売上低迷のスーパーマーケットの店舗活性化の手引き 何をすればお客の支持を得られるのか?
「朝の開店に間に合わなかった」「あの商品、また欠品していた」「人が足りないから仕方ない」――。
いつの間にか職場の口癖になっていないだろうか。
多くのスーパーの現場で売上が伸び悩む原因は、外的要因よりも“現場の中にある詰まり=ボトルネック”である。
実は、売上を止めているのは競合などの外的要因でもなく、今まで当たり前に遣っている非効率な作業の流れのどこかにある場合が多いのである。
「もう少し早く準備できていれば」「少し順番を変えれば」――その“少し”の積み重ねこそが、利益を生む現場の改善の本質である。
今回は、スーパー経営の基本である「品揃え・鮮度・衛生・接遇」の四原則を軸に、ボトルネック(制約条件)を見抜き、現場の力で売上を伸ばす実践法を解説する。
人手不足やコスト高の中でも、まだできることはある。
「仕方ない・・・」を「どうすれば・・・」変えれば、店は変わる。その第一歩を、あなたの現場から始めてほしい。
現場の“詰まり”が売上を止めている ― ボトルネックとは何か
スーパーの現場には、売上の流れを止めている“詰まり”が存在する。
これが「ボトルネック(瓶の首)=制約条件」である。
開店時100%の品揃えが“有るべき形”として、それが実現できていない場合、「それを妨げている何か」がボトルネックである。
瓶の首の部分の大きさで、全体の流れが決まる。首の直径が大きくなるか、なくなれば、全体の流れはスムーズになり、得られる成果は大きく変わる。
どんなに努力しても成果が上がらない時、それは頑張り方が間違っているのではなく、作業の流れのどこにボトルネックが有るかを見つけることが重要である。
惣菜売り場で開店時に商品が並ばない、青果で補充が間に合わない。これらはすべてボトルネックの存在がある。
開店時の1日1,000円の欠品でも、365日続けば年間36万5000円の損失となる。
つまり、売上が伸びない理由はお客様の減少ではなく、「現場の詰まり」が原因のことが多い。最初にやるべきことは、“何が流れを止めているか”を見つけることである。
惣菜・青果・精肉・鮮魚にも共通する「制約条件の外し方」
ボトルネックを外す第一歩は、「仕方ない」をやめることである。
人が足りない、時間がない、設備が古い・・・。
そんな理由を並べる前に、現状の中でできる工夫を考えることが重要である。
惣菜なら、“売れる商品から先に作る”、青果なら、“朝のピーク時間に合わせて並べる順番を変える”、精肉や鮮魚なら、“値付けと陳列を分担して同時進行する”。
また、これらと併せて、一品一品の製造数を変えることをも重要となる。
こうした小さな見直しで、驚くほど効率は変わる。
重要なのは、「できる方法を探す」という意識の転換である。
“できない理由”ではなく、“できる工夫”で動かす。これを繰り返すことで、同じ人員でも生産性は確実に上がっていく。
スーパー経営の基本四原則 ― 品揃え・鮮度・衛生・接遇
現場改善のベースにあるのが「スーパー経営の基本四原則」である。
第一は品揃え。欠品は顧客の信頼を損ない、再来店率を下げる。
限られた人員でも、重点商品の欠品を防ぐ工夫が必要である。
第二は鮮度。商品はもちろん、売場の空気感や清潔感も“鮮度”のうちである。
第三はクリーンリネス(衛生管理)。バックヤードの整理整頓も、お客の信頼につながる。
第四は接客・接遇。
言葉だけでなく、目線・声・気配りの一つひとつが売場の印象を決める。
この四原則の標準レベルを設定して、それを守り続けることが、売上を安定的に伸ばす最短の道である。
小さな改善が“年間365万円”の差を生む ― 現場改善の実践
改善の効果は「一度きり」ではなく「積み重ね」で現れる。
たとえば惣菜コーナーで開店時間に間に合うように準備が整えば、売上はすぐに反応する。
次は10分前、さらに15分前と目標を高める。こうして時間を前倒しすることで、お客様が最も買いたいタイミングに商品が揃うのである。
その結果、欠品が減り、機会損失がなくなり、利益が積み上がる。
現場の改善とは、決して難しい理論ではない。
毎日の作業の流れを確認して、その中のボトルネックを一つ外す。
それでも効果が薄ければ、更にボトルネックを探すという活動が重要である。
それだけで、人手を増やさずに売上を伸ばすことができるのである。
地域密着型スーパーが生き残る道 ― 「仕方ない」を変える経営
地方や郊外で営業するスーパーにとって、地域密着は最大の強みである。
地域の風習や旬の味、地元の食材を理解し、それをお客様に伝えることができるのは、地元スーパーならではの価値である。
しかし、その価値を支えるのは“現場力”である。
日々の業務で「仕方ない」を放置せず、「どうすればできるか」を考える文化をつくることが、持続的な成長の鍵となる。
今こそ、“ボトルネックを外す経営”へ。地域の人々の暮らしを支えるスーパーが、もう一段強く、もう一段賢く進化する時である。
成長のためのボトルネック探し
現場の改善とは、特別な人や最新システムが必要なわけではない。
必要なのは、「できない理由」ではなく「できる方法」を考えるチームの力である。
1日の小さな工夫が1か月後、1年後には大きな成果になる。
人が少なくても、設備が古くても、売上はまだ伸ばせる。
その可能性を信じて、現場をもう一度見直してほしい。
スーパー経営の主役は、経営者でもチーフでもなく、“現場の一人ひとり”である。
朝早くから売場を整える人、閉店後に次の日の準備をする人、その努力が積み重なってお客様の信頼をつくっている。
ボトルネックを外すとは、そんな仲間たちの力を最大限に活かすことでもある。
今のままでも店は回る・・・。
「もう少し良くする」ことを諦めた瞬間、成長は止まる。
「仕方ない」を「やってみよう」に変えたとき、現場は動き出し、店は生まれ変わる。今日できる一つの改善が、お客の支持を得て明日の売上を変える。
あなたの現場から、その一歩を踏み出してほしい。
ボトルネックは、どんなに素晴らしいオペレーションの中にも存在する。
それを探さない手はない。改善しないことは勿体ない。
もっともっと、成長できるのに・・・。



