サービス業と知的財産(1)
時代の進歩に伴い、色々な分野でAI技術が浸透しており、「知的財産」の分野も例外ではありません。
AI技術の基本にはビッグデータが必要です。膨大なデータから一定の傾向を見出し、その傾向に基づいて必要な処理を判断して行きます。
知的財産、特に「特許」は、様々な分野の企業から新技術が出願されます。したがって、特許庁には、膨大な技術のビッグデータが存在することになり、このようなビッグデータは、日本の特許庁のみならず全世界の特許庁に存在します。そして、このビッグデータは誰でもインターネットを通して閲覧することができます。
我々の業務の一つに「特許調査」があります。例えば、特許出願する場合、出願する技術と同じ内容の技術が既に他人から出願されていないか事前に確認します。また、企業等が新しい商品を企画し、開発を進める場合、他人の特許権に抵触して特許侵害等のトラブルに巻き込まれる虞れがないか事前に確認します。さらに、他のライバル企業がどのような傾向の製品化を目指しているか、各種の「パテントマップ」を作成して分析するなど、「特許調査」は我々の必須業務になります。
これらの「特許調査」の場合、今までは、「知的財産」に関連する狭い範囲の業務、言い替えれば、「消極的」業務、或いは「守り」の業務として行われてきました。
しかし、「特許」は、新しい技術に関する膨大なビッグデータの宝庫であり、現在は、「知的財産」業務のみならず、企業経営に広く応用する動き、即ち、新しい形の「知財経営」として、「積極的」、或いは「攻め」の活用ツールとして注目されています。
この新しい形の「知財経営」は、そのベースになるのが特許情報であり、AIを活用して「パテントマップ」を越える様々な活用が可能になります。
一例としては、日本の特許庁が提唱する「IPランドスケープ」やWIPOが提唱する「WIPO Green」などです。「IPランドスケープ」は字の通り、IP(知的財産)のランドスケープ(見渡せる全体景色)であり、「WIPO Green」は、SDGsに関係する、WIPO(世界知的所有権機関)による環境技術の推進です。
「IPランドスケープ」や「WIPO Green」などの細かな説明は、別の機会に譲りますが、企業の場合、従来のような、単に利益を追求する無機的経営では生き残れません。
インターネットやAI技術等が進歩した現在、これらの進歩に対応して、企業も社会環境や自然環境などに正しくかかわることが避けて通れない時代になっており、この動きをサポートするのが「知的財産」を積極的かつ攻めのツールとして活用する「知財経営」となります。