最高裁判例紹介~「自身が吐いた物の誤嚥(ごえん)による死亡も傷害保険の死亡保険金の支払い対象」~

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:時事ネタ「それ以外」

興味深い,最高裁判例が平成25年4月16日に出ましたのでご紹介します。

「誤嚥(ごえん)」はご存じでしょうか。

年齢的なものなどで,本来,食道に入るべきもの(代表的なものは「食べ物」)が,気管に入ってしまうことです。

結果,最悪のケースでは,気管が閉塞する(詰まる)等して,死亡に至ることもありえます。

今回の判例は,自分が吐いたものを誤嚥してしまった結果,死亡された方の事案が,傷害保険の死亡保険金の支払対象となるかが争われた事案でした。

最高裁は,次のようなことを言って,「死亡保険金の対象にあたる」と結論づけました。

「誤嚥は,嚥下した物が食道ではなく気管に入ることをいうのであり,身体の外部からの作用を当然に伴っているであって,その作用によるものというべきであるから,本件約款にいう外来の事故に該当すると解することが相当である。
 この理は,誤嚥による気道閉塞を生じさせたものがもともと被保険者の胃の内容物であった吐物であるとしても,同様である。」

つまり,自分がアルコールなどの影響で吐いたものを気道に詰まらせ,死亡しても,保険金の支払い対象になるということです。

この判例を見て,私が考えたことは以下のふたつです。

1 自分が吐いたものでも,「外来性」のものととらえる最高裁の判例はもっともで,当然と言えば,当然の判決である。

  ただ,このことを知らずに,請求されていない保険金は結構あるだろうな。

2 では,普通の誤嚥は支払い対象となるのか。

  これを軽く調べてみると,約款で,「疾病(病気)を原因とする誤嚥は支払い対象から除く」と記載されているようで,「疾病によるものかどうか」が支払い対象となるのか否かの判断に関わってくるようです。

  ただ,この最高裁判例が出た後の,保険会社の対応としてすぐ想定されるのは,「自身の吐しゃ物による誤嚥も支払対象から除く」という約款に変更される可能性があるなということです。
  



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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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