弁理士の立場から五輪エンブレム問題を考える
8月21日付のWebニュース(日刊スポーツ)に、元モーニング娘の加護亜依の活動再開について、前所属事務所が「加護亜依」の名前を既に商標登録しているため、「今後、加護を起用したテレビ局などに対して、道義的責任を追及したいので、芸名の使用料を請求する。」との記事が掲載されていました。以前、「加勢大周」の名前でも同じようなことがありました。
ところで、一般の人の中には、このような、「人の名前」まで商標登録(商標権)されるのか?と思われる人もいるのではないでしょうか。法律上は、「ありふれた氏又は名称」でなければ、商標登録が認められる可能性があります。また、人の名前といっても「加護亜依」のような漢字四文字は、著名でなければ造語(創作熟語)と見ることもでき、必ずしも名前と言えるかどうか判断できないケースもあります。
したがって、もし自分の名前が他人に商標登録されたら自分の名前を使用できなくなるのか或いは使用する際には登録した他人に使用料を支払わなければいけないのかという「?」も生じます。しかし、その心配はいりません。自分の名前が仮に他人の登録されても自分の名前を普通に使うことはできます。商標法では、このようなケースをはじめ、普通名称や産地等を普通に使用する場合にまで商標権の効力を及ぼすことは妥当性を欠くものとして「商標権の効力が及ばない範囲」を規定しています。
現在、生産者の個々の名前を付した農産物が安心できる農産物として道の駅などを中心に人気があります。今後、農家の人が自分の名前(ニックネームを含む)を「ブランド」化し、商標登録しようとする人が増えてくるかもしれません。