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下田茂

アイデア等を特許・商標等の権利にするプロ

下田茂(しもだしげる) / 弁理士

みらい国際特許事務所 長野オフィス

コラム

時代の転換期と知的財産…〈5〉

2022年10月29日

テーマ:知的財産

コラムカテゴリ:法律関連

「知的財産」には、特許権や商標権,著作権などのように、「知的財産権」として成立させることができるものもあれば、企業の営業秘密やノウハウなどのように権利として成立させることが難しいものもあります。
 このため、権利として成立させることができないもの、つまり、漏れてしまうものをカバー(保護)する法律として「不正競争防止法」があります。
 したがって、通常、「知的財産権」+「不正競争防止法」等=「知的財産」の関係になります(下図)。最近、かっぱ寿司の社長が、はま寿司の情報を不正取得した容疑で逮捕される事件がありました。
 このケースは、「不正競争防止法」違反の典型になります。技術的な問題ではありませんが、顧客情報や仕入先情報等の営業上の秘密情報を不正に取得したことになります。
 顧客情報や仕入先情報は、本来ならば、その会社が自分たちのアイデンティティに応じて開拓し、確立する必要があり、他社の情報を真似ても巧くいきません。そのような発想を持つこと自体、そもそも経営者として失格です。
 この問題は、時代の大転換と相俟って、今後、多かれ少なかれ増えていくことが予想されます。
 例えば、働き方において、終身雇用制度に代わって成果主義制度が浸透する傾向があります。この場合、人材の流動化も活発になり、特に、技術者は、自発的或いはヘッドハンティング等により企業間を移ることが考えられますし、このようなケースは現在でも少なくありません。
 人材(技術者)が、他の企業に移る場合、その人が持っている技術や知識などは、そのまま次の企業に持ち込まれることになります。
 極端な例では、画期的な技術を開発した企業の技術者が途中で退職し、ライバル企業に高額な給料で再就職し、そちらで製品を完成させてしまうことも考えられます。
 このような露骨なケースは稀とは思いますが、このような事態が生じた場合、どこまでが以前の企業の秘密情報なのか、或いは自分の能力に基づくものか線引きが難しい面があります。仮に、争った場合、証拠集めに大変な労力や時間及びお金がかかることになります。
 したがって、このような事態を避けるためにも、企業は、自社の技術に関し、「特許権」,「実用新案権」及び「意匠権(デザイン権)」等の「知的財産権」として権利化、つまり、財産化しておくことが必要です。
 この対策を講じておけば、万が一、社員が辞めても必要な技術情報を社内に残すことができます。
 この対策は、必要に応じて直ぐ対処できるものではなく、常日頃の経営方針として確立させておくことが重要になります。時代の大転換が進行する現在、企業(経営者)は、より知的財産に対する姿勢が求められることになります。

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