「新幹線の車中にて」 (上り編)

長野淳子

長野淳子

テーマ:暮らしの中で

私は、月に何度か上京するため、新幹線を利用します。
乗るたびに毎回ドキドキしながら席に着き 「今日は当たり」 「今日ははずれ」 とつぶやきます。

先日は、行きも帰りも 「はずれ」 でした。

行きは、50代後半と思しき女性4人のグループと、通路を挟んで隣になりました。
学生時代の同級会にでもお出掛けなのでしょう。皆さんおめかしをしています。

私が仙台から乗り込んだ時、席はすでに向い合せになっていて、3人が座っていました。
仙台から後の一人が乗り込んだようで 「○○さん!! ここ!! ここ!!」 と声を掛けます。

今日ははずれ!! 私は覚悟を決めました。

予想通り、そこから上野まで、
孫自慢・嫁不満・ご主人の話・体調の話・親の介護の話などが延々と続きました。

久しぶりの再会なのでしょう。話は途切れることなく次から次へと続きます。
それにしても面白いのは、誰一人として他の人の話を聞いているようで、聞いていないこと。
人の話を遮るように 「そういえばこの間ね・・・」 で始まる話は、前の人とは全然違う話。

楽しくて仕方がないのでしょう。とにかく声が大きいのです。
彼女たちが上野で降りる頃には、私はほぼ全員の家族構成がわかってしまいました。

そんな彼女たちが、一瞬静かになった時がありました。
それは、亡くなった友人の話をした時でした。
中の一人が言いました。
「私たちは幸せよね。こうして元気に出かけてこれるんだもの」
「そうだね」 全員がそう言って頷きました。

上野で4人が降りた後、車内はし~んとなりました。
後ろの席から 「やっと静かになったね」 という声が聞こえました。

彼女たちも、一人の時はきっと静かなのでしょう。
私も地声が大きくて、内緒話が出来ない性質なので
「人の振り見て我が振り直せ」 そう思った出来事でもありました。



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