農業と知的財産(3)
時代と知的財産
「知的財産」の相対的価値は時代と共に変化します。したがって、我々も時代と共に「知的財産」に対する価値観を変える必要があります。
例えば、カメラ(写真機)が無い時代では、写真機の原理を思いついただけでも基本技術に関する、いわば「大発明」になるでしょう。
一方、カメラも時代の進展とともに改良されていきます。最初は、少しでも奇麗に写るように、フィルム材料の変更やシャッタ機構の改善などが行われるかもしれません。これらの改善は大発明とはいえませんが、「中発明」に位置付けられます。
そして、小型化や軽量化、さらには、低価格化などの改良が行われるでしょう。これらの技術は、高度成長期に日本の御家芸といわれてきました。もちろん、今でもこの点は衰えていません。これらは「中発明~小発明」といえます。
この後、カメラは商品として成熟し、どのメーカーのカメラでも奇麗に写せるという点では90点以上をクリアするとともに、携帯しやすさ、操作しやすさ、さらにはファッション性としての位置付けなど、僅かな改良をはじめ、デザイン要素やネーミング要素までも、その商品の価値を決定する重要な要素になってきます。これらは、「微発明」といってもよいかもしれません。
今の時代、まさに成熟期に入っている商品が沢山あります。中小企業にとって、「大発明」の創出は容易でないかもしれません。しかし、視点を変えれば、「微発明」などは有力かつ得意にできるビジネス対象になります。「微発明」が商品の価値を握っている大きな要素であるとすれば、今まで以上に中小企業や起業者の出番があるといえます。加えて、今は、インターネット環境が進歩し、多様な販売戦略を立てることもできます。ビジネスを成功させるには、常に時代に対応する柔軟な思考こそがその鍵になると思っています。