【第1部】パートタイム・有期雇用労働法の令和8年10月改正~その概要とこれまでの背景~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:労務・人事管理


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。

はじめに

 令和8年10月1日施行の法改正を控え、企業における「同一労働同一賃金」への対応は待ったなしの状況です。
経営者や人事担当者からは、「正社員とパートの手当をどう整理すればいいのか」「人件費が増加して資金繰りを圧迫しないか」といった相談を受けます。

 今回のコラムでは、銀行員としての財務目線と、社労士としての労務リスク対策の観点か概要の説明から対策まで、全5部構成でお届けします。
 第1部では、パートタイム・有期雇用労働法の目的や背景、そして実務の土台となる「均衡待遇」と「均等待遇」の概念を整理します。

同一労働同一賃金の目的と背景

 パートタイム・有期雇用労働法の目的は、同一企業内における正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(パート・有期社員)との間の不合理な待遇差を無くし、「公正な待遇」を実現することにあります。働き手がどのような雇用形態を選択しても、納得して働き続けられる環境を整えることが求められます。

  これまでの企業経営においては、「パート時給を抑えること」は安価な労働力を確保するための手段でした。しかし、構造的な人手不足が深刻化する現在、不合理な待遇差を放置することは、採用難や優秀な人材の流出を招き、企業の利益や将来的な事業継続に直結する経営リスクとなっています。

データに見る賃金格差と企業対応の現状

 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、フルタイム労働者の雇用形態間における賃金格差(正社員を100とした場合の非正規の数値)は、平成20年台前半の60点台前半から推移し、令和5年には67.5へと縮小傾向にあります。
 また、毎月勤労統計調査のデータでも、パートタイム労働者の時給は年々増加傾向にあります。法改正が全面施行された2020年以降、賞与等の特別給与額が増額されたことが影響しています。

  一方で、厚生労働省の「労働経済動向調査(令和6年)」によれば、同一労働同一賃金の実現に向けて「取り組んでいる(取り組んだ)」と回答した事業所は全体の64%にとどまり、残り約36%は「十分な見直しや対応を進められていない」と回答しています。

 法改正への対応遅れは、労使トラブルの発生だけでなく、融資や取引先の評価(コンプライアンス遵守・経営リスク管理の観点)にも影響するため、早期の対応が欠かせません。

基本原則である「均衡待遇」と「均等待遇」

  経営者が理解しておくべきは、パートタイム・有期雇用労働法第8条および第9条で定められている「均衡待遇」と「均等待遇」という2つの基本原則です。

均衡待遇の原則(法第8条)

 不合理な待遇差を禁止する規定です。正社員とパート社員の間で職務内容や人材活用の仕組みに違いがある場合であっても、基本給・賞与・手当・福利厚生といった個々の待遇ごとに、その性質や目的に照らして以下の3つの事情を考慮し、バランスの取れた支給を求めます。

  1. 職務の内容(業務の内容+責任の程度)
  2. 配置の変更の範囲(転勤や人事異動、昇進の有無など)
  3. その他の事情(職務の成果、能力、経験、労使交渉の経緯など)

均等待遇の原則(法第9条)

 「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更範囲」が正社員と全く同じパート・有期社員に対して、パート社員であることを理由として差をつけることを禁止しています。基本給や賞与、手当等の全項目において、正社員と同一の基準で決定しなければなりません。

まとめ

【今回のポイント】

  • パートタイム・有期雇用労働法は、雇用形態にかかわらず納得して働ける「公正な待遇の実現」を目指す法律
  • 統計データからも非正規の時給や特別給与は上昇傾向にあり、企業には計画的な対応が求められている
  • 「均衡待遇(第8条)」と「均等待遇(第9条)」の違いを正しく理解し、自社の全待遇の目的を整理することが法対応の第一歩


 第2部では、令和8年10月1日施行の法改正における具体的な変更点と、過料リスクを伴う新たなルールについて解説します。

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江崎充豊
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江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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