震災で崩壊した建築物にかかわる「建築士」が有罪に
このところ相次いで品質トラブルが発覚しています。「日経アーキテクチュア」が建築実務者を対象に実施した緊急アンケート調査では、86.1%が「今後、品質トラブルが増える」と回答しています。
危機感を抱く背景には、品質を確保する最後の砦である施工の現場の弱体化があるといいます。
実際のトラブル相談・調査物件には多くの共通点があり、アンケート結果を裏付けています。
戸建住宅/マンション/ビル/店舗内装などの種別にかかわらず、すべての物件に共通する内容です。その共通点を以下に示します。
1) 契約内容が曖昧。(確認申請内容と工事請負契約内容、そして実際の工事内容が相違する。/設計内容の合意前に工事請負契約が締結される。/見積明細書が存在しない。…)
2) 詳細図、納まり図、構造図、設備図などの必要不可欠な設計図書が存在しない。(意図的に必要な設計図書を作成しない。/何が必要なのかわからない。)
3) 工事管理、工事監理を行わない。(設計監理と施工が分離されている場合でも、監理者が現場に来ない。来ても適切な判断が下せない。)
4) 施工図/施工計画書/施工要領書などの作成を含めて、施工上必要な検討を行わない。行うことができない。
5) 末端の下請業者以外、当該現場の状況を把握していない。
6) トラブルになった場合、「設計通りに施工した。監理者が十分確認した。」「注文者の指示通り実施した。」「アフターサービス範囲外で追加料金を支払えば補修する。」「確認機関のお墨付きをもらっている。」…と嘯く。
消費者(建築主/発注者)の元にいち早く駆けつけた者(設計者/工務店/ゼネコン/ハウスメーカー/デベロッパー/建売業者など)だけが相当利益を享受し、曖昧な契約内容(設計図/施工図)で下請業者へ工事を投げる。事情を知らず、技術力のない下請業者および末端作業者などは、曖昧な契約内容(設計図/施工図)に基づく、支払われる金額に見合う範囲の工事を実施する。その結果、消費者(建築主/発注者)の意向と相違し、法律的/技術的に欠陥を有する建築物が完成する。
必然的にこのような建設プロセスが常態化し、日本の建築物の質および技術力の低下に拍車がかかります。
このように、現在、実務にかかわる建築関係者の倫理観や技術力を、闇雲に信用することはできない時代です。
消費者(建築主/発注者)は、客観的立場にあり信頼のおける専門家のアドバイスや確認を受けながら、この迷走に歯止めをかけてもらいたいと願うばかりです。
当初に金銭的負担が少々生じますが、コストパフォーマンスは限りなく高いものとなります。
(NIKKEI ARCHITECTURE 2014-5-25 抜粋)
タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所