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大人ピアノ指導法:中高年が求める「総合・音楽教室」

光畑浩美

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テーマ:講師の養成/大人ピアノ指導法

中高年指導で「総合教室」としてご案内すると、なぜ喜ばれるのでしょうか

中高年指導において、ピアノだけでなく、歌やソルフェージュ、イベントなども含めた「総合教室」としてご案内すると、とても喜ばれる傾向があります。
これはとても大切なことですので、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。

その理由は、大きく三つあります。

一つ目は、お得感があることです。
ピアノだけではなく、歌やソルフェージュ、イベントなど、さまざまな内容に触れられることで、「こんなにいろいろ学べるのですね」という満足感につながります。中高年の方にとって、一つの教室の中で幅広い体験ができることは、大きな魅力となります。

二つ目は、知識欲を満たすことができることです。
ソルフェージュを学ぶこと、お歌を楽しむこと、曲の背景や成り立ちを知ること。こうしたことによって、音楽をより深く味わうことができます。大人にとって「知る喜び」は非常に大きく、ただ弾けるようになるだけでなく、理解しながら学べることが大きな満足感につながるのです。

そして三つ目は、指の上達だけを求める場ではないと伝えられることです。
中高年の方は、いつでも十分に練習できるわけではありません。ご家族のお世話があったり、ご自身の体調がすぐれない時があったり、日々さまざまな事情があります。ですから、いつもいつも指が速く動き、次々に新しい曲へ進めるとは限らないのです。

そのような中で、「今日はあまり弾けなくても、この講座には来ていいのですよ」「上手に弾けなくても、ここには居場所がありますよ」と伝わることは、とても大切です。
それが、安心して長く通い続けられる教室につながります。

だからこそ、中高年指導では、ただ次から次へと曲を進めるだけではなく、脳の活性化につながるソルフェージュを取り入れたり、お歌を楽しんだり、曲の背景をお伝えしたり、ハノンを取り入れたりと、さまざまな要素を組み合わせていくことが大切なのです。

中高年女性の特質から学べること

ここで、もう一つ大切な視点があります。
それは、中高年女性の特質を理解することです。

たとえば、ランチを選ぶ場面を思い浮かべてみてください。
一つは、山盛りのどんぶり。
もう一つは、小鉢がいくつも並び、いろいろなお味を少しずつ楽しめるお膳です。

「どちらがよいですか」と聞かれたとき、多くの女性は、小鉢が並んだランチに魅力を感じられるのではないでしょうか。
一方で、多くの男性は「やはりどんぶりかな」とおっしゃることが多いように思います。

もちろん個人差はありますが、ここにはひとつの傾向があります。

子ども、とくに成長期には、量や勢いのある学びが求められることがあります。レッスンでも、ピアノをしっかりと集中して学び、「できました」と達成していくような形が喜ばれ、成果にもつながりやすいのです。中高年男性にも、比較的そのタイプの方が多く見られます。

いわば、**「どんぶり型」**です。

レッスンでも、始まる前にあれこれ話をするより、「今日はここを見てください」とすぐに本題に入り、要点を絞って進めるほうが心地よい、という方がいらっしゃいます。
「ここを一、二、三点直してきてくださいね」
「はい、わかりました」
そうして、すっと帰られる。そんな流れが合う方も少なくありません。

一方で、女性には、先ほどの小鉢料理のように、いろいろな種類があること
に魅力を感じられる傾向があります。

ただし、ここで大切なのは、単に種類が多いということだけではありません。
中高年女性には、選ぶ過程そのものを楽しむという大きな特質があるのです。

「選ぶ過程」が生み出すわくわく感

たとえば、小鉢料理のあとに、五種類のハーブティーとコーヒーが用意されていたとします。
「どちらになさいますか」と聞かれたとき、全部を飲むわけではありません。けれども、「どれにしようかしら」と考えるその時間に、わくわくした気持ちが生まれます。

女性は、この“選ぶ楽しさ”をとても大切にされる傾向があります。

男性であれば、「ではコーヒーで」とすっと決められることが多いかもしれません。
けれども女性は、「どれにしよう」「これも素敵、あれもいいわね」と考えるその時間そのものを楽しんでおられるのです。

百貨店でも同じことが言えます。
たとえばバッグを買いに行くとき、男性は目的の売り場へまっすぐ向かい、吟味して購入し、その後は次の目的地へ移ることが多いものです。
一方で女性は、「せっかくここまで来たのだから」と、いろいろな階を見て回ることがあります。もちろん全部を買うわけではありません。けれども、見て回るその過程そのものに楽しさがあるのです。

これは、レッスンにもそのまま通じます。

中高年女性にとっては、ピアノだけを一直線に進めるよりも、歌もある、ソルフェージュもある、曲の背景のお話もある、基礎練習もある――そうしたさまざまな内容が用意されていること
、そしてその中を味わいながら進んでいくこと自体が、大きな魅力になるのです。

つまり、レッスンにおいても、「いろいろあること」そのものが喜ばれるのです。

総合教室という形が中高年女性に喜ばれる理由

このように考えますと、中高年女性にとって魅力的な教室とは、ただ効率よく上達する場ではありません。
さまざまな楽しみがあり、心が動き、選ぶ喜びがあり、その過程も味わえる場であることが大切なのです。

だからこそ、ピアノ、歌、ソルフェージュ、曲の背景、イベントなどを含んだ「総合教室」としてご案内することは、とても喜ばれます。

中高年指導では、
「何を教えるか」だけでなく、
「どのように楽しんでいただくか」
「どのような体験として受け取っていただくか」
が非常に大切です。

そして、その視点こそが、安心して長く続けていただける教室づくりにつながっていくのです。

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光畑浩美
専門家

光畑浩美(音楽教育家)

一般社団法人全日本らくらくピアノ®協会  株式会社PREMUSE

大人のピアノ初心者も、名曲がたった7分で弾けるという独自メソッド「らくらくピアノⓇ」を考案。各地での講座、オンライン講座、講師養成、動画グレード認定、楽譜出版など、国内外問わず活動を展開している。

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