知的財産に関する最近の動き
サービス業におけるお店や施設等の名称は、そのイメージ、更には、お客さんに対する吸引力に影響する重要な商標となります。
サービス業は、サービスを業務とするため、製品の製造を業務とする製造業とは異なり、自社の製品はほとんど存在しません。他社の商品を販売することが業務となります。
製造業の場合には、いろいろな商品が存在するため、例えば、ユニークなネーミングを商品に付け、それがヒット商品につながれば、会社の業績に大きく貢献します。例えば、伊藤園がお茶のネーミングを「煎茶」から「お~いお茶」(下図)に変更したら、次の年に売上が6倍ほど伸びたエピソードは有名です。
このような商品のネーミングや図形等は、商標(トレードマーク)として登録すれば、商標権として保護されるため、他人が同一(類似)の商標を使用することを排除できますし、商品のイメージアップ、更に、会社の信用力向上にも貢献します。
したがって、反対に、他人の商標権を侵害した場合、自己の商品では使用できなくなります。しかし、この場合、使用できなくなるのは一つの商品に留まり、他の商品に影響を与えることはほとんどありません。
一方、サービス業の場合、商品はほとんど存在しないため、商標権についての認識はあまり持っていないかもしれませんが、お店や施設等の名称も、商標(サービスマーク)として登録することができます。サービス業で使用するサービスマークも、商品に使用するトレードマークと同じ商標になります。そして、サービス業にとって、商標権は、むしろ製造業における商品の場合よりも重要になると思います。
つまり、お店や施設等の名称は、そのお店や施設等にとって唯一の名称となり、業務を継続する以上、その名称は付いてまわります。
以前、上海で、日本の温泉宿泊施設と同じ名称の「大江戸温泉物語」がオープンするということで話題になりました。
仮に、この「大江戸温泉物語」の第三者の使用が商標権の侵害であった場合、その施設全体が影響を受けることになります。また、規模が大きくなった場合、商品の場合よりも更に深刻になります。ちなみに、本家本元の「大江戸温泉物語」は、少なくとも日本においては商標登録されています(下図)。
今の時代、インターネットが世界的規模で普及しているため、ほとんどのビジネスがインターネットと結び付いています。“地方の一店舗”で営業しているから大丈夫だろう、という考えは通用しません。
したがって、お店や施設等の名称も、いわば保険をかける意味からも商標権として確立し、現在及び未来に対するリスクに備えることが重要になってきます。