「免振ゴム」性能不足
「東日本大震災」により、駐車場スロープが崩落して2人が死亡し、6人が負傷した東京都町田市のスーパー「コストコ多摩境店」の事故で、「東京地裁立川支部」は、スロープの構造設計を担当し、業務上過失致死傷罪に問われていた一級建築士の「高木直喜」被告に、禁錮8月、執行猶予2年(求刑・禁錮1年6月)の判決が言い渡されました。
震災による建築物の崩壊で建築士の刑事責任が問われたのは初のケースです。
店舗とスロープの耐震構造が異なるのにもかかわらず、揺れに弱い鋼板で接合されたためスロープが崩れ、乗用車3台が下敷きになり、当時74歳と66歳の夫婦が死亡するなどした2011年3月11日発生の事故です。
設計の変更を担当した高木被告は、揺れに強い「鉄筋コンクリート造」での接合を前提にしていましたが、この内容を設計の取りまとめ役の「意匠設計者」に伝えなかったとして起訴されていました。
「構造設計」の専門家について、『多数の客や従業員が利用する大型建築物の安全を脅かす要因を除去するため、十分な措置を講じる高度の注意義務を負う。』と指摘し、高木被告には、『自分の設計通りに工事が行われるよう、「鉄筋コンクリート造」による接合の必要性を意匠設計者に確実に伝える義務があったのに、これを怠った。』と判断しました。
事故の責任については、「意匠設計者」や「施工業者」らにもあり、特に鋼板での接合にこだわった前任の「構造設計者」の責任は高木被告より大きいとして、『被告に長期の禁錮刑を科すのはバランスを欠く。』としています。
(讀賣新聞16.02.09抜粋)
タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所