ビジネスとは『愛』である
2017年01月10日
損益計算書を見れば、ビジネスの『目的』が何であるかは、新入社員でも解ります。
しかし、このことを正しく理解していない中小企業は非常に多いと思います。そして、組織内でそれが共有化され、戦略的に活用している企業ということになると極端にその数は少なくなります。
当然のことながら、ビジネスの目的を正しく理解している人とそうでない人とでは、焦点の当て方が違いますので、日々の行動が違ってきます。言うまでもなく、結果が大きく変わってしまいます。
「お金がすべて」的なことを言っているのではありません。会社の理念に基づき、コンセプトをつくり、それを理解し、共有化して行動し、それが、お客の共感を得て、売上げをつくり会社の利益に繋がるのです。また、利益は、次の成長のために使われます。経済的成長や会社の維持発展のためには不可欠です。
逆に言えば、利益は、お客の共感(満足)から生まれ、そのためには、コンセプトを持った従業員の行動が不可欠であると言えます。その行動は、従業員の理解(満足)なくしては生まれません。
競争の厳しい時代にあって、会社が継続発展するためには、中長期のゴールや目標を明確にすることも、リーダーとしては重要な仕事です。そこで、重要な武器になるのが、部門別損益管理の仕組みです。
■ 目的と行動原理
何を目的(戦略)にするかによって、それを達成するために行動が変わります。
下の表を見ていただければ、お解りいただけると思いますが、売上だけを目的にしている場合、在庫もロスも、作業効率も投入人時も問題では有りません。
また、粗利益を目的にしている場合は、在庫やロスは、重要な要素となりますが、作業効率や投入人時は問題では有りません。
一方、営業利益を目的にした場合は、在庫もロスも、そして、作業効率も投入人時(人件費)もすべて重要な要素となってきます。
ただ、こう書くと、「あれもこれも遣らなければならない」と、考えてしまう人もいるかもしれませんが、あまり深刻に考える必要はありません。
「営業利益を上げる方法は、幾つも有る」と考えてください。
先ずは、あなたの会社や店舗(部門)の現状を確認して、効果性の高いものや、スピードを持って取り掛かれるものから優先順位を付けて、改善活動に取り掛かれば良いのです。
何度も言いますが、何処に「目的を設定するのか」「目標をどのレベルに設定するか」で、とるべき行動は変わります。
そうなると、今まで当たり前にやっていた行動の間違いに気付いたり、方法が違っていることに気付いたりと、多くの発見が有ると思います。そのことが重要なことなのです。
■ 具体的数値を目標にする
私は、業務改善のコンサルティングをさせていただいていますが、クライアントには、多くの場合、目標を営業利益2倍に設定してもらっています。
これを言うと、ほとんどのオーナーさんは、「えッ、絶対無理です・・・」と言います。
しかし、達成期間の差はそれぞれですが、ほとんどの企業(部門)がそれを達成してくれています。
何故できるのか・・・。
それは、クライアントの今までの目的と目標、そして方法とは違うからです。
売上を2倍にするという目標は、達成する可能性は、短期では限りなく0に近付きます。
しかし、営業利益2倍は、それに比べれば、ハードルが極端に低くなるのです。
また、目標が高くなると、誰もが「どうしたらできるか」と考えるようになります。
そして、先述したように、営業利益を上げるためには、色々な方法が有るということなのです。このことによって、各クライアントが、今まで取って来た行動の多くが、違ったものになります。
スーパーマーケットに限らず、多くの企業で、業態を超えた競争の時代になって来ています。ましてや、実店舗に対して、ネット販売や宅配ビジネスなど、競争が複雑になっていくときに、高度成長期のような売上を基軸にした考えでは、よほどの資本力がない限り経営は継続出来ません。このことは、大手企業でも例外では有りません。
生産性を高め、営業利益に軸足を置いて、経営の仕組みを再構築する必要が有ります。
そして、このことが、戦略を変えるということに繋がるのです。
■ 月次決算を確実に実行する仕組みを作る
私が、今まで携わったクライアントの多くで、月次決算が翌月早期にまとまって作成されている企業は、決して多くありません。
翌月月末になっても出来上がらず、出てきた数字もいい加減な状態を、私は今まで数多く見て来ました。
そして、戦略的に活用されている企業となると、極端にその数は減ってしまいます。
原因は大きく、2つ有ります。
1つ目は、経営者側の問題です。ハッキリ言って勉強不足です。
大切なことは、
1.月次の損益計算書の意味と重要性を正しく理解すること
そして、
2.それに対する管理業務の優先順位を上げる
ことです。
2つ目は、担当税理士や財務担当者の意識不足です。仕事が、決算処理に向けられ、月次決算が形骸化され、その決済処理完了日も遅く、その精度も低い場合か少なくありません。
重要なことは、
1.社内の経理処理のスピードを上る
2.担当税理士に月次決算処理日を早くしてもう
3.その精度を上げる依頼をする
ことです。
もし、これらのことが出来ないのであれば、早々に出来る税理士に代わってもらうことを強くお薦めします。
具体的には、決算日が月末であれば、
1.翌月5日位までに請求書の処理(収集と打ち込み)を終了
2.10日位までには、月次の損益表を作成
3.同時に部門別の損益表を作成しアウトプットを終了
します。
この場合、あくまでも、現場の営業カルテ(管理会計)の作成であり、経理上の決算書では有りませんので、数万円程度のズレは許容範囲と受け止めて良いでしょう。
月次決算を知る重要な意味は、現場のプロセスのコントロールに有ります。
現状の問題点を早期に洗い出し、必要に応じて即時修正を行うという、改善活動に繋げることが目的です。
病気と同じで、早期に発見できれば早期治療によって、大きな問題に発生することを防ぎ、結果的に時間もお金も節約できるのです。
■ 効果的なフォーマットの作成
月次の損益計算書を見る上で重要なことは、経過月の推移表にして見るということです。
ですから、縦軸には、勘定課目、横軸には月次ということになります。
もし、現状がそうでなければ、税理士事務所にその旨を伝え、そのフォーマットで作成依頼を掛けてください。通常出回っている会計ソフトであれば、ほぼ100%ソフトのカスタマイズ(特注)をしなくても作成できます。
※損益計算書、推移表
そして、次の段階は、店舗の損益表から、各部門の損益表を作成することになります。
この場合、押さえておきたいポイントとしては、「財務会計」と「管理会計」の違いです。
財務会計は、税務申告などに使われる、正確な情報提供目的であるのに対して、
管理会計は、社内の経営管理者の意思決定や業績管理や評価がその目的であるということです。
作成方法の事例としては、下の表の①から③を見ていただきたいと思います。
これらは一例であり、戦略や目的によって内容は異なります。
上記の部門損益表は、経費の中で重要管理項目である人件費について注視しています。
投入人時を項目に追加して、人時売上高と人時生産性、そして、労働分配率を見やすく管理しやすくしてあります。
また、POSシステムで、値引きや廃棄などが正確に手間なく管理できるシステムが構築されている場合は、下の表の様に、『商品管理関係』の粗利益管理に重点を置き、課題の『見える化』をすることも、管理会計では重要です。
粗利益管理の細部が具体的に分かっていれば、その分改善のスピーをド上げることが可能となり、より迅速で効果的な対応が可能になると言えます。
☛ロスを細かく分類して管理する。
計画ロス = 政策値下げ額 + 試食販売額
商品ロス = 値下げ額 + 廃棄額
※粗利益高=値入高 - ロス高
ただ、ここで注意しておきたいことは、現場の手作業で数値を拾い上げ、表を作り上げることに多くの作業工数や時間を使ってしまうことはあまり感心しません。
目的は、現場で起こっている現実の課題に対して、的確でスピーディな対応を行うことに有ります。立派な損益表を作ることでは決して有りません。
そして何より大事なことは、月次の締め日から1日でも早く部門別損益表を作成して、問題の確認とその対応を行い、あるべき方向へコントロールするしいう仕組みを組織内に作り、これを日々繰り返すことに有るのです。
■ 前年対比を診ることが、大きな目的
部門によって、儲かりやすい部門と儲かりにくい部門が有ります。
ですから、各部門の特性を知ることや、各部門の現状を正しく理解することは重要です。
しかし、部門別損益管理をすることは、部門間で競争することが真の目的では有りません。
各部門の現状を正しく理解し、改善の方向性(可能性)を探り、効果的な業務改善の活動を行い、営業利益を向上させる仕組みを作り上げることが真の目的です。
※人件費を直接と間接(レジや事務、その他応援など)に分けて管理している場合の損益表
また同時に、年間を通して、売上高や営業利益高の高い月と低い月の確認を行うことが出来るようになります。
このことによって、粗利益率や各経費の使い方などの傾向や問題点、課題も見つかって来ます。
逆に、年間予算の中から、「どの月に戦略的に人時(人件費)を投入するか」や、販促費などの投資を、「どの方法、どのタイミングで行うか」など、効果性を考えながら、人やお金をより戦略的に配分をすることが出来るようになります。
■ 現状を科学的に知る
部門別に損益表が出ていない場合は、まずそれを作り上げ、現状を知るためのカルテを作るところから始めます。
そして、部門別損益計算書を見れば、部門ごとの「儲け」、そして、「強みと弱み」が、「見える化」されます。
「思っていたより儲かっている」逆に、「意外と儲かっていない」や「赤字だった」ということが発見できることになります。
このことは、『営業戦略上重要で大きな意味』を持ちます。
一般的には、部門特性上、加工食品のカテゴリー部門がダントツに営業利益が高くなります。
生鮮部門では、精肉、青果、鮮魚、総菜部門の順で、営業利益が高くなります。
しかし、これらは、営業戦略や競合状況、粗利益高(率)や店舗オペレーションの出来不出来、コミッサリーなどを含むアウトソーシングや物流システムなど、部門(店舗)を取り巻く多く環境や条件により、企業間の違いが有ります。単純に他社と比較することは出来ません。
まずは、結果を知り、問題点や課題を発見し、今後どの様な対応が必要であるかを考えることが重要なのです。
■ 会社の強みを生かす、営業利益ミックス
先述したように、加工食品部門(カテゴリー)は、加工などの店内作業が無い分、作業工数が少なく、人時売上高が高く、人時生産性も高くなる傾向にあります。
しかし、競争上、フロントエンド(集客戦術)としての位置づけから、原価割れの目玉商品の投入などにより、粗利益率が低下しやすくなっている店舗も有ることでしょう。
また一方、総菜部門など差別化戦略を前面に押し出すために、手作りによる出来立て、作り立てを前面に出している店舗も有るでしょう。
結果的に粗利益率は高く出来るかもしれませんが、店内作業の工数が多くなり、投入人時が増えて、人時売上高が低くなり、人時生産性も低い場合も多々あります。
場合によっては、営業利益が赤字である場合も少なくありません。
赤字の部門の売上構成比が高くなるとどうなるか・・・。間違いなく経営を圧迫してしまいます。
売上高と粗利益高でしか管理していない場合、こういう戦略的な誤りを起こしかねないのです。
その他、店舗立地や競合状況、仕入れ環境や商圏環境などによって、それぞれに「強み」と「弱み」が存在します。
この様な場合でも、部門別損益管理を行っていれば、正確に定量的データの確認によって、科学的な経営判断が可能となり、営業戦略が立てやすくなるとともに、その方向性を誤る確率が低下します。
そして、さらに、『営業利益ミックス』(売上高構成比と営業利益率による相乗積管理)を行うことが出来れば、より強固な営業戦略を立てることが可能となるのです。
このことについては、戦略転換がスピードを持って出来るという意味で、規模の小さい企業の方が、有利に働くことも十分考えられます。
■業務改善のすすめ
以上のことから、
「改善のアイデアが浮かんだ」と言う方や、
「進むべき方向がぼんやりと見えてきた」と言う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
チャンスは、どの企業に於いても、ほぼ平等にあるのです。
要は、行動すること、そして行動の仕方です。
しかし、「どうしたら・・・」
次号では、2017年度の決算で「営業利益を前年対比2倍にする」ための
コンセプト、戦略、ゴール設定、オペレーションについて、具体的に説明を加えて行きます。
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■ 『スーパーの営業戦略』 その他の参考記事
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