なぜ数字が経営判断に使われないのか 【第3部】人件費を財務とつなげて考える
はじめに
全東信の破綻、そして約2万店に及ぶ加盟店の資金ショートという出来事は、企業の経営者や財務担当者に対して、自社が依存している決済インフラを考えるきっかけになったと思います。
「早く現金化できるから」「審査が緩いから」という理由での業者選びは、自社の決済リスクを高める可能性があります。
第4部は、BPSP活用の留意点や対策について考えます。
【その1】資金繰り表による「キャッシュフローの把握」
まずは、BPSPを利用する前に資金繰り表を作成し、「本当に利用が必要か」「いくら利用すべきか」を把握する必要があります。
毎月、恒常的にBPSPで支払を先延ばしすることによる財務的・心理的メリットはあります。しかし、利用によりコストも発生します。無用なコストを抑えるためにも、「いつキャッシュ(調達)が必要か」「どれくらいの金額が必要か」を知るために、少なくとも3か月分の資金繰り表により確認することが重要です。
【その2】「運営母体」の確認
BPSP(請求書カード払い)を導入、あるいは見直す際、運営している企業の経営状況や提携カード会社を確認する必要があります。
全東信のように「自社独自のノウハウと借入で立替をおこなっている」という不透明な場合は注意が必要です。
【その3】支払猶予期間を活かしたリターン(利益)の検証
BPSPの利用には通常3%〜5%程度の手数料が発生します。これを単なる経費(コスト)として捉えるのではなく、「手数料というコストを支払ってでも、手元に現金を残すことで、それを上回る『リターン(利益)』を生み出せるか」という点が重要になります。
例えば、以下のようなケースではBPSPの活用が有効な戦略となります。
1.仕入れのボリュームディスカウント
支払いをBPSPで先延ばしにしつつ、手元の潤沢なキャッシュで原材料を大量一括仕入れし、手数料以上のディスカウントを獲得する。
2.突発的な大型受注への対応
外注費や材料費の先行支払いが重なり銀行融資が間に合わない場合、BPSPなら短期間で支払いの後ろ倒しができ、案件の機会損失を防ぐ。
3.資金繰り改善
売掛金の回収が遅い業界において、買掛金の支払期日を後ろ倒しにすることでキャッシュアウトをコントロールし、キャッシュフローを維持する。
【その4】決済インフラ分散によるリスクヘッジ
全東信の件で最も被害が大きかったのは、「1社に決済代行のすべてを依存していた」企業です。全東信のサービス停止と同時に、店頭でのカード決済が不可能になり、数日間の売上を全て失った企業が続出しました。
投資や財務の基本は分散です。BtoB決済やBPSPを活用する際も、メインとサブといった複数の決済経路を確保し、万が一のシステム障害やサービス変更時にも資金が止まらない構造を作っておくことが重要です。
まとめ
「全東信の破綻」は、不透明な立替・代行ビジネスに依存しすぎるリスクを示した象徴的な出来事でした。そして、法令の改正や技術の発展により、企業の決済業務を取り巻く環境も大きく変化しています。
企業に求められるのは、単なる資金繰りのテクニックではありません。金融インフラの有用性・安全性を正しく見極め、自社の状況やニーズと照らし合わせて、適切なタイミングで適切な手段を選択できる判断力と、そのための基盤作りです。
マネジスタ湘南社労士事務所は、財務や労務に関する相談を承ります。
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