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スタートアップ企業と知的財産(6)

下田茂

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テーマ:知的財産

 今回は、スタートアップ企業と「無形資産(知的資産)」について触れたいと思います。
 「知的財産」と言った場合、「特許権」や「商標権」等の権利を思い浮かべてしまうため、どうしても難しく考えてしまいます。
 一方、「無形資産」は、目に見えない様々な資源、具体的には、企業の場合、組織力,人材,技術,経営理念,顧客等とのネットワークなど、財務諸表には表れてこない目に見えない経営資源の総称になります。
 このように、「特許権」や「商標権」等の「知的財産(知的財産権)」は、「無形資産」の中の一部の資産になります。
 スタートアップ企業の場合、経営資源の観点からは、いわば“0”からのスタートになるため、最初から、「特許権」や「商標権」等を意識した場合、難しい問題に対して直接向き合うことになり、躊躇してスムーズに前へ進めることができません。
 まず、自分達で、主観的でも構わないため、思いつく「経営資源」の全てを洗い出し、その後、できれば知財専門家を交えて、個々の経営資源を一つ一つチェックし、「どのように保護すべきか」或いは「改善すべきか」などの作業を進めて行くことが必要になると思います。
 この際、自分達の認識と知財専門家の認識は、大きく異なることが多々あります。例えば、一つの発明や考案に対して、先行技術を十分に把握していないため、自分達は新しい技術を完成させたと判断しても、既に古くから存在しているものもあったり、反対に、このような単純な構造は、どこに発明性や考案性があるのかと判断してしまいます。
 しかし、単純な構造ゆえに、材料削減や製造工数の削減などに繋がり、権利(特許権等)が成立した場合、その価値の大きさ、即ち、権利の強さに繋がることもあります。
 「特許権」や「商標権」等は、最初からその価値を自分達で判断することは、想定している以上に「リスク」が伴います。
 特に、発明や考案に関しては、発明者(考案者)が自分の成果をより大きく捕らえがちになるとともに、技術的レベルの高低からその価値を判断しがちです。
 しかし、「特許権」や「商標権」等の「知的財産」は、戦略的観点からの判断が重要になります。このことは、私自身が発明者や考案者から技術内容をヒアリングする際に一番感じることです。
 このように、スタートアップ企業にとって、最初から「知的財産」を意識し、拾い上げることはリスクを伴う難しい側面があります。このため、初期の段階では、上に挙げた、組織力,人材,技術,経営理念,顧客等とのネットワークなどの「無形資産」、即ち、目に見えない様々な経営資源を洗い出すとともに、その中から、戦略的な観点、特に、経営戦略的な観点から「知的財産」を組み立てることがスタートアップ企業にとっての重要な課題になります。

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専門家

下田茂(弁理士)

みらい国際特許事務所 長野オフィス

個人から企業及び大学発明まで幅広く対応し、高い特許登録率を維持しています。持前の知財センスに基づき、特許権や商標権の取得はもちろんのこと、依頼者に満足して頂けることを第一に、広く深くアドバイスします。

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