【第4部】2026年カスハラ等の法改正への対策~正当な指導を守る規律構築~
はじめに
第1部では、パートタイム・有期雇用労働法の基本目的や、「均衡待遇」「均等待遇」の原則について整理しました。
第2部では、令和8年(2026年)10月1日に施行される法改正のポイントを解説します。今回の改正では、雇い入れ時の明示義務の厳格化や、最高裁判決を踏まえた各種手当・賞与に関するガイドラインの見直しが行われます。
雇い入れ時等の労働条件明示事項の追加と過料リスク
令和8年10月1日施行の改正における変更点は、「パートタイム・有期雇用労働者雇用管理様式(労働条件通知書等)」の改定です。
現行法でも「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4事項を書面交付等で明示することが義務付けられていますが、改正後はこれに加えて「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」の明示が新設・義務化されます。
具体的には、雇用契約書や労働条件通知書内に「通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる」旨の文言と窓口(部署名・担当者氏名・連絡先等)を明記しなければなりません。この書面明示義務に違反した場合、行政指導を経ても改善されないときは、過料(法第31条)が科されるリスクがあります。
改正同一労働同一賃金ガイドラインのポイント(最高裁判決の反映)
令和8年10月1日からは、改定された「同一労働同一賃金ガイドライン(告示)」が適用されます。今回の改定は、過去の最高裁判決の判断要素が色濃く反映された内容となっています。特に各手当や福利厚生の支給基準について、以下の通り明確な指針が示されました。
1.退職手当
「労務の対価の後払い」「功労報償」といった支給の趣旨・目的に応じた判断基準が示され、職務内容等の違いに応じた均衡のとれた内容を支給しない場合は「不合理」と判断されるリスクがあります。
2.各種手当の判断基準
- 家族手当:扶養家族の生活補助の趣旨に照らし、正社員と勤務時間が同程度であれば、バランスのとれた支給の検討が必要。
- 住宅手当:転居を伴う配置変更の有無に応じて支給される場合、正社員と同一の転居要件を満たすパート社員には同一支給が必要。
- 無事故手当:業務内容が正社員と同一であれば、同一支給が必要。
3.休暇・病気休職
- 夏季冬季休暇:パート・有期社員にも正社員と同一の夏季冬季休暇を付与が必要
- 病気休職:継続勤務が見込まれるパート・有期社員に対し、正社員と同様の給与保障等を伴う休職制度を適用しなければならない。
財務目線で見るガイドライン改正による影響
財務の視点から言えば、ガイドラインの改定は「未払賃金リスク」や「損害賠償請求リスク」の可視化を意味します。
これまでの感覚で「パートだから住宅手当や夏期休暇は無し」と処理していると、法改正以降、過払い・損害賠償を請求された場合に損失を計上せざるを得なくなります。自社で支給している各種手当の目的を早急に洗い出すことが、財務の防衛につながります。
まとめ
【今回のポイント】
- 令和8年10月1日より、労働条件通知書等に「待遇差の説明請求権」の明示が義務化され、違反には過料の可能性あり
- 改正ガイドラインにより、家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇・病気休職などの支給基準が最高裁判決に沿って明確化
- 自社の就業規則や賃金規定・手当支給基準を、改正ガイドラインと照らし合わせて点検することが不可欠
第3部では、法改正が企業の「資金繰り・人件費」と「労務管理」に与える影響と課題について解説します。
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