中小企業のガバナンスを強化する ~第2部 ガバナンス強化のために取り組むべき3つのポイント~

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
中小企業白書コラム第2部、企業の現状や課題について整理します。
はじめに
第1部では、中小企業白書の概要と「稼ぐ力」について整理しました。
第2部では、その「稼ぐ力」を阻害している現状、労働分配率や経営リテラシーといった企業の課題を整理します。
中小企業を取り巻く現状
1.賃上げの加速と「労働分配率8割」の限界
2025年春季労使交渉では、中小労働組合においても約30年ぶりの高水準の賃上げ率を記録しました 。
2025年度最低賃金も全国加重平均で前年度比+6.3%となり1,000円を超えています 。しかし、財務面で見ると厳しい状況が浮き彫りになっています。
・労働分配率の状況
中小企業の労働分配率(付加価値額に占める人件費の割合)は、既に8割近い水準に達しています。
・利益の圧縮
付加価値額に占める営業純益の割合は10%を下回っており、大企業と比較して賃上げ余力が乏しいのが実情です 。
2.「労働供給制約社会」の到来と業種別の不足感
人口減少に伴い、労働力不足は「倒産リスク」に直結するレベルまで深刻化しています。
・将来推計
中小企業の雇用者数は、2040年には2018年比で約8割半ばまで減少する可能性があるとの試算が出ています 。
・人手不足が深刻な業種
「建設業」「運輸業・郵便業」「情報通信業」における人手不足感は特に強く、これらの業種では過不足判断DIが極めて低い(不足の)状態が続いています 。
3.経営リテラシーの欠如
白書では、小規模事業者を中心に「経営リテラシー」が不十分なことが指摘されています 。
・財務・会計面の課題
原価管理が不十分なため適切な「価格転嫁」ができず、資金繰りに悪影響を及ぼしています 。
・労務管理面の課題
適切な労務管理や組織活性化がなされていないことが、人材の流出や定着率の低下を招いています 。
4.労働生産性の向上
白書では、中小企業の時間当たり労働生産性が過去10年間で25.5%上昇している一方、企業間格差も大きいことが示されています。
中小企業の中には、大企業の中央値に匹敵、あるいはそれを上回る生産性を実現している先もあります。
つまり、中小企業だから生産性が低いのではなく、企業間の差が広がっているということです。
人手不足が進む中で、人員増だけで売上を伸ばす経営には限界があります。
今後は、同じ人数、あるいは少ない人数でも付加価値額を伸ばせる企業が強くなる時代です。
付加価値額を増やす4つの柱
白書が示す企業成長のポイントは、付加価値額の増加にあります。その主な柱は次の4つです。
1.成長投資・設備投資
生産能力拡大や新規事業のための投資は、収益力の底上げに直結します。
白書では、成長投資に取り組む企業の付加価値成長率が高いことが示されています。
2.価格転嫁の推進
原材料費やエネルギー費、人件費の上昇に対し、価格転嫁できる企業とできない企業の差は広がっています。
白書では、原価管理を詳細に行う企業ほど価格転嫁率が高いことが示されています。
3.M&A・事業承継
事業承継やM&Aは、後継者問題への対応策であるだけでなく、経営資源の再配置による成長戦略でもあります。
4.研究開発と差別化
価格競争から抜け出すには、独自性のある商品・サービスづくりが欠かせません。
ある企業は自社ブランドを育成し、高付加価値化を通じて収益力を改善しました。
差別化は価格転嫁を進めやすくし、利益率改善にもつながります。
まとめ
第2部では、労働分配率の限界と人手不足の深刻化や経営リテラシーなど、財務・労務両面での課題を確認しました。
賃上げ原資を確保できない企業は、市場から退場を余儀なくされる「インフレ時代の洗礼」を受けています。
第3部では、これらの課題を克服し、「強い中小企業」へ脱皮するための財務・労務対策、そして「属人化からの脱却」に向けた対策を整理します。


