データを、賢く『武器』に変える方法【商人舎WEBコンテンツ9月号・原稿】

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーの業務改善

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データとは、実績数字など、『事実』のことです。

そして、データをどう読み込み、整理整頓して、価値情報に変えること出来るかで、仕事の生産性は、大きく変わることになります。

現場の多くの事実を、どう読み取ることが出来るか・・・。(収集・発見)
そして、問題を見付けることが出来るか・・・。(診断)
また、解りやすく価値情報に変えることができるか・・・。(課題設定)
これらのプロセスを組むことが習慣化されていて、戦略的を組み立てることが出来る会社は強いと言えます。

今回も、いくつかの事例を示しながら、解説していきます。

データと情報の違いと賢い使い方

POSシステムから得られる実績数値、顧客情報、現場で日々起こっている現象、撮影した動画や写真などと、多くのデータが存在しています。

数値データは、数字が羅列されただけでは、何の役にも立ちません。
実績データを並び替えたり、加工したりして、分析しやすいようにすることが重要です。

データを価値情報に変える作業は、多少テクニックが必要になりますが、
「何のために使うか」
「何を知りたいのか」
ということがハッキリしていれば、その加工能力は、経験とともに確実にレベルアップすると思います。

例えば、クライアントの会議に参加させてもらうと、やたらと数字が多く、見にくく、解りづらい資料を基に、会議を進行していることが、少なくありません。
情報化されていないデータを見ながら始まる会議と、価値情報化された資料を見ながら進める会議とでは、会議の生産性は全く違ったものになります。
前者では、時間だけがやたらと掛かって、生産性の低い会議を年間やり続けることにもなってしまいます。

次に何をするべきかを教えてくれる『武器』

「次に何をすれば良いのか」を教えてくれるのも、『情報』の重要な役目です。
しかし、読み取り方によって、改善行動が変わってしまうことも考えられます。

得られた価値情報から、良い結果を出すための戦略(仮説)を立て、その『実行計画』を立てて、実際にやってみる。そして、検証を行う(データ収集)。
この、plan(計画・目標)-Do(実行・行動)-See(評価・チェック)の戦略サイクルを、確実に無駄を少なく回すためにも、情報が重要な役目を果たすことになります。

データは、事実を表すツールにしかなりませんが、価値情報に変えることによって、戦略上重要な武器に変わるのです。

分析力で生産性を上げる方法

同じデータを見(診)ても、見る人によって、そこから得られる情報が全く違うということは、少なくありません。
個人の過去の経験則や知識(理解)、起こっている事実に対する焦点のあてどころ、時代や価値観などなど、分析値に大いに影響します。

当然ですが、それらは、戦略実現のための武器であり、改善のための行動を変える元になります。
分析力が低ければ、課題を抽出することが出来ずに、お金と時間を無駄に費やす結果も考えられます。

例えば、店舗のある部門の売上高を考えるうえで、
(部門)売上高=店舗(買上げ)客数×(部門)支持率×(部門)一客点数×(部門)客単価
であることを理解していれば、これらの数値を定期的に抽出して、さらに、推移で観察する仕組みを作っていれば、問題点は瞬時に解るようになり、課題設定も容易になります。
(※下記の表2を参照)

何と比較するかが重要

過去の実績との比較、業界の実績との比較、競合他社との比較、あるべき目標値との比較など、目標設定とその実現に向けた行動をするためには、『比べ方』が重要になってきます。

大まかに言うと、下の図1のように、何らかの基準(目標)があって、それとの乖離を確認して、それに追い着く(中立化)こと、また、それを維持すること。
また、基準(目標)を大きく上回ることを考える(差別化)戦略を組むことなど、やることを明確にするためにも、データを正しく加工して、情報化することは、無駄なく行動するためにも重要なこととなります。
                        【図1】
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下の表1は、部門損益表(管理会計)の事例ですが、改善活動の成果を、前年対比(増減額、対比率)と月々の推移(流れ)で見ることが出来ます。 

各勘定科目と人時効率の前年対比と月々の推移で構成しています。
特に、売上高、粗利益高、人件費、そして、営業利益高について、チーフレベルまで情報共有をはかります。
最下段には、業務改善による人時効率を理解することにより、現場の生産性に対する意識レベルを高める役目も果たしてくれます。
                            【表1】
商人舎WEBコンテンツ2009表①.png
また、下の表2は、バイヤー用の分析表と報告書を兼ねたものになります。
売上高を構成する、支持率、1客点数、一品単価。
そして、売上高と粗利益高、人件費の前年比、営業利益高とその増減額という構成で作成しています。

売上高だけ見ていると、どこに問題があるかが解りませんが、売上高の構成要素を適時確認することで、「何をすべきか」の改善が必要な部分がより具体的に解ってきます。

                             【表2】
商人舎WEBコンテンツ2009表②.png
重要な分析用データを、もう一つ紹介します。
表3は、カテゴリー(刺身)のベストレポートになります。
ここで重要視したいのは、値引き率(値引き点数÷販売点数)とロス率(値引金額÷予定売上高)です。

刺身や寿司、総菜などは、値引きや廃棄、そして、欠品を管理することが重要となります。
当然ですが、値引きや廃棄は、作業工数(人時)を必要としますので、適時適切に単品管理を行うことで、粗利益と営業利益に大きな差を生むことになります。
加えて、時間帯別や日別の欠品を現場で確認し、改善することを行うことで、利益は大幅に拡大することになります。

                            【表3】
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表を見れば解るように、売上高だけを見ていれば、問題点は見えません。
しかし、右の値引き率やロス率に目をやれば、問題点と課題は、すぐに理解できると思います。相当な改善効果が期待できることも判断できると思います。

データ収集の仕方(仕組みづくり)が重要

「何でも分析できますよ」といっても、情報に変えるまでに長い時間を要してしまえば、情報の価値は、時間の経過とともに極端に低下してしまいます。

例えば、棚卸しや損益計算書(管理会計)などは、実施日から少しでも早く結果をまとめて出せるような、社内の仕組みづくりが求められます。

特に、業務改善を実施している場合などは、改善活動の結果を早く知り、必要に応じて、行動(やり方)を修正(コントロール)する必要も出てくることも珍しくありません。

plan(計画・目標)-Do(実行・行動)-See(評価・チェック)のSeeが遅くなれば、その分大きなマイナスになることも十分考えられるのです。

そして、上記表1~3のように、目的を持った、誰が見ても解りやすい分析表を作ること、そして、常に社内で共有できる仕組みを構築することも、非常に重要になります。

発見力で、利益(未来)は大きく変わる

『定量データ』であるPOSのデータや顧客の買い上げデータなどと、『定性データ』である現場の現象データや報告書、お客の声など、起こっている事実をどう拾えるか(発見力)は、会社の重要な仕組みになります。

事実から、価値情報を掴むことが出来れば、売上高、粗利益高、あらゆるロス、人件費、そして、生産性は確実に拡大するチャンスを掴むことが可能となります。

私のような業務改善のコンサルタントにとっても、如何に価値情報を掴み取り、現場に解りやすく説明できるか、そして、日々使える仕組みとして定着出来るようにすることが、コンサルティングの重要な仕事の一つになっています。

このことは、会社の経営幹部でも同じことです。
経営幹部にとっても、重要度が高く、且つ優先度の高い、必須のスキルであるのです。

データは、『思い』ではなく『事実』です。
このことも、現場では勘違いが多くありますので注意が必要です。

そして、抽象的な意見ではなく、数字を見せた方が、説得力があります。
数字を目標にすれば人は伸びるし、やり方自体を自分達で考えるようになるのです。


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新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングと作業改善、そしてコスト削減。他では教えてくれない理論と実地指導で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

新谷千里プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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