スーパーの売上を上げる8施策まとめ 買い上げ点数を上げ、客単価向上を目指せ
スーパーマーケットの客数を増やすには、いくつかの施策が考えられます。無数にあるように思えるかもしれませんが、成果を上げる施策は「新規の客数を増やす」「リピーターを増やす」の2つに絞られます。来店客数をアップさせる施策について紹介していきます。
来店客数を増やすには
来店客数を増やすための重要課題は、次の2つになります。
- 新規の客数を増やす
- リピーター(再来店顧客)を増やす
まず、「①新規顧客を増やす」について見てみましょう。
「売上=客数×客単価」という計算式はご存じでしょう。この計算式の通りお客様1人が1回の来店で購入する金額(客単価)が上がり、客数が増えれば売上が向上します。
そして、この計算式のうち「客数」に注目すると、「客数=新規顧客+既存顧客」と表すことができます。客数を増やすためには新規顧客の獲得が大きな課題になるのです。
次に「②リピーター(再来店顧客)を増やす」について見てみましょう。
リピーターとは、言うまでもなく、繰り返し店に来てくれるお客様のことです。店舗の1日の売上は「売上=客数×客単価」ですが、一定期間の売上を考えた場合、お客様一人ひとりの「来店回数(頻度)」が重要になります。「来店回数(頻度)」が増えれば、期間内の「客数」が増え、売上を向上させることができます。
新規顧客を増やす
マーケティング用語に「1:5の法則」というものがあります。既存顧客に販売するためのコストを1とすると、新規顧客に販売するコストは5、つまり、5倍のコストがかかるということです。これは、既存顧客の維持にかかるコストと新規顧客獲得にかかるコストにもあてはまります。
しかし、だからと言って新規顧客獲得の必要はないということにはなりません。どんな業種であっても、既存顧客にばかり目を向け、新規顧客の獲得をなおざりにすれば経営が先細りになるのは明らかです。新規顧客の獲得にはコストも時間もかかります。そのため、比較的コストがかからない既存顧客の維持に目が行きがちですが、店が存続していくためには、新規顧客の獲得は重要な課題なのです。
リピーター(再来店顧客)を増やす
「LTV(Life Time Value)=ライフタイムバリュー」という考え方が注目されています。「顧客生涯価値」と訳されますが、1人の顧客が生涯にわたって自社製品やサービスをどれだけ購入・利用し、どのくらいの利益をもたらしてくれるかを示す値です。
LTV値の高い顧客とは、言いかえれば、その企業の「根強いファン」ということになります。その企業の根強いファンであるため、その企業の製品やサービスを何度も購入・利用するのです。スーパーマーケットへの来店回数(頻度)の向上を考える際にも、この「LTV=ライフタイムバリュー」の観点から考えることがポイントになります。
言うなれば、既存顧客との関係を強め「お店のファン」になってもらうということです。お店のファンになってもらうことができれば、そのお客様は繰り返しお店に来て下さいます。リピーター(再来店顧客)を増やすことは、厳しい競争を勝ち抜くために欠かせない要件です。
客数をアップさせる7つの取り組み
いま、スーパーマーケットを取り巻く環境は厳しさを増しています。競合他店はもちろん、ドラッグストア、コンビニエンスストア、ディスカウントストアなど他業態の参入が進み、また、食料品や飲料についてインターネットを介した購買も浸透しています。
こうした中、いま各スーパーマーケットが、新規顧客の獲得、リピーター(再来店客)の増加に真剣に取り組んでいます。客数をアップさせる取り組みについて、一緒に見て行くことにしましょう。
来客数を増やす「フロントエンド」と利益を増やす「バックエンド」
フロントエンドとバックエンドは、マーケティングの世界でよく使われる用語ですが、商売において昔から言われる「損して、得取れ」と似た考え方です。
スーパーマーケットの特売を例にすれば、安さでお客様を集める特売品がフロントエンド商品、そして、利益を確保するための商品がバックエンド商品ということになります。ここで大切なことは、フロントエンドで「損して」も、バックエンドで「得取れ」となる仕組みになっているかどうかということです。
(1)フロントエンドは集客数アップが目的
フロントエンドはお客様を集めること、集客数アップが目的です。そのため単に低価格設定の売品だけではなく、新規性(トレンド)のある商品を打ち出したり、楽しさ・面白さ・わくわく感があるイベント企画などによって、お客様に来店を促します。
新聞折込みチラシやポスティング、ダイレクトメール、スマホを使ったメール販促や各種SNSの活用など、あらゆる販促ツール・媒体を駆使して、お客に興味を持たせ来店につなげることが大切です。チラシ一つをとっても、「あ、いつものチラシね」ではなく、「えッ、なに?この店行かなきゃ!」と言わせるものにしなければなりません。
その際、大きな「売り」になるのは、お客様からの支持が高い玉子などの特売品かもしれませんし、北海道フェアなどのように「美味しさ・楽しさ」をアピールする企画かもしれません。いずれにしても、お客様に自店に足を向けさせる仕掛けがフロントエンドです。
(2)バックエンドは、粗利益(客単価)アップや再来店を促すことが目的
フロントエンドによって集客できたとしても、特売品を売ってそれで終わりでは単なる経費の無駄遣いに終わってしまいかねません。儲けを出さなければ商売として意味を持ちません。重要なことは、来店したお客様の客単価アップや再来店を促す仕組みを用意しておくことです。
フロントエンドで集客し、バックエンドで粗利益(客単価)のアップを図る方法としては、集客した顧客に高単価品を推奨する「アップセル」や、関連商品を推奨する「クロスセル」が効果的です。
また、家庭での在庫切れを思い出させるなどして購入してもらう「想起購買」、陳列やPOP広告などによって思わず商品を手にとらせる「衝動購買」、お客様の興味を引く条件を提示して購入してもらう「条件購買」など、さまざまな方法を駆使します。
いちごの季節のことです。私がコンサルティングを行っているスーパーの競合店も、産地と低価格を武器に売り出していました。そこで一つの実験を行いました。急遽いちご売場を拡大し、その中に店にあったフルーチェとコンデンスミルクを集中して陳列したのです。結果は、半日でフルーチェは、ほぼ完売。コンデンスミルクも数本を残すだけでした。
これは、クロスセル(関連商品推奨)と想起購買をミックスさせた方法です。
ここで重要なことは、一つには、お客様がフルーチェもコンデンスミルクも「必要なもの」「あったらいいもの」と納得して購入しているということ。
そして、もう一つ、家に帰りいちごと一緒に食べ「おいしい。買ってよかった」と購入に「価値」を見いだしたであろうということです。つまり、フロントエンドで集客し、バックエンドで客単価をアップさせるだけではなく、さらに「価値」を見いだしてもらうことが大切になります。お店での購買に価値を見いだしたお客様は、必ず再来店して下さいます。
ターゲット顧客を増やし・広げる際の考え方
マーケティングでは「ターゲット」の絞り込みが重要になります。例えば、新製品の発売に際しては、「たくさんの人に売る」ではなく、「誰に売るか」を明確にします。
そのために年齢、性別、世帯(単独、夫婦、一般)、所得など、さまざまな観点から顧客を区分し、ターゲットを絞り込みます。
しかし、こうした統計を用いた属性による区分ではなく「ペルソナ」という観点からの絞り込みもあります。ペルソナ(persona)は「人格」と訳されますが、マーケティングでは、ある人の価値観、生い立ち、ライフスタイルなどを想定して人物像とストーリーを作り、その人物像へのアプローチを検討します。
スーパーマーケットで売場に出る野菜についてのデータを見ると、「カット野菜」などの購入率が高くなっています。そして、年代が高くなるほど「野菜そのもの」の購入が多くなっています(全国スーパーマーケット協会「消費者調査2015」」より)。
このデータからカット野菜のターゲットは若い世代と言えそうですが、しかし、ペルソナ(人物像)から考えてみれば、一概にそうとは言えません。
シニア世代であっても「奥さんを亡くして今は1人暮らし。それまで料理をした経験が少なく、野菜をカットするのが面倒なうえ切り屑の処置にも困っている」。そんなペルソナ(人物像)とストーリーからターゲット顧客を検討することもできます。
ペルソナの設定を通じて新しい提案やアプローチを生み、ターゲット顧客を増やし、広げることも集客にとって大切です。
買わない理由をなくすリスクリバーサル
マーケティングという言葉は多くの人が知るようになっていますが、一般的には「顧客について考えること」と捉えている人が少なくありません。しかし、マーケティングの成功例に共通しているのは、「顧客の立場で考えている」ということです。そうした意味で注目されるものに「リスクリバーサル」があります。
「リスクリバーサル(risk reversal)」は本来は金融用語ですが、集客や売上向上を考えるうえでは、顧客が持つ「リスク(risk)=不安」を「リバーサル(reversal)=反転させる」ということになります。つまり「これを買っても大丈夫だろうか」「もし、○○だったら嫌だな」という顧客の不安やためらい取り除きを、購買へ反転させるということです。購買をためらう顧客の背中を押して上げる、と言うこともできます。
代表的な例に「商品に満足できなければ○日間返品・返金保証」というものがあります。「美味しくなければ全額返金」として話題となった外食チェーンの例もあります。売り側にとっては、当然ながら「返品や返金が大きくなったら…」という心配があります。
しかし、それでも多くの企業があえてリスクリバースを打ち出すのは、返金という保証を与えることで集客し、その後、その顧客と長くお付き合いができるという成算があるからです。また、新規顧客の獲得に比べればコストパフォーマンスが良いという判断があります。
スーパーマーケットの集客にもリスクリバーサルの考え方は大いに参考になります。もし、売場に「美味しくなかったら、返金します」と書いたPOPを出したらどうでしょう。販売数は確実に伸び、集客にも絶大の効果があります。
これは非現実的な提案と受け取られそうです。実際、私がセミナーで「美味しくなかったら、返金します」というPOPをその場で書くよう伝えると、受講者の皆さんはあっけにとられたような顔をします。しかし、お客様が納得するものを売るというのは、商売の基本です。「満足頂けなければ返金する」というのも、当たり前と言うこともできるのです。
この提案が、実際のスーパーマーケットの売場とはかけ離れていると感じられるなら、次のように考えればいいでしょう。
商品のベネフィット(買うこと、使うことなどによってお客様が得る利益・満足感など)をPOPや試食販売などで訴えることは効果的です。しかし、それでもまだ購買を決定できないでいるお客に対し、「大丈夫ですよ」と背中を押してあげる、買っても損にはならないという保証を与え「買わない理由をなくす」ということ、それがリスクリバーサルです。
つまり、「お客様に喜んでもらえる商品を仕入れる」という基本的なことができているかどうかです。そこから生まれる信用や信頼は顧客を呼び込みますし、購買に対する不安やためらいを取り除きます。顧客の立場に立って、購買に対する不安やためらいを和らげ、取り除くことは、集客と売上向上の重要なポイントです。
ジョイント・ベンチャー
スーパーマーケットは地域の人々の食生活を支える場所です。わざわざ遠方から来店する人はいませんし、地域に根ざしていることが強みと言えます。この強みを活かす地産地消のジョイントベンチャーは、スーパーマーケットの集客・売上向上に非常に効果があります。
ジョイントベンチャーは、複数の企業それぞれが持つ「経営資産=強み」を利用し合うということですが、地産地消のジョイントベンチャーは、地域の生産者、日々多くのお客様が訪れるスーパーが、お互いの強みを出し合って手を組むということです。
例えば地場産の野菜は鮮度が高く、また消費者に人気があるという強みを持っています。そして、スーパーマーケットは来店客が多いという強みを持っています。その「強み」を活かし合うわけです。
農産物だけではなく、地域の豆腐屋やベーカリーといった専門店とのジョイントベンチャーも双方に良い成果を生みます。専門店としては売場を提供してもらうことで、売上を拡大できます。実際、長い間、販売が伸びずに苦労していた専門店が、スーパーマーケットで販売することによって一挙に売り上げを伸ばし、経営を安定させることができたという事例は少なくありません。
仕入れ形態は「消化仕入れ(売上仕入れ)方式」、つまり商品が売れた時点で仕入れと見なす取引形態です。店舗側には在庫リスクがなく、原則保管責任も負担しないことになっています。
そして、生産者・専門店独自の商品は競合店に対する差別化戦略の強化につながり、売上を拡大できます。また、陳列までやってくれる生産者・専門店などと手を組めばコスト面でも利があり、粗利益率は高くなくても、営業利益ベースでは大きな効果があります。さらに熱意のある生産者、専門店の売場づくりはお客様へのアピール度も高く、なにより生産者・専門店の方々は自店の贔屓客にもなってくれます。
ジョイントベンチャーによって信頼関係が構築できれば相乗効果を生み、地域とのつながりも深まり、全体としての集客数アップを図ることになります。
口コミと紹介
いま、スーパーマーケットと地域とのつながりについてお話ししましたが、地域とのつながりを考える上で欠かせないのが「口コミ」です。人は自分が経験して良かったこと、嬉しかったことは、他の誰かに話したくなるものです。それはスーパーマーケットでの体験も同じです。お店で体験した良かったこと、嬉しかったことを誰かに伝えたくなり口コミを生むのです。
ところで、誰かに話したくなる理由の一つに「話題性」があります。あまりにも面白いので誰かに話したくなる、嬉しい驚きなので誰かに話したくなるという意味の「話題性」です。この点をうまくついた例として、首都圏を中心に店舗を展開しているサミットストアのチラシがあります。
「創業祭特価」と銘打たれているもののチラシはまったくの白紙状態で「マル秘」になっていたり、「総菜選挙」と銘打ち、選挙ポスターのように各バイヤーが惣菜をアピールするなど、エンターテイメント性にあふれたチラシが話題になりました。
このチラシは、単に売上増を狙うのではなく、チラシを通して他店との違いを地域の顧客に認識してもらい、そのうえで店舗に足を運んでもらうという狙いがありました。地域のサミット各店を回る「スタンプラリー」なども企画していますが、ここでも店舗スタッフと顧客、そして顧客同士の会話が弾むこと意図しています。そして、言うまでもなく、「あの店は面白いことをする」という口コミが広がることにコストはかかりません。
また現在、多くのスーパーがアプリなどを活用し、自店の会員募集を行っています。そして、すでに会員になっている顧客が新たに会員を紹介した場合に特典を付与するなどの施策を行っています。これも効果的な集客方法です。
ただ戦術的には、紹介した人と、紹介された人双方に特典が付くという企画のほうが効果的でしょう。紹介者も気兼ねなく行動を起こしてくれる確率が高まります。紹介もまた多くのコストをかけずに客数を伸ばす方法です。
広告制作責任者は、集客数のアップが仕事
スーパーマーケットの経費を考えれば、一般的には、人件費、地代家賃などの次に多い経費が、販売促進費(広告宣伝費)になります。ところが、販売促進にお金をかけていながら、集客、売上に対する効果を測定していない企業が少なくありません。販売促進用の広告は、投資です。効果測定をしないということは、リターンを考えない投資と同じで、経費の無駄遣いになってしまいます。つまり、投資対効果を考えることが重要だということです。
効果を測定するためにはまず、データの収集が必要です。その上で、例えばイベントの企画内容、商品や価格、曜日、競合店の動き、天候など、条件の違いでどのように客数が変化したか、さまざまな観点から分析します。そして測定結果に基づいて、さらに来店客数を増やすためにはどうすればいいか、仮説を立てながら、次回に向けた改善を重ねていきます。
他業態の店舗も含めた競争店の増加、少子高齢化に伴う地域の潜在顧客数の減少などを考えれば、集客に対する努力を怠ることはできません。現在でも新聞折込みチラシの集客効果が高いのは事実ですが、新聞の購読率がここ数年で大きく低下しているのも事実です。チラシとスマホの連携、アプリの利用など広告方法を変えることや、広告媒体を増やすこと、そして、それらの投資対効果を考えることが重要です。それが、販売促進部や広告作成責任者の本来の仕事なのです。
ワンパターンの代わり映えのしないチラシを作ることや、同じ方法の繰り返しが仕事ではないのです。それは「作業」というものです。仕事とは、実際に成果が伴うものでなければなりません。日々の検証と修正を繰り返しながら、投資対効果(費用対効果)を高めていくプロセスを構築することが重要です。
厳しい競争の時代、一番怖いことは何もしないことです。現場を今一度確認して、「これまで通り」ではなく、いまやれることにチャレンジしてみて下さい。集客は、楽しい仕事です。
ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)と集客
先に「LTV(Life Time Value)=ライフタイムバリュー」という考え方についてお話ししました。顧客生涯価値と訳され、長い期間、継続的に顧客となってくれる人が企業にもたらす価値を表します。そして、LTV値の高い顧客はその企業の「根強いファン」ということもお伝えしました。
来店されたお客様をイメージしてみましょう。お客様のカゴの中身ではなく、来店しているAさん、Bさんというお客様一人ひとりです。このAさん、Bさんが「LTV値の高い顧客=お店のファン」になってくれれば、1カ月、1年あたりの来店回数が増え、それによって店の売上を向上させることができます。
さて、Aさん、Bさんにそうしたお客様になって頂くために必要なこと、さらに多くのお客様に「お店のファン」になって頂くために必要なものは何でしょう。最も大切なことは、商品の品質や鮮度、欠品がないこと、クリンリネスや衛生管理、接客・接遇、お店に来ることの楽しさや嬉しさを演出する陳列など、お店の基本が充実していることです。
「クリンリネスなんて、売上に関係しますか?」
「陳列演出で売上が上がりますか?」
というような質問を受けることがあります。これは、お客様の心理と店舗運営の基本を正しく理解していない証拠です。
お店の商品の良さ、清潔さ、素晴らしい陳列、気持ちの良い挨拶・接遇などがあってこそ、お客様一人ひとりにとってお店での「良い体験」が生まれ、それが再来店につながるのです。また、新しいお客様の獲得につながるのです。
そして、お店での良い体験の積み重ねが、あなたのお店に対する信用、信頼に発展しいきます。そして、そのことによって来店回数が増え、売上を作り上げることになるのです。
商品、クリンリネス、陳列、接客・接遇など基本的な事柄を充実させることは、新規顧客の獲得、リピーター(再来店顧客)の増加、売上向上すべてのベースになります。
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