「マンション」が傾斜:横浜市
東京都建築安全条例第6条第2項において、「高さ2mを超える崖の下端からの水平距離が、崖高の2倍以内のところに建築物を建築し、または建築敷地を造成する場合は、高さ2mを超える「擁壁」を設けなければならない」と規定されている。ところが、当該長屋は、崖の上端にほぼ接し、崖の下端からの水平距離は約8.2mであり、北東側隣地との高低差約7.65mの2倍の距離を満たしていない。しかし、崖の下端には石の古い土留めと、上端にコンクリートの土留めがあるのみで、「擁壁」を設けていなかった。
「建築審査会」は、12年4月24日に現地調査を実施し、崖崩れが発生すれば、隣地住宅に被害が及ぶことは明らかであると判断し、裁決において、「擁壁」が設けられていないことが、東京都建築安全条例第6条第2項に違反するものと認めた。
また、建築基準法第19条第4項において、「建築物が崖崩れなどによる被害を受ける恐れのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない」と規定されていることに触れ、この長屋の建築計画に「安全上適当な措置がなされている記載が一切ない。」と断定し、この長屋の建築計画は違法であるとした。
このほか、「崖を含む敷地の地盤強度が不明であり、周辺住民の土地建物や生命身体に回復困難な著しい損害を与える恐れがある。」
と認定してた上で、12年3月6日に執行停止を決定した。
「建築確認を取っていれば合法。」というものの、後から詳細に検証すると、内容が杜撰であったり、違法な点が見逃がされていたりする場合も少なくない。それでも従来は、建築主が「建て逃げ」できる状況が見られた。
今回の事例のように「建築審査会」の段階で、「建築確認」取り消しの裁決前に執行停止が出されれば、小規模な建築物でも建築主の「建て逃げ」は難しくなる。デベロッパーなどの事業者は、強引な計画遂行が頓挫する「リスク」が大きくなったことを認識しなければならない。
《日経アーキテクチュア 2012-10-10参照》
調査鑑定/設計監理/CM(コンストラクションマネジメント)
タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所