最高裁判例紹介~「自身が吐いた物の誤嚥(ごえん)による死亡も傷害保険の死亡保険金の支払い対象」~
「成人年齢の18歳への引き下げ」が実現した場合の影響を考えるコラムの2回目です。
今回は,離婚をした際に問題となる「未成年子(未成年の子)」の養育費の問題を考えてみます。
まず,離婚の際,未成年の子がいる時に問題となるのは,「親権」と「養育費」です。
「親権」は,簡単にいうと,「未成年の子の面倒を見る親をどちらにするか」という問題です。
夫婦の間に未成年の子がいる場合は,離婚届を提出する際,必ず,どちらの親を親権者とするのか記載する必要があるのですが,成人の子については,親権者の指定は必要ありません。
ですので,成人年齢が18歳となると,18歳以上の子については親権者をどちらにするのかの指定及びその前提となる話合い(もっと赤裸々に言えば「争い」)が不要となります。
次に,親権者として未成年の子の面倒を見る親に対し,もう一方の親が支払義務を負うのが,「子どもの扶養に関する費用」である「養育費」です。
もし,親権者を母とすると,父が母に対して支払うのが「養育費」です。
そして,養育費は,多くの場合「子が成人に達する月まで支払う」という形で決められていることが多いです。
(但し,別の形での合意は十分に可能で,おそらく次に多いパターンは,「大学卒業が見込まれる22歳となる月の同月かそれ以降に訪れる最初の3月まで」と思います。)
離婚の際に「離婚調停」等裁判所の手続きで養育費を決定している場合は,「成人に達する月まで」という文言とはせず,具体的に「平成○○年△△月まで」と記載する場合がほとんどですので,解釈の相違は発生しないのですが,もし,文言上前記のように「成人に達する月まで」と記載してあった場合,成人となる月が20歳の誕生日から18歳の誕生日となると,その文言はどうなるのかという問題があります。
つまり,「成人」を民法の解釈とおり変更されたとみると,20歳の月ではなく,18歳の月までが支払期限となり,養育費の支払期間が2年間も短縮されてしまう可能性があります。
一方,合意した時点では,「成人」=「20歳」であるから,成人年齢が合意後に変更となっても変更はないとされる可能性もあります。
個人的には,後者に軍配を上げたいところですが,まだ裁判所の判断はありませんので,両方の解釈はあり得ると思います。
さらに,すでに合意がある場合でなく,成人年齢が変更となった後に養育費の支払期間を定める時のことを考えると,養育費をもらう方としてはより深刻となります。
つまり,原則は「未成年の子に対する扶養」ですので,養育費も18歳となる月までとなってしまう可能性が,高くなってしまうと思います。
とすると,高校を卒業していないにも関わらず,養育費の支払期限が来てしまうという可能性もあるのです。
このあたりは,裁判所の手続きまで行けば,裁判所も配慮はしてくれるとは思いますが,裁判所に行かない離婚の場合,「18歳になって成人しているから,養育費は要らないはず」と押し切られてしまう可能性が高まることとなると思います。
そのような事態に対する何らかの手当を法律等でする必要があると考えられます。