「ねんきん定期便」を見てみよう!【9】保険料は2017年まで上がり続ける!
見出しだけで的外れも甚だしい
先に書いておきます。政治のことはよくわかりません。
でも、社会保障・社会保険や金融のことはそれなりに詳しいつもりです。
2019年6月以降に話題となった「年金と老後2000万円の問題」は個人的に嫌悪感が強いです。
何も「問題」を感じない内容ですので私は常に「2000万円の話題」と言い換えています。
事の発端は金融庁の発表した金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書(2019年6月3日)です。全文は金融庁のサイトで読めます。
とてもまっとうなことがまとめられていますので専門家でなくとも読んでもらう価値はある内容です。
ただ、新聞・雑誌・テレビから発信されている情報でこの全文をきちんと読み込んでいるものは皆無と言い切れるほど当初は本当にひどいものでした。その後まっとうなものも出始めましたが、もちろん未だにひどいままのものもあります。どれだけ配慮したとしても情けないとしか言えない報道の数々です。
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見出しで使われている「2000万円」の根拠
夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均(※)です。
※ 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」2017年
・収入 約20.9万円
うち公的年金19.2万円
・支出 約26.4万円
うち食費6.4万円、住居1.4万円、娯楽2.5万円、
その他の消費支出(こづかい・交際費)5.4万円など
この差額5.5万円を65歳から95歳まで30年積み上げると1980万円≒2000万円ということなんです。
毎月の差額5.5万円は年齢が上がるにつれて平均的に小さくなっていくデータもあるので、単純に月5.5万円を掛け算する意味なんてありません。
多くの母数の平均ですから、例えば住居費は持ち家・賃貸・一戸建て・マンションによって月1.4万円で問題ないのかどうかなんてわからないです。また、娯楽(旅行など)・こづかい・交際費などで約8万円です。
こういった支出まですべて公的年金保険の老齢給付(公的な保障)でまかなう仕組みでなければいけないのでしょうか。
平均として最低限生活するための金額は公的年金保険で受け取れます。
人生を豊かにするためのプラスアルファの金額は自分で準備しておいてくださいね。
貯蓄が準備できていなければ長く働くのも選択になってくるでしょう。
でも、すべてはあくまで平均なので、自分自身と家族の数字は公的年金保険の受給額をはじめ、支出の項目や金額もきちんと確認して見通しを立てましょうね。
こんな報告書なんです。普通ですよね?
この内容を知ってもなお、公的年金保険制度がおかしいと感じる人はかなりの少数派か、よほど何にでも難癖をつけたい人のどちらかかなと思いますが、いかがでしょうか。
ちなみにこの統計データに近しい調査年における高齢世帯の平均貯蓄額は約2250万円です。ここでいう2000万円をカバーできているんです。これだけ準備することができているなら取り崩して楽しいことに使っていくのに違和感はありません。
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将来この世代に到達する若者はここまでの貯蓄は難しいのかもしれません。遠い将来に向けて必要最低限の資産形成を進めていきましょう、という報告書なのだと私は読み取っています。
(実際には高齢世代の資産を相続によって引き継げるケースもあるわけですから、今の若い世代は必死に資産形成に励まないといけないということも言い切れません)
これまで相談をお受けしてきたなかで、老後の不安をあおられ少なくとも5000万円、いや年金なんてあてにならないから1億円は貯めましょうと金融関連の営業担当さんから提案を受けたり無料セミナーで聞かされたりしている方々を何度も目にしています。
ここから考えれば「あっ、2000万円で足りるの?(安心)」といえることなのかもしれません。
この視点でいえば金融商品・不動産投資の営業により販売される金額が減って、より消費(需要)が増え景気が良くなるかもしれません。景気が良くなれば収入も増えるでしょう。詐欺などによる被害も減るかもしれません。でも、報道による取り上げ方は違いますよね…
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公的年金についてマイナスな発言をする人には必ずこの本を
公的年金保険にまつわる報道について、自分自身でも背景をきちんと学んでみたいと思われる場合には、この本を読まれることを強くお勧めします。
ちょっと気になる社会保障 V3
(リンク先は最新版である第3版の「V3」ではなく第2版の増補版の感想記事です)
なお、報道・野党の国会議員・各種専門家以外の一般の人が公的年金保険について誤った知識を持ち、声を大きく発信されていたとしても、その人は報道・野党の国会議員・各種専門家の情報を鵜呑みにしてしまっているだけなので悪意はありません。
身近でそういった方々がおられました場合にはご紹介しました本の存在をお伝えください。
「義務教育でのまっとうな社会保障教育」が必須だと感じる次第です。
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この金融庁の報告書の後半に「高齢社会における資産の形成・管理での心構え」として、現役期・リタイア期前後において
「必要に応じて、第三者としての立場からアドバイスできる信頼できるアドバイザー等を見つけて相談することも有効であろう」
という記述があります。アドバイザーの端くれとしてがんばらねばと思っています。
金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書については以降も粛々と議論が進められ、2020年8月5日に最終報告-顧客本位の業務運営の進展に向けて-が公表されていますが、これは残念ながら報道で全然取り上げられていません。
都合よく切り取られたことしか取り上げないのが報道なのだと悲しくなる日々です。
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