大人ピアノ指導法:大切な機会「体験会での進め方」No.2

光畑浩美

光畑浩美

テーマ:講師の養成/大人ピアノ指導法

コードネームの一本指伴奏を指導する際、私が大切にしていることがあります。
それは、受講生さんが“自分で弾ける”と感じられる言葉を選ぶことです。

たとえば、左手で「G」というコードネームが出てきたときのことです。

「ソ・ド・ドと弾いたあと、次のGは高いほうのソを弾くのですか。
それとも、低いほうのソを弾くのですか」
このような質問は、初期の段階で本当によく聞かれます。

慣れていない先生ほど、ついこう答えてしまいがちです。
「この曲でしたら、Gは高いほうがきれいですよ」

もちろん、これは事実として間違いではありません。
けれども、この伝え方には、実は一つ注意したい点があります。

らくらくピアノでは、伴奏をある程度パターン化しているため、受講生さんは「次の曲でも同じように弾いてみたい」と感じられることが多いのです。
ところが、「この曲では高いGがきれい」と教えられると、次の曲で自分なりに弾こうとしたときに、こんな不安が生まれます。

「自分で勝手に高いGを選んでいいのだろうか」
「本当は低いGを使うべきなのではないか」
「変な癖がついてしまったらどうしよう」

その結果、弾きたい気持ちがあっても、「今はやめておこう」という結論に至ってしまうのです。
これはとてももったいないことです。

そもそも、コードネームを書いている目的は、その曲を自由に、楽しく弾くこと
にあります。
高い音を選ぶか、低い音を選ぶかは、受講生さん自身のアレンジでよいのです。

では、「Gは高いほうと低いほう、どちらを弾けばよいですか」と聞かれたとき、どう答えたらよいのでしょうか。

「好きなほうでいいですよ」と答える先生もいらっしゃいます。
一見、自由を与えているようですが、実は受講生さんはここでも考え込んでしまいます。

「自分にとって“好き”なのはどちらだろう」
「高いほうかな、いや低いほうかな」
そうやって迷い始めると、かえって弾けなくなってしまうことがあるのです。

そんなとき、私はこうお伝えします。
「気分でお決めください」

この一言には、大きな力があります。
はっきりした根拠を求められない分、受講生さんは「そうか、気分でいいのだ」と、すっと肩の力を抜くことができます。
すると、次の曲でも「今日はこっちの音にしてみようかな」と、自然にバリエーションを楽しめるようになります。

言葉一つで、受講生さんの自由度は大きく変わります。
だからこそ、「気分で」という言葉は、とても大切なのです。

もう一つ、一本指バラバラ伴奏についても、同じことが言えます。

たとえば「ド、ソ」と弾くとき、受講生さんの反応は大きく二つに分かれます。
一つは、
「先生、これは人差し指一本で全部やったほうがいいんですか?」という方。

もう一つは、
「ド、ソと弾くなら、5の指と1の指を使ったほうが楽ですよね?」という方です。

この二つは、考え方が違うように見えて、実はどちらもその方にとっての“弾きやすさ”を表しています。

「一本指でやったほうがいいんですか?」と尋ねる方は、その方にとって一本指が自然で、楽だということです。

一方で、「5の指と1の指を使ったほうが楽ですよね?」とおっしゃる方は、
一本指で移動することにストレスを感じていて、通常の指使いのほうが弾きやすいということです。

ですから、どちらの問いに対しても、先生は「そうですね」と受け止めてよいのです。

講座において大切なのは、受講生さんの感覚を否定せず、まず肯定することです。
「そのやり方でいいのですよ」と認めてもらえることで、受講生さんは安心し、自分の感覚を信じて弾けるようになります。

指導とは、正解を一つに絞ることではなく、その方が無理なく、楽しく、続けられる道を一緒に見つけることだと私は思っています。

「気分でいいですよ」
「そうですね」

こうした何気ない一言が、受講生さんの心を軽くし、「弾いてみよう」という気持ちを支えていきます。

らくらくピアノの目的は、上手に正しく弾くことだけではありません。
自由に、楽しく、その人らしくピアノに向かっていただくこと。
その原点を、私たちはいつも大切にしていきたいと思います。

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光畑浩美
専門家

光畑浩美(大人ピアノ指導の専門家)

一般社団法人全日本らくらくピアノ®協会  株式会社PREMUSE

大人のピアノ初心者向け。特許庁登録「らくらくピアノ®︎」で憧れの曲を楽しく実現。オンライン講座や認定講師養成講座を展開。著書累計17万部超、Amazonや全国書店で販売中。

光畑浩美プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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