交通事故による後遺障害と後遺症の違い

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:交通事故理論

交通事故に遭い,怪我をした。
  ↓
事故前にはなかった痛み(首や腰等)が半年以上経過しても続いている。
  ↓
これは,事故による「後遺症」だ。


不幸にも,交通事故でお怪我をされた経験がある方であれば,そのようなお気持ちを持たれることは当然です。

ただ,ご説明しないといけないのは,「後遺症」と「後遺障害」とは違うということです。

この点,学術的に研究を深めたわけではありませんが,実務での経験で,私なりに整理すると,次のとおりとなります。


事故前になかった痛み等が交通事故で発生し,それが,事故後半年以上経過しても続いている。

確かに,それは,事故による「後遺症」(事故による症状が長く続いている状態)だと思います。

しかし,それが,「後遺障害」として評価され,「後遺障害」部分の損害が認められるかは別の話です。


なぜなら,後遺障害と認められた場合,その賠償額は,後遺障害の一番軽いものである14級であったとしても,大きな金額となります。

まず,慰謝料だけで100万円を超えます。
この慰謝料とは,被害者に「後遺症」が長く続くことで精神的苦痛が与えられるとして,その精神的苦痛を慰謝するための補償です。

また,後遺障害が続くことにより,労働能力が低下して減収につながるとして,将来の収入の補てん(「逸失利益」)が受けられます。

この逸失利益の金額は,将来の収入額により変動しますが,例えば,年収300万円の方で,14級が認定された場合,50万円前後となります。

以上のとおり,14級の後遺障害が認められれば,この慰謝料と逸失利益だけで,150万円前後の損害が認められることとなります。

これを逆の立場(支払う側の立場=加害者または加害者側保険会社)になって考えると,後遺障害が認められたとすると,支払いの金額が150万円前後も増える可能性があるのです。

とすると,支払う側の立場になると「後遺障害」はできるだけ認めたくないという気持ちになるのもご理解いただけると思います。


以上をまとめると,「後遺障害」は,「後遺症」の中で,上記損害が認められてもしかるべきと考えられるものに限定されるということになるのです。


しかも,「後遺症」のうち「後遺障害」と認定してもらえるかどうかの「カベ」を乗り越えるのは,皆様が想像されるより簡単ではありません。

すなわち,「後遺障害」を認定してもらうのには,「ポイント」を押さえて診断書(後遺障害診断書)等を作成する必要があるのです。

そのお手伝いも弁護士の仕事と考えていますので,「後遺障害診断書」を加害者側保険会社に提出する前に,一度,弁護士に相談されることをお勧めします。

また,残念ながら,後遺障害「非該当」となったり,想像していたとおりの後遺障害の認定結果を受けられなかった場合には,「異議」という手続きもありますので,そのご相談も弁護士はできます。

最後に宣伝かもしれませんが,特に,「後遺障害」が問題となるような事故では,相手方と示談をされる前に,弁護士に相談されることをお勧めします。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

交通事故のトラブルを解決に導く法律のプロ

笠中晴司プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼