交通事故の常識?非常識?(1)「動いていれば,過失はある?」

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:交通事故理論

交通事故の過失でよく言われるのが,「動いている以上,過失はある(ゼロではない)」です。

つまり,「被害者」が「自分は十分に注意して運転していたから自分に過失があるはずはない」と考えて,「自分に過失があるなら,指摘してほしい」と主張しても,相手になっている保険会社が言うのは,「追突以外の事故態様では,動いている以上,過失はある(ゼロではない)」という言葉です。

この保険会社の対応は,「自分の過失を指摘してくれ。」と言っている被害者の問いに対して答えていないものです。

また,裁判になった場合,被害者が動いていても「被害者の過失はない」とされた裁判例は,私もいくつも経験しています。

すなわち,被害者に過失が認められるには,「予見義務」と「回避可能性」が必要で,そのどちらかが認められない場合は,「被害者の過失はない」と判断される場合も多々あるのです。

そして,「予見義務」とは,「相手がこういうような動きをする可能性があるから,注意してこちらはこのような動きをしないといけない」と予見する義務です。

一方,「回避可能性」とは文字通り,「事故を回避できた可能性があるかどうか」ということです。

ただ,以上の「予見義務」と「回避可能性」は,「被害者の過失を認定する方向で」かなり厳しく判断されるので,実際には,なかなか「過失がない」とされる場合は少ないというのが,正確なところです。

よって,「動いている以上,過失はある(ゼロではない)」というのは,そのような判断がされる可能性が高いが,「動いていても過失はない」と判断される場合も少ないながらあるというのが結論です。

しかし,保険会社は,追突以外は「動いている被害者の過失はない」とは認めませんので,結局,「被害者が動いていても過失はない」と認めてもらうには,裁判所で認めてもらうしかないということになるかと思います。

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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