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下田茂

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下田茂(しもだしげる) / 弁理士

みらい国際特許事務所 長野オフィス

コラム

時代の転換期と知的財産…〈2〉

2022年6月25日

テーマ:知的財産

コラムカテゴリ:法律関連

 時代が大きく転換するときは、「知的財産」の内容も当然のことながら時代に対応して変遷します。
 前回のコラムでも一言書きましたが、「知的財産」と「ビジネス」は自動車の両輪であり、両輪がマッチングし、バランスがとれていないと自動車は脱輪してしまいます。
 言い方を変えれば、「知的財産」も「ビジネス」も、それ単独では当然相乗的な効果は生まれません。
 「知的財産」の場合、他人にライセンスを付与して収益を得るなどの戦略は図れますが、例えば、「特許証」を額に入れて飾っていても名誉的に満たされるとしてもお金は生まれません。
 一方、「ビジネス」の場合もそれ自体は一般的な商売の原則に左右されますので、それ以上のものは生まれません。したがって、商売(営業)のセンスがなければ必ずしも旨くいくとは限りません。
 しかし、「ビジネス」と「知的財産」を組合わせることにより、「ビジネス」の効果を何倍にもすることがでできます。
 「商標」が分かりやすい例になります。以前も取り上げましたが、伊藤園の「お~いお茶」は、商品名を普通名称の「煎茶」で販売した当時は、年間売上6億円でしたが、「お~いお茶」のネーミングにしてから、年間売上40億円に増えたとのことです。単純に、40億円-6億円=34億円の差額が「お~いお茶」のネーミング(商標)の価値になります。ちなみに、伊藤園では、「お~いお茶」に関する登録商標を20件近く所有しています。
 話は戻りますが、「知的財産」の価値は、時代と共に変遷します。「お茶」の場合、上に挙げた伊藤園の「煎茶」が商品化されたのが1985年です。
 この頃は、袋入りのお茶っ葉を買ってきて急須で湯飲み茶碗に注いで飲むことが一般的であったと思います。それを缶入りのお茶にしたこと自体が画期的な技術改良であり、このハード的な改良技術が「知的財産」としての重要な価値を持ちます。
 これに対して、現在は、お茶入りのペットボトルは広く普及した技術であり、誰も関心を持ちません。購買のきっかけになるポイントは、お茶の種類をはじめ、「お~いお茶」のようなユニークなネーミングが重要な要素になります。
 つまり、時代の変遷により、「知的財産」の価値は、ハード的な側面から次第にソフト的な側面に移行しています。これは「知的財産」だけの話ではなく、世の中におけるビジネス面も含めて大概の事象に当てはまると思います。
 「知的財産」は、研究所などで生まれる高度の先端技術も重要になりますが、誰でも発案できる身近な工夫や改良の方が、むしろ「ビジネス」的には有効に活用できます。
 スタートアップを目指している方は、このような視点から新しい時代に向けた「知的財産」を創出し、「ビジネス」に活用してほしいと思います。

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