スーパーの売上を上げる8施策まとめ 買い上げ点数を上げ、客単価向上を目指せ
消費者調査においてベルク(埼玉県/原島一誠社長)で最も購入率が高かったのが青果部門だ。消費者 から支持される理由は何か。食品スーパー(SM)の業務改善専門コンサルタントで、青果部門のスぺシャリストでもある新谷千里氏に、ベルクの青果部門の強さを調査・分析してもらった。
陳列、高回転率で フレッシュさを訴求
ベルクの青果売場を端的に表現すると 「ベーシックとスタンダード」という言葉がふさわしいだろう。ちなみにベーシックとは、基 本や根本のことで、それが実行されていること。
スタンダードは、標準的にレベルが一 定以上を維持できていることを意味する。
ベルクの青果売場からは、これといった 派手さは感じられない。
しかし、お客が 日々の食生活をおくるうえで、快適な買物 体験ができる売場だと感じる。
これは、ベルクのコンセプト「Better Life with Community(地域社会の人々により充実した生活を)」を実現するべく、一定レベル以上の鮮度管理と品揃えを追求しているからだと考える。
ベルクの青果売場は、基本的に売場 づくり、品揃え、商品の棚割りまで全店で 標準化されている。
調査に訪れた「ベルク和光西大和店」(埼玉県和光市:2020 年7月開店)の売場を順にみていくと、壁面の冷蔵多段ケースの先頭は、レタスとブロッコリーの裸売りだ。
ブロッコリーは茎のトリミングが確実に行われ、切りたてのカット部分から鮮度感が伝わる。
平台で展開するアイテムでも、きゅうりのバラ売りのほか、南瓜や長芋、キャベツ、白菜などのカット商品からフレッシュさが感じられる。
商品の値引きからもベルクの特徴が見 てとれる。まず、値引きをしている商品でも、 鮮度が大きく低下している物はない。見切り処理のタイミングを比較的早く設定して、商品の回転率を上げていると想定さ れる。
また、ベビーリーフは20%引き、ルッコラ は半額という様に、アイテムごとの支持率(回転率)の高低によって、値引き幅がコントロールされている。
これは日々の数量管 理により商品ごとの売れ行きをきちんと把握していることの証明でもある。
青果売場の最後方に配置する平台前 面では、地場野菜を集積する「FARMERS STATION」コーナーを展開する。
コーナーには、2本ののぼりが設置されるとともに、「とれたて!!直送!! 和光近郊生産 者のこだわりの新鮮野菜をどうぞ!」と書かれた生産者の写真付きの大型バナーが 天井から吊り下げられている。
こうした取り組みは、お客への鮮度感や安心感の訴求、競合店との差別化以外に、生産者や地域との絆を深くするうえでも重要である。
高鮮度の背景にある徹底した数量管理
ベルクの青果部門は、サラダ関連やト マト、西瓜、バナナといった重点アイテム (またはカテゴリー)の陳列尺数がしっかり 確保され、それらのSKUも適度に揃えられ ている点も、お客からの支持が高い理由 の1つだろう。
たとえばトレンド商品であるサラダ関連 やカット野菜は、冷蔵多段ケースの約4割ものスペースを割り当てていた。POSや消 費支出などの統計データを戦略的に活用していることが窺える。
これは品揃え計画 (MD)における基本原則である。お客が求めるカテゴリーの売場が広く、それらの品揃えが充実していることから、お客は「品揃えが豊富なお店」と感じる。
やたらとアイテムとSKU数が多いことではない点を 理解すべきだ。
一方、サラダ関連商品とは逆に、芽もの・妻ものや珍しい果物といった支持率が低くロス率が高くなるようなアイテムは品揃えから 除外されている。
そのため、多段ケース、平台ともに、売場に雑多な感じが無く、選びやすい。これによって売場の販売効率は高 くなり、かつ売場管理もしやすいことから作 業効率もよくなる。
また、あくまでも売場の陳列在庫を見ての意見だが、陳列量と販売量が大きくかけ離れた商品が少ないと感じる。
先述の 通り、品質管理(クオリティ・コントロール)と数量管理(ユニット・コントロール)が、高位に保たれており、日々のお客の買物体験 において品質に対する満足度は高いであろう。
青果売場において、お客からの支持を 得るうえで最も重要であることは、何と言っても「鮮度」であり、ベルクは数量管理に よってそれを実現していると言える。
このように、数量管理の良し悪しは、お 客に提供する商品の品質レベルに大きくかかわる。現場の数量管理のスキル不足 は、作り過ぎ、陳列し過ぎ、値引き、廃棄というような、ムダな作業を発生させて、作業工数を増大させる。
結果としてFLコスト(商品原価+人件費)の増加を招くことになり、競争力は低下する方向に向かってしまうのだ。筆者はSMの業務改善専門のコンサルタントをしており、品質管理と数量管理は、生産性、競争力、お客の支持率の向上の点から、最も重要な要因となる。
ムダを排除した売場づくり「絶対満足宣言」の効果
売場での作業工数を減らす工夫も多く 見て取れる。 たとえば、もやしやカット野菜など高購入頻度商品が並ぶ多段冷蔵ケース下段 は、コンテナ(通い箱)を活用して陳列する。
また、従業員は独自の補充用・陳列用 カートを活用して省力化を図っていた。
そのほか、長芋といった一部の計量販売ア イテム以外のバーコードは、価格と紐づけられたPLU(Price Look Up)コードを活用して、売価変更作業などの店内作業を 軽減する仕組みを作り上げている。
また、一部のSMで見られるような、効果 性を感じられないPOPやトップボードなど のムダな掲示物も無い。
プライスカードも、広告関連以外のものはB7サイズで統一している。
一方で、青果売場を見渡すと、ドレッシ ングや漬物づくりのための関連品、サラダ のトッピングなど、関連購買や想起購買を 促す仕組みがあり、お客にとって便利な 売場と言える。
サラダ関連として販売していたアボカドは、鮮度管理の難しい商材ながら適熟であり、販売点数を確実に伸ばしそうだ。
「絶対満足宣言」と銘打つ返金保証 制度を用意している点にも触れたい。
購入した商品の味や鮮度にお客が不満を 感じたらベルクがお金を返すという内容のものである。
この制度は結果的に、仕入れ から販売までの鮮度管理基準が厳しくなり、
これによりロスが低減される。
また、お客と取引業者からの信用度を高めることにもつながる。 このようにベルクの青果売場は、総合 的に言えば商品管理レベルが高いのだ。
だからこそ、高い鮮度での商品の提供、ロスの削減が可能になり、これにローコ ストオペレーションの施策が加わることで、さらに価格競争力を高めている。
派手さ感はないが不自由もない
ベルクは行動指針に「生鮮食料品を中心に地域密着型のストアづくり」「チェ ーン展開、店舗の標準化、作業の効率 化等によりコスト削減」「産地開発等で商 品力を高める」「買い回りしやすい売場」などを掲げる。
青果売場ではそれらを着実 に実行していることが感じられた。ベルクの青果売場には、派手さはない。
しかし、お客が、日々の生活の中で買 物をするのには、とくに不自由も感じないだろう。
むしろ、ベーシックで、スタンダードな売 場は、見やすく、商品を選びやすい。販売側からしても、手間が掛からず管理しやすく、ロスも出にくく、ローコストオペレーションが推進され生産性は高くなる。
そしてそれは、お客に低価格のベネフィットとして還元され、その結果、支持が高まる。この好循環こそがベルクの青果売場の強さの神髄である。