大人ピアノ指導法:「見えないものを売る」ビジネスとは

光畑浩美

光畑浩美

テーマ:講師の養成/大人ピアノ指導法

物を売るビジネス」と「目に見えない価値を届けるビジネス」

〜ピアノ指導という仕事の本質を考える〜

ピアノ指導という仕事は、単に「レッスンを提供する」というだけではありません。
それがどのような価値を持ち、どのような形で提供していくべきものなのかを、まず明確に理解しておくことが大切です。

そのために今回は、
**「物を売るビジネス」と「目に見えないものを売るビジネス」**の違いについて考えてみたいと思います。

物を売るビジネスの特徴

まず、物を売るビジネスは、結果がとても分かりやすいものです。
たとえば飲食店を思い浮かべてみてください。

飲食店では、商品が目に見えます。
何を買うのか、何を食べるのかが明確で、お客様はその価値をすぐに実感できます。
店主の人格そのものが問われないわけではありませんが、まず判断されるのは「商品そのもの」です。

価格も比較的分かりやすく、食べてみればすぐに満足感を得られる。
つまり、お客様にとっては、お金を支払えばその場で喜びを得られる仕組み
になっているのです。

目に見えないものを売るビジネスの特徴

一方で、私たちが行っている講座や個人レッスンのような仕事は、目に見えない価値を提供するビジネスです。

この場合、商品そのものが目に見えるわけではありません。
さらに、提供する先生自身の人格や人柄、信頼感も大きく求められます。

また、レッスン費用は飲食などと比べると高額になりやすく、成果を実感するまでにも時間がかかります。
そして何より、お客様にも努力が必要です。
レッスンを受けるだけではなく、練習し、継続して初めて成果につながっていきます。

つまり、目に見えない価値を届ける仕事には、

・商品が目に見えない
・提供者の人格が求められる
・価格が比較的高い
・成果の実感に時間がかかる
・お客様自身の努力が必要
 という特徴があるのです。

顕在市場と潜在市場

ここで、さらに大切な考え方として、
**「顕在市場」と「潜在市場」**があります。

顕在市場とは

物を売るビジネスの多くは、顕在市場です。

たとえば近所にラーメン店ができたとします。
「どんなお店だろう、行ってみよう」と思う方は多いでしょう。
喫茶店でも同じです。新しくオープンしたと聞けば、雰囲気を見に行きたくなるものです。

たとえばユニクロのようなチェーン店もそうです。
「近くにできたから行ってみよう」となります。
今すぐTシャツが必要でなくても、きっかけがあれば足を運び、購入につながることがあります。

これが顕在市場の特徴です。
つまり、そこにできた、見えた、知った、だから行ってみる
という流れが生まれやすいのです。

そのため、顕在市場ではオープン直後に売上が一気に立ちやすい傾向があります。
その後、そのお店が人気店になるかどうかは、お店の実力次第ということになります。

私たちの仕事は「潜在市場」にある

では、目に見えない価値を売るビジネスはどうでしょうか。
これは潜在市場にあたります。

音楽教室も、まさにこの潜在市場です。

たとえば病院は建物としては目に見えます。
けれど、そこで提供される価値は目に見えないものです。
ですから、人は必要なときにしか行きません。

近くに病院が開業したからといって、
「ちょっと行ってみよう」とはなりませんよね。
必要があるときに初めて足を運ぶ場所です。

結婚式場も同じです。
近くに素敵な建物ができても、用事がなければなかなか足は向きません。

そしてピアノ教室も、これと同じ構造なのです。
「あそこにある」「あそこで講座が開かれている」と知っていても、
自分に必要性を感じない間は、人は動きません。

ここをしっかり理解しておくことが、とても重要です。

潜在市場では「すぐに人が集まらない」のが普通

潜在市場では、ラーメン店や喫茶店のように、
オープンした瞬間に人がどっと集まるということは起こりにくいものです。

たとえば体験会を開く場合もそうです。
カルチャーセンター、市民講座、サークル、楽器店など、どの形であっても、体験会を開催するまでにはたくさんの準備と努力があります。

けれど、いざ当日を迎えてみると、
「思ったより人数が少ない」と感じることもあるかもしれません。
十分に周知されていなかったり、まだ必要性を感じている方に届いていなかったりするからです。

ですが、ここで落ち込む必要はありません。
なぜなら、潜在市場とは、もともと一気に反応が出る市場ではないからです。

この性質を知らずにいると、
「自分のやり方が悪いのではないか」
「この活動は向いていないのではないか」
と必要以上に不安になってしまいます。

しかし、そうではありません。
潜在市場では、必要な人に届くまで、時間をか必けて育てていくことが前提なのです。

教室運営は「畑を育てる」こと

ここでぜひ覚えていただきたいのが、「畑」という考え方です。

一年を通して、Aタイプの方は畑を一つしか持っていない。
一方、Bタイプの方は畑を五つ持っている。
そうすると、当然ながら一年を通じた収穫量はBタイプの方が多くなります。

これは教室運営にもそのまま当てはまります。

たとえば、子どもの生徒さんを中心に教えておられる先生は、
「午後は子どもたちのレッスンが入るけれど、午前中は空いている。そこに中高年の方が来てくだされば理想的だ」と考えられることがあるでしょう。

もちろん、その考え方自体は間違いではありません。
ですが、潜在市場という性質を考えると、
一つの場所、一つの機会だけで大きな成果を期待するのは難しいのです。

教室運営は、まさに畑を耕し、育て、収穫していくようなものです。
時間をかけて育てる必要があるからこそ、拠点をいくつも持つこと、つまり畑を増やしていくことが大切になります。

この視点を持つことで、単発の結果に一喜一憂せず、
より長い目で活動を育てていくことができるようになります。

潜在市場のビジネスに必要なこと

顕在市場では、仕入れがあり、商品づくりがあり、在庫があり、発送があり、そうした流れの中でビジネスが成り立っています。

では、私たちのような潜在市場のビジネスは、何によって成り立つのでしょうか。

そこには、欠かせない要素があります。
その一つが、知識です。

今、皆さまに学んでいただいている内容も、まさにその知識にあたります。
目に見えない価値を届ける仕事だからこそ、正しい理解と知識を持って取り組むことが、事業継続の土台になっていくのです。

必要な方に必要なタイミングで届くまで、継続して活動を続けていくこと。
そして、一つの結果だけで判断せず、畑を育てるように拠点を増やしながら、丁寧に価値を届け続けていくこと。

それが、私たちのような目に見えない価値を提供する仕事
において、とても大切な視点なのです。

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光畑浩美
専門家

光畑浩美(大人ピアノ指導の専門家)

一般社団法人全日本らくらくピアノ®協会  株式会社PREMUSE

大人のピアノ初心者向け。特許庁登録「らくらくピアノ®︎」で憧れの曲を楽しく実現。オンライン講座や認定講師養成講座を展開。著書累計17万部超、Amazonや全国書店で販売中。

光畑浩美プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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