人手不足が小売業を変える!小売業が取り組むべき改善策【ダイヤモンド・チェーンストア215原稿】
今回は、私が、業務改善のコンサルティングをしている、クライアントの事例です。
下記の表・1が、その実績数値(3月から12月)になります。
12月の実績は、
1.売上高 98.4%
2.粗利率高 111.0%
3.営業利益 252.3%
となり、
営業利益が前年実績の188万円アップになっています。
【表・1】
数年前は、それなりの営業利益を上げていた、地方に数店を構えるスーパーマーケット企業です。
しかし、ここ数年、他のスーパーマーケットやドラッグストアの進出で、売上はジリ貧、粗利益が低下して、営業利益が大幅に減少してきていました。
当然ですが、生産性は更に低い状態です。
業務改善をスタートした当初は、全体的に基本原則を伝えて、部門ごとの課題の改善に取り組んでもらっていましたが、青果部門の改善が進まずにいましたので、途中から、青果部門全店の改善を集中的に遣ることになりました。
・品質管理
・在庫過多
・値下げ、廃棄ロス
・作業スピード
・売り場展開
・マーチャンダイジング
など、課題箇所はハッキリしています。
改善策として、実行してもらったことは、
・POSデータを活用した数量管理
・検品の徹底と早期の見切り処理
・仕入基準の明確化
などによって、鮮度(支持率)を上げること。
・売場コンセプトの明確化(鮮度と味にこだわる)
・重点商品の売上アップ策
・計画的マグネット展開
・実践的なマーケティングの原則理解と実践管理
などによって、粗利益率を拡大すること。
そして、
・在庫削減
・作業段取り(手順)変更
・作業動作の修正
・カートの効果的活用
などで、ムダな作業工数を削減して、作業効率を上げること。
など、単純作業の投入人時削減と、付加価値業務への人時投入拡大を実現して、実行していきました。
これらの業務改善活動によって、下記の表・2で分かるように、
1.投入人時 89.4%
2.人時売上高 110.1%
3.人時生産 124.2%
を実現しました。
【表・2】
人時生産が上がるということは、会社にとっても従業員にとっても、好ましいことであり、特に、売上が伸びにくい時代には、非常に重要なことです。
会社は、人件費効率を高めて、損益分岐点を下げる効果が期待できます。
一方、従業員にとっては、人時当たりの付加価値をアップすることによって、報酬アップを実現することに繋げられます。
このことは、生産性を考える上では、重要なポイントです。
そして、中長期的に企業が成長発展するためには、確実に人時生産性を向上させることを、確かな目標にすることが重要です。
この企業も、競合店が多く売上げが伸び悩み、苦労していました。
しかし、これは、日本中で起こっている現象であり、ドラックストアの出店など、さらに厳しさを増す商圏が、日本中にあると言えます。
その中で、「どの様にビジネスを行っていくのか?」が、問われている時代だとも言えます。
私がクライアントに言っていることは、
「今の売上で、十分に営業利益を拡大させる体質」になるための『仕組みを作り上げる』ということです。
今、日本全国で、業績低迷で苦しんでいる会社のその殆どのは、『昔ながらのやり方』を続けています。
会社が継続発展するためには、『売上が伸びない時代でも儲かるやり方』に変えないといけないのです。
その対象は、商品構成や品揃え、オペレーションなどのほぼ全てを変えるということです。
要するに、『生産性を上げる』ということです。
スーパーマーケットの多くは、生産性が低すぎます。当然、損益分岐点も高いという現実があります。
だから、競争力が低くなってしまいます。
「商品構成や品揃え、オペレーションなどのほぼ全てを変える」と言いましたが、一挙に何もかも遣るということではなく、優先順位をつけて、業務改善を行うということです。
営業利益を2.5倍にしたクライアントも、確実にその手順を踏んで遣っています。
そして、全てを成し遂げたということでは有りません。まだまだ、道半ばです。
これから、一流の域まで到達してもらいます。
そして、今回の成果で重要なことは、チームメンバーが、「自分たちは遣れる!」という、『自信』を身に着けたことです。
自信無さげにしていたチームが、半年程度で、全く違うチームに変身しました。
そして、このチームは、今後、「攻撃的な販売戦略をやる」準備が整ってきています。
実際には、もう少し先になりますが、十分な利益を出せるようになってきていますから、その余裕が十分に出てきています。
今後、他の部門の業務改善を実施していきます。
そして、それぞれの部門の特性に合わせたオペレーションの改善や、実践的マーケティングを実行してもらいます。
そして、次にやってくる新年度は、戦略的な営業戦略を組んでもらうことになります。
今まで、Excelを使って、数字合わせをしていた予算を、各部の営業利益を使った攻撃的な戦略を組んでもらいます。
来年の今頃は、どうなっているか、大いに楽しみになってきました。
当然、会社全体で、最低でも、『営業利益2倍』を達成させます。
そして今よりさらに、「地域で一番愛される。無くては困る」、デスティネーション・ストアになってもらいます。
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月刊商人舎 新谷千里の「お客と社員に支持される生産性向上策」
新谷 千里(しんがい・ちさと)Profile
スーパーマーケットの業務改善のコンサルタント。20年以上にわたって、100社以上の業績向上を実現している。「営業利益を2倍にする」ことを念頭に、生産性アップのためのオペレーションと仕組みの改善を指導する。また「売れる」「売れてしまう」、実践的マーケティング戦略と売場づくりを、現場起点で総合的にコンサルティングする。とくに高い鮮度と味を実現して、お客さまに提供するための作業と仕組みづくりは、科学的で高い実績を上げている。