50代からの暮らし安心塾 クレオ大阪南 第1回報告 ☆遺言・相続vol.9⑲☆
こんにちは、司法書士 佐井惠子です。
昔のドラマで、お父さんが放蕩息子に「勘当だ!」と、一喝している場面がありますね。
これに近いものが、民法の「排除」の制度です。
「排除だ!」では、言われた方も「えっ?!」びしっとは決まりませんね。
推定相続人が、被相続人に虐待をしてきたり、重大な侮辱を与えたり、
または推定相続人自身に、著しい非行があったとき、
本人に限り、排除の請求をすることができます。
具体的には、高齢者に対する身体的虐待、監護懈怠、性的虐待、
そして年金を取り上げるなどの経済的虐待も対象となりますし、
配偶者に対しては、ドメスティックバイオレンス 暴力行為も対象となります。
傍で歯がゆい思いでみている、ほかの推定相続人であっても、
本人に変わって、排除を言い出すことはできません。
排除はいつでも家庭裁判所に対して請求することができますし、また、その取り消しもできます。
また、遺言で排除の意思表示をすることもできます。
ただ、「勘当だ!」と、怒りに任せているだけでは今は通りません。
家庭裁判所が、後見的立場で、客観的基準で、排除の請求が正当であるかどうかを判断します。
遺言による場合も、心配無用。遺言執行者が裁判所に請求して行います。
今までに、仕事でも目にしたことがないので、どの位利用されているか、
法務省の統計で戸籍に排除の届け出をした件数を見てみました。
なんと、平成21年度は全国で47件。平成12年度に32件と、ほとんど利用されていません。
排除が認められると、相続権を失いますので、遺留分も認められません。
そういった意味では、遺言でほかの人に全て相続させるとしても、
遺留分までは剥奪できないのと、大きく違うところです。
「排除」の事件数が少ないことは、それ自体は、いいことかもしれませんが、
高齢者虐待やDVが問題となっている現代、本当にそんなに少なくていいいの?と、思ってしまいます。
司法書士佐井惠子
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