生産性アップが、多くの問題を解決する‼【商人舎magazine3月号】原稿
全国展開のB社の加盟店企業M社。そのある店舗のPOSデータを加工して、価値情報に変えて分析してみた。
結果は、少なくとも、年間440万円程度の値引きロスが削減できることを確認できた。
これは、大げさな数字ではなく、標準的な会社が実現できる範囲であり、しかも1店舗だけの数字である。
言うまでもなく、実現できれば営業利益を440万円アップさせることが出来る。
しかし、事はこれだけに収まらない。
440万円は、あくまでも値引きロスのみの数値であり、廃棄ロスは含まれていない。
そして、値引きロスの削減は、値引きや廃棄の作業、作り過ぎ、出し過ぎと言った、作業改善を進めることになり、人件費も大幅に削減できることになる。
気付いてないスーパーは少なくない。 数量管理の重要性!
「すぐに取り掛かるべき優先事項ですね…」
私が出した情報を確認した社長は、すぐに理解してことの重要性を理解してくれた。
そしてまた、情報化された指標からは、多くの商品で欠品の可能性も推測できた。
現場を良く理解している人であれば、経験していることであるが、事例のように商品ロスが多い場合は、欠品も多くなる傾向がある。
なぜかというと、
全体として、数量管理が出来ていないからだ。
欠品や商品ロスが多い場合、発注担当者や作業指示をするリーダーが、単品ごとの販売動向を理解していない場合が殆どである。
そして、その殆どが、POSデータを活用していない(出来ていない)。
欠品は、帳票には出てこないが機会損出を出し続けることになる。そして、お客の不満が発生する重点課題でもある。
売上を上げるより、大きな利益貢献が得られるロス削減
都市部や地方に限らず、多くの地域で業態を超えた競争を繰り返している。
取り分け関西地区では、ロピアの出店が相次ぎ、そのスピードを緩める気配もない。
また、関西スーパーを傘下に収めることが出来なかったオーケーが、大阪に進出するという情報も聞こえてくる。
多くの人は、売り方に目を向けているが、脅威はそれだけではない。
本質的には、圧倒的な生産性の高さであり、ローコストオペレーションである。
解りやすく言えば、「安く売れる仕組み」「それでも儲かる仕組み」が出来上がっていることである。
迎え撃つ企業は、目先の売上を追っている場合ではない。
現場のムダを無くして、粗利益率を上げ、経費率を下げるためのオペレーションの改善を急ぐべきだ。
ただの安売りでは、経営の将来が無い。
ローコストオペレーションのレベルを上げる
ローコストオペレーションのレベルを上げることが出来れば、
1.売価を下げて高いシェアを実現する
2.高い営業利益率を実現する
3.経営戦略の選択の自由度が増す
のである。
1の「売価を下げて高いシェアを実現する」は、競争環境の厳しい企業にとっては、大きな力になるだろう。
2の「高い営業利益率を実現する」は、現状差しあたって価格競争を優先する必要が無ければ、社内に利益を蓄えることが出来る。
資金余力が高くなることによって、想定外の事態を踏まえて財務的な蓄えを持つことは重要である。
3の「経営戦略の選択の自由度が増す」は、コスト優位や差別化、集中化など、戦略策定と、それを実現するための方法の選択肢が多くなるということ。
商品開発や教育訓練、そして、オペレーションの改善や設備投資など、成長のための計画に余裕をもって取り掛かることが可能となる。
簡単にロス削減 その工程を理解実行する
ロスの削減は、私のクライアントの事例を見ても、方法と手順を間違わなければ、それほど難しいものではない。
ポイントとしては、
1.データを情報化する
2.データを正しく検証すること
3.現場で起こっている現象と併せてデータを確認すること
を実行することで、改善作業は有効性を増して、得られる成果を高まることになる。
結果を得られる期間も、数日から1~2週間程度でも、確実に改善成果を得られるだろう。
情報の『見える化』を行うことと、現場の問題発見と課題設定を行い、優先順位を付けて改善活動に取り掛かることが重要である。
データの『情報化』と『見える化』の重要性
下の表が、POSデータを『情報化』して『見える化』したもので、ロスを管理する帳票の事例である。
自社のコンテンツが含まれている都合上、イメージだけをお伝えするが、『見える化』することによって、短時間で問題を発見することが出来るようになる。
データは数字の羅列である。
多くの場合、必要のないデータが含まれたり、並べる順番で、見る人の理解力に大きな差を生んでしまったりしてしまう。
理解力に差が生まれてしまえば、問題発見と課題設定が異なり、改善活動の優先順位も変わってしまうことも起こりえる。
得られる結果(成果)も変わってくる。
データを加工する人の仕事は、重要度が高くその分責任も重いと言える。
目先の売上を追ってはいけない理由?
売上は、追うものではなく、「マーケティングの中身とその活動を実行した結果である」と私は考えている。
出来が良ければ、売上は高くなるし、悪ければ低くなる。
そして、粗利益も確実に高くなる。
安売りなどで売上を追うと、粗利益の低下の可能性が高くなり、人件費などの経費も高位に安定してしまう。
今回の事例に戻るが、440万円の改善を実現して、営業利益がその分増えたとする。
この店舗の売上が、年間12億であり、営業利益を約0.37%押し上げる計算になる。
仮に営業利益率が1%とすると、137%の伸びになる。
また、440万円は、値引きロスだけの数字であり、廃棄ロスや人時ロスなどは含まれていない。
そして、ムダな在庫や作業が無くなり、作業全体は、楽に簡単に早くなる。
これらが、「目先の売上を追わない」理由である。
ローコストオペレーションは強い!
値引きや廃棄、作業ロスを削減して、現場のムダを少なくして、ローコストオペレーションを実現することは、
1.売価を下げて高いシェアを実現する
2.高い営業利益率を実現する
3.経営戦略の選択の自由度が増す
と説明したが、結果として、マイケル・ポーター(アメリカの経営学者)の唱えた3つの基本戦略、
1.コストリーダーシップ戦略
2.差別化戦略
3.集中化戦略
を実現していくことにも繋がる
ロピアもオーケーも、そして、今現在、元気の良いスーパーマーケット企業は、ローコストオペレーションの完成度が高い。
そして、競争優位を確立している。
今現在、あなたが、
「停滞している」「ジリ貧」「将来の不安」を感じているのであれば、現場のムダについて考えてみてはどうだろうか。
大きな成果に繋がる『発見』があるかもしれない。