●これまでの事例でもフラッシュメモリの異常は何度も何度も確認されています。私が使っていたSDメモリも先日2枚壊れました。とにかく普通に壊れるんです。ところが良く最近ネットで言われるのは「自分はそんなことになったことはこれまでない」「レアケースを持ちだして危険を煽っている・・・」と言うような経験や思慮の浅いライトユーザーの意見です。
●なぜそうなるのかというと、何と言っても母数が違いすぎるわけです。一人の個人的使用と多数のコンシューマーサポートの現場を混同すべきではありません。
●人というのは自分事にならないと何でも「無いこと」になってしまうもの。自分に起きてないことだから「無いだろう」というのはわかります。でもそんなことを言っているうちに自分事になった時点で「時既に遅し」。そこではじめて、人は「あー、こんなことってあるんだ」とやっと気がつくわけです。自分は大丈夫という過信はリスク回避に何にも役に立たないどころか害悪でしかありません。
●特に、USBメモリ、SDカードのみに唯一のデータがあるという場合、それは「バックアップ」とは言いません。バックアップというのは元データがどこかにあるからそれに対して言うのであって、そこにしかない場合はそれ自体がオリジナルデータです。その場合バックアップは存在しません。フラッシュメモリに入れた唯一のデータを「バックアップ」と言う習慣は紛らわしいので見直しましょう。
●フラッシュメモリへの過度な信頼、依存はデータ管理上、リスクも高くなりますので注意が必要です。
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