ノウハウ以上に、ノウホワイが大事!
売上が伸ばしにくい現在において、固定費と変動費のコスト削減は、経営にとって重要かつ急務の改善課題と言えるでしょう。
コスト削減を、「行っている」「いろいろと考えている」というスーパーも多いでしょう。
コスト削減は、営業利益率を高めるための最良の方法であり、生産性向上のためには、絶対不可欠な考え方と行動です。
しかし、
「絶対にやってはいけないコスト削減」と、「やらなければいけないコスト削減」があることを正しく理解しなければなりません。
そして、重要な視点は、ES(従業員満足)とCS(顧客満足)、そしてマーケティングの3つです。
では、具体的に解説します。
1.ES(従業員満足)を低下させないこと
スーパーマーケットで一番高いコストが人件費です。
人件費が低減できれば、その分営業利益は拡大します。
しかし、単純な人件費の削減は、従業員の離職につながることを考えておく必要があります。
現場の調査をせずに、そして、仕組みを変えることなく、投入人時を削減すれば、仕事の出来る社員に仕事が集中して、業務負荷がかかり、その分残業が増えることなども考えられます。
また、業務負荷によって、計画や売場管理など、主体業務の遂行が疎かになることも考えるべきです。
また、福利厚生の部分のコスト削減は、従業員のモチベーションに関わり、引いては現場の生産性に影響することになるでしょう。
会社は、折角築いてきた社員との信頼関係性を壊すような、コスト削減は、避けるべきです。
削減すべきは、お客のベネフィット(ご利益)に繋がらないムダな作業であり、商品開発などの付加価値業務に対しては、戦略的に人時を割り当てることが重要です。
2.CS(顧客満足)を低下させないこと
人件費の削減によって一時的に営業利益率が高まっても、商品やサービスの質が低下してしまっては、顧客のためにはなりません。
そして、折角築いてきた、顧客との信頼関係を壊してしまう可能性もあります。
また、商品の原材料の質を下げることや、工程をカットしたり、鮮度管理のための時間削減や、目利きの訓練などの手間を省くことは、商品の鮮度や品質を低下させて、スーパーマーケットの競争優位性を保つことが出来なくなってしまいます。
「商品やサービスの質を保つこと。向上させること。」を、行動の根幹に据えた行動をとることが重要です。
3.マーケティングの手間と時間を減らさないこと
マーケティングは、とても広い意味を持っています。
単純に説明することは難しいのですが、Wikipediaの解説を利用させていただくと、
『「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念である。
また、顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセスを指す。』とあります。
また、コトラーのマーケティング理論では、「商品やサービスで利益を上げるためには顧客 (ターゲット)をしぼり、その顧客が求めている価値を提供すること」
ともあります。
ですから、長期的な視点を持たない、短期的な利益アップを目的としたコスト削減の行動は、
時間の経過とともに、顧客からの期待や支持を失いかねません。
急速なコストアップや価格競争などによって、経営が逼迫している様なときに、短期的な利益アップを優先したコスト削減を必要とする場合もあることも事実です。
それは否定できません。
しかし、そうでなければ、中長期的な成長を無視した、戦略の無いコスト削減は、遣るべきではないでしょう。
わかりやすい例が、商品開発費でしょう。
手間も時間も掛かり、単純に次から次へとヒット商品が出来上がる保証はありません。
しかし、現代の様に、お客の情報収集力が高まり、価値観が多様化していく時代において、価値ある商品やサービスを日々提供できなければ、お店に対するお客の期待値は低下し、中長期的に利益が減少してしまう可能性が高いと言えます。
正しいコスト削減ですべきこと
では、成果に繋がる正しいコスト削減をするには、どうすれば良いのか?
その答えこそが「ムダ取り」です。
トヨタの生産方式を勉強した人は、ご存じかもしれません。
「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」という在庫管理の考え方と技術のことです。
ちなみに、トヨタの生産方式は、アメリカの他メーカーの生産現場ではなく、スーパーマーケットの現場を観たときのアイデアから、生まれています。
「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」という在庫管理の考え方と技術が、在庫のムダ、作業のムダを減らすことに繋がります。
計画⇒発注⇒入荷⇒検品⇒移動⇒加工⇒陳列⇒補充、そして、販売(お買上げ)という、「在庫(商品)の一連の流れの中で、ムダを無くしていく」という、考え方と技術が、生産性に大きく関わります。
そして、結果として、「品質を高めること」「高い鮮度を保つこと」を実現することが、お客からの高い信用に繋がり、会社の中長期の成長の可能性を高めるのです。
ムダな作業が少なくなれば、時間の余裕が生まれます。
その余裕分を、販売計画、商品開発、接客接遇など、経営と販売の戦略の実現性を高めることに回し、日々努力することです。
誰かに負担を押し付けるような、コスト削減を進めるのではなく、誰もが喜ぶコスト削減を進めることが、経営の重要なポイントです。