交通事故 解決までの道のり~物損編(3)~

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:交通事故 実際の例など

1 交通事故の基本~過失割合~

(1)「過失割合」の言葉の意味----------------------------------------------------------

 交通事故でよく出てくる話が「過失割合」です。
 「100:0」とか「8:2」とか呼ばれるもので,「割合」という言葉が示すとおり,事故全体の過失を「100%(10割)」として,その「過失」を双方にどのような「割合」で配分するかということです。

 この「配分」というのが,すなわち,「全損害の配分」ということです。

 具体例を出して説明しますと,以下のとおりです。

(2)具体例ケース1 ----------------------------------------------------------------

  あなたの損害額  100万円
  相手の損害額    30万円

   物損編(2)でご説明しましたとおり,損害賠償額の確定には,まず,損害額の確定をします。
   そして,その上で,過失割合に応じて,損害額を配分するのです。
 

 ア.あなたの過失がゼロの場合

当然,すべての損害が,相手に課されます。
結果,130万円の損害は,相手が負担することになり,あなたの損害100万円もすべて相手に請求することができます。

イ.あなたの過失が20%の場合

 当事者二人に発生した総損害額130万円のうち,あなたの負担する損害額は,20%,つまり,26万円,相手の負担する金額は,104万円となります。

 では,これを相手と清算するのはどうすればよいのでしょうか。

 過失割合が10:0の事故等では,相手方保険会社が修理工場に直接修理費を支払ってしまうようなケースもあり,わかりづらくなっていますが,修理費などの自身の損害は,まず,自分で支払う等して,負担したうえで,その後,相手に請求するというのが原則です。

 とすると,あなたは,自分の修理費100万円をすでに支払っている(少なくとも支払う義務を負っている)状態ですが,過失割合で分担するべき,あなたの損害は,26万円だけでよいということになります。

 とすれば,後は,差し引きするだけの話で,あなたにすでに負担している損害額100万円とあなたが負担すべき損害額26万円との対比で,あなたが74万円過大に負担していることになり,その調整をするための清算で,相手から74万円をもらうことができるということになります。

 この説明は,非常にわかりづらくなっていますが,過失割合を損害の負担割合と考える理屈からすると,このように考えるのが理屈通りになります。

    ただ,一般的には,次のように説明されます。

    ◇あなたが,相手に請求できる金額
     100万円×(1-0.2)=80万円
    
    ◇あなたが,相手に支払うべき金額
      30万円×0.2    = 6万円

 結果的に,この金額を相殺して,74万円相手からもらえば,この損害賠償関係が清算されることになります。

 もちろん,ここに,「相手に任意保険を利用して支払う」,「自身の車両保険を使う」とか,いろいろな要素が入ってきますので,なかなか理解しづらくなってきますが,保険のことを考えないと,清算はこのとおりになります。

ウ.あなたの過失が50%の場合

 当事者二人に発生した総損害額130万円のうち,あなたの負担する損害額は,50%,つまり,65万円,相手の負担する金額は,65万円となります。

 ですので,あなたに発生した損害額100万円との対比では,35万円過大に負担していることになりますので,その調整のため,相手から35万円をもらうことができるということになります。

この点,よく誤解されるのが(保険会社に担当者でも誤解しているケースがあります),過失が五分五分なら,「双方とも相手に支払う必要がないのでは」という誤解です。

でも,この誤解は,これまでの私の説明を理解していただけくとご理解いただけると思います。

つまり,総損害額を過失割合に従って分配することになるので,過失がいくら五分五分であっても,自身に発生した損害額が大きければ,その清算のため,相手から損害賠償を受けられるということです。

◇あなたが,相手に請求できる金額
     100万円×(1-0.5)=50万円
    
    ◇あなたが,相手に支払うべき金額
      30万円×0.5    =15万円

 結果的に,この金額を相殺して,35万円相手からもらえば,この損害賠償関係が清算されることになります。

エ.あなたの過失が70%の場合

 当事者二人に発生した総損害額130万円のうち,あなたの負担する損害額は,70%,つまり,91万円,相手の負担する金額は,39万円となります。
 ですので,あなたに発生した損害額100万円との対比では,9万円過大に負担していることになりますので,その調整のため,相手から9万円をもらうことができるということになります。

 ここで,皆さん,「自分の過失が7割と大きいのに,相手から賠償を受けられるの???」と思われるかもしれませんが,それは,過失が50%のところでも説明しましたが,総損害額を過失割合に従って分配した結果,自分にすでに発生している損害との対比では,自分の過失が大きくても,相手から賠償を受けた形で清算されることがあるということになります。

◇あなたが,相手に請求できる金額
     100万円×(1-0.7)=30万円

    ◇あなたが,相手に支払うべき金額
      30万円×0.7    =21万円

 結果的に,この金額を相殺して,9万円相手からもらえば,この損害賠償関係が清算されることになります。

でも,相手にしてみたら,「自分は3割しか悪くないのに,なぜ相手に支払う必要があるのか」と心情的に納得できないですよね。

このような場合は,やはり,「もめる」ことが多いです。

以上

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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