症状固定とは(4)

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:交通事故理論

3 「症状固定」に関するよくある誤解

(1)「症状固定」をした後は,治療をしてはいけない? (違います)

損害賠償関係の解決のため「症状固定」をある時期に決した後でも,治療を継続するのは,被害者である患者さんの自由です。
よって,お医者さんと相談のうえ,最善のことをされればよいということになります。

ただ,一方で,「症状固定」の時期以降の治療費は,原則として損害に認定されません。
つまり,「治療」というのは,症状の良化のために行うものであるという前提から,「症状」が「固定」してからの「治療」は意味がないと考えられるからです。

(2)症状固定は,できるだけ遅くするほうが有利? (ケースバイケースです)

前回までにご説明した,損害賠償の計算のところからわかるように,症状固定をする前の損害は,症状固定の時期を遅らせば遅らせるほど,増加すると考えるのが,自然です。

そういう意味では,症状固定はできるだけ遅くするほうが,「治療費が認められる」という点からしても,有利とも考えられます。

しかし,そのように単純にはいかない場合もあります。

つまり,すでに説明しましたとおり,交通事故の損害には,「症状固定」前の損害と「症状固定」後の損害があります。

とすると,「症状固定」後の損害額は,症状固定を遅らせて回復がより進んだ結果,後遺障害として認められる可能性が減少したり,また,後遺障害が認められたとしても,その等級が,低くなる可能性があるということです(その分,後遺障害部分として,認定される損害が大きく減る可能性があるということです)。

すなわち,「症状固定」後も,例えば自己負担で治療を継続した結果,症状が良化した部分は,損害賠償関係の解決では,原則としてあまり考慮されず,まだ悪い状態の「症状固定」の時期の状態で,「後遺障害」があるのかないのか,あるとして,「〇〇級」なのかということが判断される場合が多いのです。

結果,「症状固定」の時期を基準に,重い「後遺障害」を前提にして,損害賠償を多く受けられたが,その後,重い「後遺障害」は良化してしまったという,ある意味,幸運なケースもありうるのです(そのような場合でも,一旦解決した,損害賠償関係で,受領した賠償金の返還を求められることはありません)。

さらに,「症状固定」前の損害は,特に,慰謝料を中心として,ある時期を境に,あまり時期が長くなっても,増加する比率が極端に減っていきます。
つまり事故後,半年までは,慰謝料の金額は,かなりのペースで増額されていきますが,その後,徐々に増額されるペースが減り,1年を過ぎると,極端に増額されるペースが減ります。

一方で,後遺障害による損害の金額は,その等級認定が,1級異なるだけで,慰謝料だけでも100万円程度,逸失利益も含めれば,さらに,その倍か,それ以上くらい,異なってくる,ということから発生します。

という意味で,実は,「症状固定」の時期をあまり遅らせず,早い目に「症状固定」としてしまい,その時点で残っている症状につき,「後遺障害」の有無と等級を判断してもらったほうが,結果的に相手から受けられる損害賠償額が増えるというケースもあるのです。

こうなると,とても,難しいですよね。

そこに,弁護士に相談するメリットがあるのです。

最後に,全くの宣伝になってしまい,すみません。

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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