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拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

【民法・不動産登記法】の改正要綱案

2021年3月4日 公開 / 2021年6月8日更新

テーマ:法律アップデート

コラムカテゴリ:法律関連

遺言

新聞報道(2021年2月11日)

日経新聞に『土地登記は相続3年内に、違反なら過料 法制審答申』という見出しで,民法・不動産登記法の改正に関する報道がされていました。

これまで、誰も相続したくない不動産の相続登記がされないままであったり、登記簿の住所変更がされないままであったりで、所有者の分からなくなった不動産が公共事業や都市開発の妨げになっているケースがある、という問題がありました。

そのため、民法や不動産登記法の改正が検討されてきました。
そして2021年2月10日に法制審議会が要綱案を答申し、そのタイミングで報道されたのです。

要綱案の概要

要綱案に書かれた法改正の内容は多岐にわたっています。

まず、大きく民法の改正、不動産登記法の改正、その他の改正と区分できます。

民法の改正としては、相隣関係、共有、所有者不明土地管理命令、相続、の各項目が含まれています。

民法の改正

相隣関係

となりの空き家が誰の所有物か分からないために工事ができないとか、こちらに伸びてきた木の枝が切れないとか、そういう問題がありました。
そのための改正ということになります。

共有

共有に関しても、共有者が不明な場合に対処するための法改正ということです。
共有者が所在不明のとき、共有物の変更・管理に関する事項を裁判所に決めてもらうことができます。

裁判所に請求して、所在不明の共有者の不動産持分を他の共有者が取得したり他人に譲渡したりできる制度も設けられています。

所有者不明土地管理命令

所有者が分からない土地や建物について、利害関係人の請求に基づいて、裁判所が所有者不明土地(建物)管理人を選任して、不動産を管理させます。
これが所有者不明土地管理命令です。
所有名義人が法人の場合にも使えます。

相続

遺産分割についての改正も予定されています。
相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として、特別受益の持ち戻しや寄与分の主張ができないことになっています。

不動産登記法の改正

不動産登記法の改正としては、相続発生の反映、名義人の情報更新などの項目が含まれています。
これが新聞報道の見出しになっていたところです。

相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、その取得を知った時から3年以内に登記申請をしなければなりません。
正当な理由なくこの登記申請を怠った場合、10万円以下の過料に処するとされています。

また登記名義人に氏名住所の変更があったときは、2年以内に変更の登記が義務付けられ、正当な理由なくこれを怠ったときは、5万円以下の過料に処することとされています。

登記手続の簡略化というのも予定されています。
相続人に対する遺贈による登記は、受贈者が単独で登記できることとされています。
法定相続分で相続登記がされているときは、その後の遺産分割で所有権を取得したなどの場合、単独で更正登記によることができることとされています。

国庫帰属の承認

いらない土地を国に返したいというような相談が時々あります。

相続によって所有権を取得した土地については、建物がない、担保権がついていない、土壌汚染がないなどの条件を満たす場合、法務大臣に国庫帰属の承認を求めることができる制度が創設されます。

条件がいろいろありますので、簡単ではなさそうな気もしますがどでしょうか。

要綱案は、法務省のウェブサイトで見ることができます。

追記

改正法案は、2021年4月21日に可決成立しました。2023年度に施行予定とのことです。

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