任意後見契約の特色と、代理権の範囲 ☆vol.11⑨☆
こんにちは、司法書士佐井惠子です。
任意後見人として銀行取引をするために、本人や任意後見監督人と店頭に出向かなければならない。
そんな銀行の取扱いに、何のための任意後見契約なのか、理不尽に思うことばかりです。
同じなら、もっと、ご本人のためになることに時間を使いたいのに。
任意後見人は、ご本人と、予め、公証役場で任意後見契約を結んだ範囲内で仕事をすることができます。
その後、本人の判断能力が低下して必要となったときに、任意後見監督人の選任を裁判所に求め、
裁判所が選任したときから、任意後見人として契約内容の仕事ができるようになるわけです。
任意後見契約に、銀行取引は必ず入っている条項です。
その中には、口座を任意後見人が管理する口座とするための手続き、普通預金や定期預金をするもの、
場合によっては、定期預金や口座そのものを解約することを含まれています。
任意後見人の権限には、他に、何の制限もついていないのですが、
冒頭にお話ししたように、ある都市銀行では、
店頭に、本人・任意後見監督人・任意後見人の三者が勢ぞろいしないと、
何も始まらないという対応です。
ご本人には、ヘルパーさんにお願いしてタクシーに乗ってもらったり、あるいは車椅子を押して、
任意後見監督人には、一時間ばかり時間をいただかないといけません。
本来、任意後見監督人の職務内容としては、
1.任意後見人の事務を監督すること
2.任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告すること
3.急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において必要な処分をすること
4.任意後見人またはその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること
定期預金の解約についても、事前に書面で任意後見監督人の承認書が必要だなんて、
どこにも法定されていません。
何か所にも口座を持っている方であれば、その負担はその数だけ必要です。
任意後見契約は、代理権を自由に定めることができる。そこが良いところですが、
果たして、その通りに実現できるのかどうか。
折角の制度も、硬直した取扱いによって本人の意思が尊重されず、
任意後見人や監督人の負担を加重してしまっているのが残念です。
私の知る限りでは、ゆうちょ銀行は、任意後見人限りで手続きができています。
他の銀行の状況はいかがでしょうか。
笑顔の和が広がりますように
司法書士佐井惠子
http://sai-shihou.jp